軍事行動を構成する4大作戦タイプ

本稿は戦争の原理や基本条項を記載した作戦/戦術コンセプトを踏まえた上での解説となります。

現在の米軍において軍事行動を構築する4本の柱を定めています。
それは軍事作戦ドクトリン階層構造で確認できるように以下のようになります。

1. 攻勢作戦
2. 防勢作戦
3. 安定化作戦
4. 支援作戦

4 major operation types

 以上のシンプルな4種ですが、これは古来より多少の差異はあれど大方どの国も行ってきているものです。

攻勢作戦

 ※FM3-90 Chapter 3 をベースに記述
 軍が武力行使を行い敵を撃滅し打ち負かすために作戦を展開する際にこの項目に該当します。
敵の資源を奪い取り、重要な地形を確保し、敵を欺き時に狙いをそらし、情報をより進展させ、あるいは敵の陣地を占拠するために、指揮官は攻勢作戦の指揮を取ることになります。
 指揮官は主導権を確保し、維持し、活用しなければなりません。それは防勢のときですら主導権奪取には攻勢作戦を必要とします。

 攻勢作戦では軍と地形のどちらも目標とされ得ます。即ち時に敵軍に狙いを定めて行われ、時に地形や施設の確保に狙いを定めることもあるということです。
 (特にWWⅡのドイツ軍が主眼を地点確保に、ソ連軍の攻勢作戦理論においては敵軍殲滅の重視と言われることが多いですが、現代の米軍は両方を考えることを非常に重視しています。またバルバロッサでの作戦方針は敵軍殲滅がOKHの立案時基盤にあったことも注意しておくべきです。) 

【攻勢作戦の特性】

 奇襲、集中、速度、そして大胆/勇敢さが攻勢の特性です。効果的な攻勢作戦は正確な情報によって生かされます。指揮官はその軍を敵との接触前に優位な地点に移動させます。警戒作戦で敵の情報を得て、情報防衛作戦で敵が友軍について知ることを阻害します。決定的作戦をより良い状態で行えるように助作戦が実施されます。基本的に助作戦は決定的作戦より先に行われると考えても良いでしょう。

【攻勢作戦例:湾岸戦争での第101空挺師団 1991年2月24~28日】

別途記載。

【攻勢作戦の種類】

 攻勢作戦には4つの種類、あるいは段階と呼ぶべきもので構成されています。
  • 接敵行動 (Movement to contact:MCT)
  • 攻撃 (Attack)
  • 戦果活用/拡張 (Exploitation)
  • 追撃 (Pursuit) 
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これらは当然の要素ではあるのですが、戦史上大変重要な研究事項です。
 特に近世末~近代において追撃の重要性の再発見と更なる効率化は軍事理論に大きな影響を与え、WWⅡ以降は防御側の再編成システムを乗り越えるためにその技術の粋が投入されています。

【共通作戦統制手法】

作戦の統制をとるために下記の項目を特に注意して計画する必要があります。

・攻勢位置
・攻勢時間
・非突撃攻撃位置
・攻撃位置(接近占有用)
・前進軸(Axix of Advance)
・攻撃方向
最終到達予定線(Final Coordination Line :FCL)
前進限界線(Limit of Advance : LOA)
発起線(Line of Departure : LD)
・目標(Objective)
・発起地点(Point of Departure : PD)
展開予想線(Probable Line of Deployment : PLD
・再集結点(Object Rally point : ORP or RLY)
・支援火器位置
・各攻撃段階時間

作戦統制手法

【マニューバ】

 上記を踏まえた上で攻撃を実現するための軍の動き方として基本的に下記5つのマニューバを想定しています。(個別解説、戦例はリンク先参照)
・包囲
・迂回
・正面攻撃
・突破
・浸透

【攻勢計画の一般考慮事項】

 攻勢計画をうまく行かせるためにはその計画を視覚化し、記述し、直接指導することが全ての指揮官に要求されます。指揮官はまず作戦域、任務、そして配備部隊の規模から考え始めるべきでしょう。

