『オーストリア・ハンガリー帝国最後の戦争 1914-1918年
   ( Österreich-Ungarns letzter Krieg 1914 - 1918)
 オーストリア国立図書館がデジタル化した著作権フリーの書籍を公開してくれています。
 
 良質な、という表現では足りないほど素晴らしい第一次世界大戦の軍事資料です。
 ドイツ語ですが大量かつ巨大な戦況図が公開されています。

 主な作成者はエドムント・グライズ=ホルシュテナウ氏。
 オーストリア連邦副首相、オーストリア・ハンガリー帝国将校(WW1時)、ドイツ国防軍将校(WW2時)という経歴を持つ人物にして、同時に軍事史家であるという驚きの方です。

 歴史の概略本ではなく、徹底的に詳細にオーストリアの参画したほぼ全ての欧州戦線での部隊配置、補給、増員などが網羅されている完全に純粋な軍事記録です。

国立図書館の参考ページにこちらを御覧ください。 →リンク
http://digi.landesbibliothek.at/viewer/image/AC01737446/4/#topDocAnchor

※画像がかなり巨大ですのでご注意ください。
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年月別で15冊あります。 → リンク
http://digi.landesbibliothek.at/viewer/toc/AC01039112/0/
記録だけで15冊というのは如何に丁寧に記載されているかと感激すると同時に読み切るのがとても大変であると覚悟しなければならない量ですね。

 ブルシロフ攻勢の作戦推移詳細があります。これ以上の詳細を見せてくれる書籍は滅多にないと思います。
 <浸透戦術とは別枠で考える方がソ連戦術史には良いこと、ご指摘ありがとうございます>

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 もちろんオーストリアを破綻させたと言われるイゾンツォの戦域詳細もあります。全書籍はまだ見尽くしていませんがほとんどの時期の部隊配置が書かれているようです。
 バルカン半島での攻勢成功やロシア帝国への進撃もあります。

 イタリア山岳地帯での部隊行軍推移も描かれており、WW1の戦略・作戦・戦術を調べるにあたり第一級の資料となることは間違いないと思います。

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 著者だけでなく他にも本職の、それもかなり高級の将校が作成協力した戦況図がA0あるいはそれ以上のサイズで作成され高解像度で公開されています。

 軍隊の行軍推移だけでなく、動員数、休暇数、損失数や補給なども表が挿入され解説文もついています。
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 ほぼ全図書に数十枚の作戦図や表が入るなどしており、特に作戦図はおそらく実際に将校たちが使用したのとほぼ同様のものを使っており、A0(以上?)の紙サイズのものがいくつかあるように思われます。

 全ページPDFの自由ダウンロードが可能ですが、作戦図は巨大かつ高解像度のため一枚あたり9MBを超えるものがあるほどです。私はjpg変換して縮小しようやく2~4MBにしましたが、それでもフルサイズをSNSには到底貼れません。

 もし興味を少しでももたれたなら、あるいは興味を持ちそうな人をご存知ならぜひこの図書館のサイトを紹介していただけたら幸いです。(私のサイトは極々一部しか貼っていません)

 この巨大かつ細密な作戦図を紙の書籍で出版するのは不可能だと思います。唯一電子書籍で可能性はありますが、対象がオーストリアというややWW1で日の目を見ない国であることに加えて軍事記録であるため、商業翻訳書籍が出版されるのは正直諦めています。

 ですがもしこの図書館のサイトを見て少しでも自分がドイツ語翻訳してみるかと思った方がいらっしゃれば、全力で応援いたします。何かご協力できる作業があればご連絡ください。

 また、オーストリア国立図書館は特に16~20世紀の書籍を電子化して多数公開してくれています。
第一次世界大戦以外でも歴史や文化に興味がある方はぜひご利用ください。

(2018/5/10 サイト編纂者 https://twitter.com/noitarepootra)