現在ロシア軍が訓練とシリアでの実戦データ収集を続けている機甲による戦法『タンク・カルーセル』について記述します。関連する『タンク・トラゥザーズ』戦法と『シリア式塁壁』についても触れることにします。

 内実は循環移動射撃戦法と呼ぶべきものであり、基本コンセプトは古くから続くショット&アウェイです。科学技術進歩に伴い複合的に進化した機甲車両と砲兵隊によって、このコンセプトを現代戦の中で実践する手法として再び現れました。ロシア軍、シリア軍、ウクライナ軍による実戦運用と訓練が進められており、米軍も少しずつ研究を続けています。
 長所と短所の両方があるこの戦法の特性について調査して判明した範囲で説明し、次に戦術の中でこの戦法がどう活用されるのかをロシア軍の演習を例に記そうと思います。

 まだ不明点が多く実戦記録も十分でないため、別の資料や戦車運用の知見をご存じの方の意見をどうか伺いたく思っています。発展性と制限性の両方がある極めて興味深い戦法だと感じています。なにとぞご助力お願い致します。
Fire Carousel

___以下、本文__________________________________
 ロシア連邦軍が近年改良を進めている『循環移動射撃』戦法について記述する。

 最初に述べておくとこれは新戦法とは厳密には言えない。それでも挑戦的な要素統合を行っている点で過去のものとは差異があり、より発展的であり尚且つ更なる飛躍をする可能性を秘めている。その点でこれは進化した戦法であると言うのが最も適切と思われる。ただしこの戦法が効果的な状況は限定的である。

名称_タンク・カルーセル戦法の呼び名_循環移動射撃

 名称は次のどれかで書かれることが多い。
英語
Fire Carousel』『Tank Carousel』『Tank Merry-go-round』『Tank Circus』※ロシア国防省英語版はCarouselを採用している。
ロシア語
『Танковая карусель』『танкового боя «огневой каруселью»』

  карусель/Carouselとはメリーゴーランド/回転木馬のことで巧くこの戦法の形態を表現しているが、輪が完全な連続体であるような印象を与える点は誤解を与えかねない。実際は部隊そのものの位置は途切れ途切れである。また、円形でなくとも循環的に移動してさえいればよい。
循環移動射撃_輪舞_基本概念

 訳語としてはラウンドアバウトの方がイメージはしやすいだろう。(ロシアではカセトカ装填装置の回転機械部分のことをカルーセルとも呼ぶため、もしかするとこれにかけているのかもしれない。)この他比喩としてリボルバー銃(の回転バレル)と言われもする。また戦車で主に使うためTank Carouselと書かれることが多いが、ある程度の射程と装甲があれば他の戦闘車両及び砲兵隊と統合的に運用され得るので、後述する手法内容を考慮した上で汎用性を持たせるなら循環移動射撃戦法であろう。以下には循環移動射撃を採用する。その本質は単一車両においてショット&アウェイを使い、各車両がそれを連続的かつ連携的に行うことで敵攻撃を受けるリスクを極小化しながら持続的火力投射を行うことである。
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 また類似的戦法あるいは補助となっている手法がシリア軍とロシア軍で既に使われており後述するが先に名前だけ記しておく。

・(戦車)交互進退式射撃(タンク・トラゥザーズ)『tank trousers』『танковые штаны』

・(前方)塁壁型車体遮蔽(シリア式塁壁)『Syrian shaft』『Syrian berm』『Syrian Parapet』『сирийским валом』

各国での認知状況

 これは今のところは戦車小隊~中隊規模での運用戦法であり、それ以上で実施される戦術とは表明されていない。
 名称は英語ではまだ統一されていないが、ロシア語は国防省が公に使っているためほぼ固まっている。ロシア国防省はこの戦法を秘匿していない。シリアのアサド政権軍とは実戦で共有しており、国防省の公式サイトには堂々と『Танковая карусель』に関する多くの記事を載せている。2018年の上海条約機構の合同演習で中国、カザフスタン、タジキスタン、キルギスタン、インド、パキスタンに披露している。[参照11] 加えてモンゴル軍との定期合同演習でこの戦法をわざわざ名指しで訓練したことを表明している。[参照22]
 国防省サイトにはいくつも掲載され、各軍管区や基地で数百人規模で戦車循環戦法の実施訓練を行ったことを細かく発表している。[参照3~22]