 攻勢は基本的に戦闘作戦です。(戦闘にならない攻勢もある)
 戦闘は、ハイテンポで広大な縦深で実行される、断固たる攻勢によってのみ敵を完全に撃破し得えます。
 攻勢は多くの利点をもっています。特に原則的に利点となりうるのが攻勢によって主導権を握ることができやすいということです。
 主導権をにぎれば指揮官は時と場所、特定の望む戦術、技術そして方策を攻撃部隊に取らせることができます。望む計画のために準備展開しその効果を集中させる機会をつかめるのです。主導権を失えばその戦闘能力を完全に発揮することができずに撃破されてしまう可能性があります。
 敵の予期していない手法で予期していない時間と場所で攻撃することが望ましいです。狙いは大きすぎても近すぎてもなりません。
 指揮官はその攻撃に続いて徹底的に急速で後続的に戦果を追求することによって、その攻勢の勢いを維持し敵が態勢を再編成をすることを阻止することが望ましいでしょう。敵が望む試みを調整するための敵の全ての機会を潰すようにすることです。
 敵が調整をできる時と、態勢を崩しできなくなった後では攻撃の手法を変えるべきです。
 これらを追求することで戦場での成功を達成し、そしてし続けることができるのです。

以下にはそのための具体的な項目をあげます。

・情報
 敵味方環境の情報を集めるのは必須ですが、特に指揮官は戦場の準備情報(Intelligence Preparation of the Battlefield : IPB)を揃える必要があります。そこから敵の行動を予測し自軍の行動を想定します。将校たちは指揮官と共に情報を集め、整理し、分析し予測します。
METT-TC
 加えて特に位置情報で注意する点を上げるなら以下になります。
1.場所、攻勢、装備、戦力、弱点そして優先目標
2.敵の集結予測地点
3.敵の間接射撃システムの位置
4.隙間と側面
5.敵味方の航空攻撃位置
6.防空、ミサイル位置
7.電子戦部隊の位置
8.気象と地形の影響
9.避難民の数、道筋、方角
10.敵退却路
11.行動過程の予想タイムスケジュール
12.現場指揮統制(C2)と相互運用監視偵察(ISR)システムの位置
SitaWare-World-of-Interoperability

・陣形

上記を踏まえた上でマニューバを行う際には陣形(Combat Formations)を編成します。

<別途詳解>

・火力支援
 まず事前に準備し火力で優越することを指揮官は必須とします。そしてそれらを効果的に使用することで突撃部隊の損害を減らし戦果をより大きくします。
 火力支援は様々な用途があります。消耗、遅滞、阻止などです。予備砲撃、反撃砲撃、制圧砲撃そして非殺傷火力の使用は指揮官に多くのチャンスをもたらすでしょう。
 
 特に予備に対しての間接火力支援は非常に重大な影響を及ぼします。これをされた際は指揮官の不足の事態への対応能力こそが鍵になります。

 支援攻撃はその効果を最大化する時間と場所、集中をすることで決定的作戦の大きな支援となります。

 火力管制官はFSCOORDと呼ばれ、各部隊のマニューバ計画をサポートします。
 部隊の攻撃が前進するに従って火力支援は順次敵の拠点を破壊するか制圧、無力化していきます。
 おそらく指揮官は優先ポイントを柔軟に選ぶ(Coordinated Fire Lines : CFLs)ことに成るでしょう。
WW2のUS砲兵
・防空
 現代戦では特に重要になり、更に日々それを増している要素です。
 <別途記載します>

・機動性/対機動性/残存性
 自身が機動力のある部隊を持ち、それを展開できる地形を考えること、そしてその支援を想定する必要があります。速度を維持するには必須です。
 逆に敵の機動を阻害する手法も当然考えなければなりません。自身が早く動くことと敵を遅くすることは同様に重視されます。
 そして味方が損耗しては作戦が継続できないので適切な道、手法を考え準備する必要があります。これは作戦において非常に重要です。

[残存性のために指揮官の考慮事項]

・作戦の高速性を維持
・エリア警戒作戦
・作戦警戒プロシージャー(OPSEC)
・欺瞞作戦
・情報防衛作戦
・迷彩、遮蔽、秘匿
・補給
・敵の核、化学兵器等の防止