 米陸軍外国軍事研究室はこの戦法のロシア軍内導入を把握しておりその特性に着目はしているが、機甲部隊指揮官たちがどれくらい重視しているかは不明である。ウクライナ軍将校が米陸軍指揮幕僚大学で発表した論文が詳細にこの戦法を解説してくれているが、ウクライナ流とロシア流は違う可能性がある(後述)。[参照23, p.6] , [参照26]
 軍事研究を国防省などに提供しているMITRE社の2019年の調査論文では、(NATO諸国では)ここ2年つまり2017年からこの戦法が注目されるようになってきたという。[参照24, p.26]
 2017年であればザーパド2017演習が契機と考えられ、実際にこの際に循環射撃戦法が大々的に訓練されたことが報告されている。[参照25]

 まずどのようなものか把握するため概要を記し、次に詳細説明を各資料を引用しながら行うこととする。

循環移動射撃のやり方

 循環射撃の特徴は次の事項となる。

① 射撃フェイズとローディングのフェイズで縦方向(前方攻撃位置後方安全位置)に分ける。
② 射撃位置とローディング位置は土盛りなどの陣地を予め準備/計画しておく。ただし緊急時には無しで実行する。
③ 射程が充分ある機甲車両を複数のチームに分ける。
④ 各部隊は射撃フェイズを迅速に実施すると即座に射撃位置を離れ、次の射撃位置または後方安全位置へ移動する。射撃位置にも途中の移動路にも長時間留まらない。ただし射撃フェイズは一撃即離脱だけでなく複数発その場で撃つケースもある。複数撃つケースは陣地が構築されている箇所に限られる。いずれにしろ短時間で必ず移動する。
⑤ 後方安全位置に待機している部隊は別部隊が射撃フェイズを行ったことを確認したら、今度は自分たちが射撃位置につくように移動をし、同様に射撃位置についたら迅速に射撃を実施し短時間で離れる。
⑥ どこかの前方攻撃位置に必ず1つ以上の部隊がおり火力投射を常にしている状態をキープする。
⑦ 後方に下がった瞬間に再補給が必要なら実行し、循環に即座に復帰する。

 以上が骨組みである。
 これに加えて実践的にするためにロシア軍は次に記す幾つかの原則事項を作っているようだが、必ずしもこうなるとは限らない。

・射撃方向は側方を含む。(※移動し続けるため)
・停止せずに走りながら砲撃(走行間射撃)が重視される。
・射撃位置と装填位置は両共に何らかの隠掩蔽が施された陣地を予め準備しておく。
・砲兵隊、可能ならUAV含む航空戦力を要請あれば連携投入できるよう準備しておく。

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 詳細部バリエーションは多岐に渡り、内いくつかはあまり効果的ではないか使える場面が限られる。タンク・カルーセルのイメージ図をいくつか載せる。
Fire Carousel_non-stopping shot
< Tank Carouselのイメージ図_射撃位置は各チームでずらすケース_Own work >

0】初期状態。後方安全陣地に車両集結し補給も用意。前方攻撃予想領域に事前に土盛り作成か、既存障害物偵察をしておく。
1】攻撃開始、1チーム目が出発。攻撃位置についたら事前偵察しておいた敵位置へ発砲し、周辺の敵反応を探る。
2】1チーム目は移動しながら側方射撃を実施。2チーム目が出立し前方攻撃位置へ移動。
3】1チーム目は危険領域を離脱、後方陣地に戻り次の出立に備える。必要なら再補給を行う。2チーム目は移動しながら側方射撃を実施。3チーム目は出立し前方攻撃位置へ着く。
  以下、繰り返し。

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Syrian Berm_low ramparts
< Tank Carouselイメージ図_同じルートを各チームがとるケース_Own work >

 ※各チームが同じルートをとるケースは訓練動画などで見られるが、実戦もこうなのか不明。移動し続けることで敵攻撃回避性能を上げているのに同じルートでは敵に特定されてしまうので特に疑念が強い。町中などで道路が限られている場合に煙幕を使いながら実施するか、前方陣地の土盛りなどが高く強固にできて攻撃を受ける可能性低い場合か。ただしルートが同じであっても発砲位置は変えられる。
 追加調査必要。