・後方支援
 充分な後方支援がなければ継続することはできず、軍は必ず破綻します。

・移行(Transition)
 部隊を別のエリアに移動させるために必要な準備します。
 部隊の移動準備、物資の用意、位置の確保、安全の確保等を行います。

以上が攻勢の概要になります。

防勢作戦

<追記します>

安定化作戦  - Stability -

 安定化作戦は治安良化などが含まれ、職業軍人型の制度では純軍事的と考えられなかったためか、一時期日の目を見ないこともありました。
 しかし20世紀の終盤から21世紀にかけてはこの安定化作戦が最も注目されるようになったと言っても過言ではないほど重要になってきています。かつては関係ないと扱われていた外国の域内紛争がテロ組織の温床となり国際化のうねりの中で広大な影響を及ぼすようになり、必然的に軍事大国はその遠方軍投射能力を安定化作戦に振り分けるようになりました。
 現代の米国は軍事的な勢力では覇権国家であること、そして先進国の保有する破壊兵器とシステムはもはや戦争を開始すれば相互が破壊的な結果を勝敗に関わりなく受ける可能性を有し、経済と倫理両面からこれまで繰り返されてきた様々な反戦の合理的事由が再確認されたことで、直接の武力行使を実施する先は非対称戦争がその大半を占めるようになりました。

 また軍事リアリズムと呼ばれる学派においては軍事力による抑止が特に着目されており、安定化作戦の一部である「示威行動」はその重大な役割を負っています。
 即ち軍の最大の成功とはその存在によって戦争の発生を未然に抑止することであり、戦争が始まった後で衝突し勝利をおさめることは次善であるということです。
 この考えは古来より、それこそ孫呉の時代より唱えられてきておりほぼ全ての国が基本概念は採用しているものですが、本質的に強者の理論であり勢力均衡(覇権秩序型と相互均衡型、多極型とわず)を軍事的に行う上で示威行為は軍事衝突をエスカレートさせる作用があり、平時においても軍事費高騰を抑えることが困難となるため、決して単純なものではなく軍政家の争点となっています。

米国の安定化作戦の特色

 米国の安定化作戦項目で特色があるのは「反政府活動の支援」です。FMでは米国の脅威となる国及び地域において反政府活動を支援しその脅威を衝突すること無く排除することが明記されています。
 覇権国家以外でこういった行為を政治思想的にも遂行能力的にも頻繁に実施する国は少ないのですが、米国は予算がある時期は積極的に行ってきました。驚くべきことに米国は公文書の一定期間後の公開を定めているため反政府支援活動を数十年たつと全世界に公表しています。冷戦期の中南米における反共政権樹立支援やイランでの政権転覆作戦「Operation Ajax」などは当時から叫ばれていましたが、いざ公開されても特に米国が何らかのペナルティーを受けることも無く、この安定化作戦の米国にとっての正当性を物語っています。ただし有名になり過ぎたCIA等の動きは政治的に大きく縮小し内部から不満が爆発するほどでていることを鑑みると果たして現在どこまでこの作戦が遂行されているかは疑問であると推察する人々も少なからずいます。

<追記します>

支援作戦 - Support - 

   1755年にポルトガル・リスボン大地震で壊滅的な損害を被った際に宰相命令で軍が展開し、疫病を防ぐためにキリスト教の倫理感からの抵抗を押きって膨大な死体を処理し、瓦礫の撤去や治安を乱す者達の取締を行いました。
 程度の差はあれど軍は命令指揮系統が他より厳格で強制執行力を持つ大規模な組織であるため、既存の災害対策システムが破綻するほどの非常事態においては頼られる存在であることは日本以外でも共通することです。現代の職業軍人型組織では厳しい環境に耐える訓練を施していることも派遣を求められる理由でしょう。
 民間でできない短期的コストパフォーマンスを度外視した行動がとれることも支援作戦で活躍する要因です。また情報戦という観点からも地域支援は重要な基盤構築となります。

 CBRNE災害とは核や化学、生物的な災害のことです。軍事面では通常兵器以外のもので起きた被害はここに該当します。近年は条約で禁止または制限が定められているものが大半であるため滅多に起きませんが逆に起きる可能性がある際は非常に強い拒絶反応を国際社会が示し行動を起こします。
 特殊な危険があることに加えプロパガンダ戦に使われることもあるため扱いが難しい作戦でもあります。

<追記します>
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参考文献:
FM3-0, 3-90
戦争と国際システム

戦争と世界史
近代世界システム
新しい中世
大戦略の哲人たち
ロバート・ベア著『CIAは何をしていた?』
リスボン地震とその文明史的意義の考察
孫子
呉子
クラウセヴィッツ「戦争論」
ジョミニ「戦争術概論」