 ※前方攻撃位置での射撃回数が不明。ロシア軍は移動しながらの射撃を強調しているため1~4発と思われるが、戦場の形状に依存しもっと多いことも考えられる。ウクライナ軍の様に(移動し続けることによる敵攻撃回避を重視はせず、あくまで持続的火力投射に注力し)1つの前方陣地で弾切れまで撃ってから交代する可能性もある。1~4発の場合は弾切れにはならないため何度か周回した後で再補給を受ける。T-72B3やT-90の自動装填装置は毎分8~10発を可能としている。
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Tank Carousel_shot without moving
< Tank Carouselイメージ図_弾薬を使い切るまで射撃してから交代するケース(ウクライナ軍)_own work >

0】初期位置。前方には事前に防護を施した攻撃陣地を用意。敵に発射位置を特定されないように複数用意しておく。
1】1チーム目が出立し、前方攻撃陣地に着くと射撃開始。敵反応を探る。
2】1チーム目は射撃を継続し弾薬が減ってきたら連絡。2チーム目が出立し1チーム目の弾薬切れの前に攻撃位置につく。
3】1チーム目は2チーム目が攻撃準備完了したことを確認後に離脱し後方についたらすぐに再補給を行う。2チーム目はその間射撃を継続。
4】2チーム目の弾薬が切れかかってきたら再補給を受けた1チーム目が出立し前方攻撃陣地に着く。
 以下、繰り返し。

 ※この弾薬を毎回使い切るまで前方陣地に留まるパターンは機甲が非常に欠乏中のウクライナ軍将校が述べているケースであり、よくある攻撃担当交代制とそれほど変わらない。ただ火力投射量が常に一定になるようにしている。
 ロシア国防省がTank Carouselと呼ぶ場合は移動しながらの射撃をしている記述がほとんどに存在するため、(ウクライナ軍の言っているやり方では特別な方式と見なさず)定義が違う可能性がある。ただしウクライナ軍も一度撃ちきるまで使った陣地と同じ場所を次も使うことはせず、複数用意しておいた陣地を次々移っていくことを示唆しており、この点では確かに循環的移動射撃をしている。

 「移動しながらの射撃」を持続させるのがFire Carouselなのか、「移動してから射撃する」ことを「位置を次々移しながら」連続させるのがFire Carouselなのか、追加調査が必要

循環移動射撃の効果

 循環移動射撃の効果は複数あり、状況ごとに異なるがおおよそ次の事項が期待され実施される。

1】複数チームが順に射撃することにより、火力投射が単一チームに可能な連続投射時間を越えてより長時間持続できる。
2】敵戦力を絶え間なく拘束、制圧(抑込)することができる。
3】自軍機甲は流動的に移動を続けるため敵は狙いを定めることが困難となり、また危険範囲に滞在する時間も短くなる。(※単にATGMの狙いを定めにくいというだけでなく、戦術的にどこに何時、部隊を投入すればいいかが定めにくくなる)
4】その火力の持続量及び車両の頻繁な現出により敵は我が方の戦力量を誤認しやすくなる。
5】瞬間火力量は大きくなく、持続的投射によりプレッシャーが敵には常にかかるため、取り払おうと敵が反撃に出てきて我が方は偵察に成功することが期待できる。この場合は循環移動射撃から別戦法/戦術へ移行する可能性が高い。(後述)
6敵主力が釣り出される可能性がある。この場合は循環移動射撃から別戦法/戦術へ移行する。(後述)
7】もし想定外の敵攻撃があり撃破されたとしてもそれは前方位置の車両に限定され、被害は最小限で済む。
8】 追記
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 短所も当然存在する。

・循環移動射撃をすると戦力の逐次投入となり、投射できる火力の瞬間最大値が減少してしまう。
・移動距離の増大により、停止していたりアイドリング状態で出番を待つ戦車と比べると燃料消費の負荷が増える。
・そもそも移動をし続けることで敵攻撃を避けられると謳っているが、各射撃位置は劇的に移動するわけではないケースもあるので、反撃を受ける可能性が本当に減るのか敵兵器ごとに検討する必要がある。特に敵戦力の誘導ミサイルと照準性能の水準に依存するはずである。
その他、追記。

 長所と短所もひっくるめてどのような戦術の中で運用するかロシア軍は考えている。(後述)

詳細

 本章には各資料にある循環射撃の説明を集めて可能な限りまとめる。メモ書きも残し後で整理すること。

 基幹コンセプトと現在の実戦的手法は分けて捉えておく必要がある。実戦的手法は各戦場形態に対応する形で分岐的に発展している。

【循環移動射撃戦法_基幹コンセプト】

 ロシア国防省が発表しており、コピーしたかのように繰り返し同じ表現が使われている文が基幹コンセプトと思われる。記事末尾に載せる参考資料の[参照3~22]が国防省の公式記事である。それはおおよそ次の様な表現をされている。

「1つ目の戦車が配置地点から射撃している間に、2つ目の戦車は弾薬のローディングをしている。続いて初期射撃陣地から)1つ目の戦車が移動して側方射撃の位置へとついたら、2つ目の戦車は射撃位置をとりに行く。」 [参照12], 他
 
 比較的古い2016年ダゲスタンでの訓練で循環移動射撃を実施したという報告に、その基幹コンセプトの原型に近い文章が載っているがこれが元かもしれない。 [参照15]

 これが循環移動射撃の基幹コンセプトであるが実戦においてはより具体的に手法を構築している。その内の1つが下記のシチョーゴレフ大尉の説明である。実際に運用する現場の人間らしい絞り込んだやり方の供述であり非常に参考になるが、詳細部は必ずしもこうなるとは限らず、より広い可能性を有している。
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【循環移動射撃戦法_現在の実戦的手法】

 この戦法が英語圏で飛躍的に知名度が上がったのは2018年ロシア紙スプートニクが英語版を掲載してからだ。[参照1] 
 同時期に類似する記事が複数出ているがこれらの元になっているロシア語記事はほぼ同じで、RIAノーボスチ(ロシアの今日)通信社による軍へのインタビュー記事の中で循環移動射撃について戦車中隊指揮官のロマン・シチョーゴレフ大尉(Роман Щеголев)が説明している話である。[参照2]

 その考え方は以下のようなものだ。
 もはや大規模な戦車同士の衝突戦は過去のものとなり、現代の戦場における戦線は明確なラインが消えて不確定(不明瞭)なものとなった。対戦車誘導ミサイル(ATGM)を備えた兵士は迅速な戦闘地点への動員/移動をし、道路の傍に偽装された地点から攻撃をしてくる。そのような状況下において機甲車両を敵に真正面から送ることは非効率であるだけでなく、我が方にとって致命的となり得る。[参照2]
 これに対処するために循環移動射撃戦法は役立つ。

 シチョーゴレフ大尉の説明は次のようなものである。
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 循環移動射撃戦法によってほぼ無制限に長期間にわたり火力投射を実施が可能となる。 (※これは一車両または一部隊の装填/弾数制限に縛られない長時間の断続的という意味。) これを実施する部隊は3、6、9部隊かあるいはそれ以上の数で行い、円を描くように連続して移動する。1つ目の部隊が射撃し、もう2つ目の部隊が後方に移動しリロードを行い、3つ目の部隊が射撃ポジションへと入る準備をする。その結果(全体で見ると)ノンストップで撃ち続けられることになる。ただ弾薬の補給を確かなものにすること。[参照1], [参照2]

 大尉はこの全体を巨大なリボルバーに例えた上で、この方式は敵の武装がどの様なものか不明の場合に使われると述べている。例えば戦車、ATGM、グレネードランチャーなどである。

 毎分8~10発の猛烈かつ持続的に一面を覆う砲火によって、最終的に敵は反応することを強いられその隠れていた位置から現れざるを得なくなる、と大尉は注記している。
 「想像してほしい。10、20あるいは30分もの時間絶え間なく戦車が砲撃することを。対する敵側はもはや我慢できなくなり撃ち返してくる、そしてその武装をあらわにするのだ。その瞬間、我々の隠蔽しておいた狙撃-戦車が特別な訓練を施された乗員と共に行動へ移る。(位置と武装が露見し)特定されたターゲットに対し彼らは迅速かつ効果的な打撃を行うのである。」[参照1], [参照2]
 ※毎分8発は自動装填装置のあるT-90の主砲発射速度

 この文は米陸軍外国軍事研究室もそのまま引用し循環移動射撃戦法の解説に使っている。[参照23, p.6] 
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 国防省の書き方に基づくと、大尉の言っているような円形移動かどうかは指定されていない。ローテーションができ且つ一か所に留まらなければ別のルート形状でもよく、他のバリエーションが存在する。また遮蔽も無くても実施する可能性がある。さらに交代できるチーム構成が重要であり3チームだとは指定されておらず、むしろ文をそのまま読むと2チームの交代システムに思えるが、実践するなら射撃とローディングの間に移動フェイズが入るので3チーム構成が望ましく大尉の言っていることは合理的である。
 この基幹コンセプトは後述する交互進退式射撃『танковые штаны』と同じだ。勿論やり方には差異があるがバリエーションとして考えるとロシア軍がセットで話に挙げているのは合点がいく。

 また大尉の述べた文に非常に重要な箇所がある。それは循環移動射撃に我慢できず敵が反応すること(偵察)が高く期待できること、それから「隠蔽しておいた自軍別部隊が打撃を行う」ということだ。即ち循環移動射撃はこの場合偵察であり誘引であり、敵を撃破していなくても敵位置と武装を露見させた時点で戦術の中のタスクを果たしている。後は打撃部隊に任せるか、自分たちも循環移動をやめ一斉攻撃に移ることで急激に攻撃スタイルが変わり火力が集中される。循環移動射撃は小隊~中隊の実施する戦法であるが、それはより大きな規模で実行中の戦術の中に組み込まれている。この戦術を具体的にどのようなものにするかもロシア軍は演習で試している。(後述)
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 ただ他国の手法と比べどれだけ効率的かは一考すべきだ。
 ロシア軍の循環移動射撃は自軍機甲の戦力保存に重点を置く手法であり、この戦法単体では打撃力は低く、相手も訓練を積んだ機甲部隊である場合(既存の戦闘手法と比べ)特段効果的にならない可能性がある。どの国でも射撃後の即時移動の重要性は増大しており実戦ではたとえ循環的でなくても何らかの移動は必要とされるので、特殊戦法というよりも、その射撃後即時移動と移動中の側方射撃の心構えを身に着けるための訓練ツールとしてTank Carouselの有用性を考える者もいる。[参照31]
 訓練風景は次のものがわかりやすい。


歩兵の護衛がない戦車部隊とゲリラの戦い


 ただし抑込移動によって機甲のリスクを抑えていることは注目に値する。
 シリアでの循環移動射撃の実戦例内の1つでは、歩兵の護衛が全くついていけておらず事実上戦車のみで敵と戦わねばならなかった状態が発生した。これは単に真後ろや横に歩兵がいないという意味では無く周辺域にもおらず、敵の各ルートからのアプローチを歩兵が防止してくれないという状況である。それにも関わらず戦車部隊のペアはその戦いで「完封」した。循環、交互の移動攻撃により敵歩兵をひたすら制圧射撃し続け、歩兵の周辺警戒無しでも全く敵ゲリラ勢力を寄せ付けなかった。継続的射撃により最終的に(物理的/心的に)打ち倒したのである。[参照28]
 この事例を見る限り、機甲部隊が単独で敵と遭遇してしまった場合の友軍部隊が駆け付けるまでの時間稼ぎとしても使えるだろう。

 もし一斉射撃なら瞬間火力は増大し敵をその攻撃で倒せる期待値は増えるが、どうしても砲火が止む時間帯が発生してしまう(あるいはトータル時間が短くなってしまう)。シリア軍戦車部隊の物量では一度の砲撃で未特定の敵を含め壊滅させられる面的火力は達成できない。中途半端な瞬間最大火力量のために隙を晒すのではなく、循環移動射撃によりリスク減少を得る方を選び損害最小の勝利を達した。
 シリア反政府勢力の一部はFire & Movementの原則を理解していた。戦車部隊が己が側面を敵別動隊に取られないようにするには、複数個所を即座に制圧射撃できるに充分な連射速度だけでなく連射を長時間持続させる必要があった。更にこれに移動が加わることで敵ゲリラは戦車の位置把握が困難になり、どこに移動すれば戦車へ有効な射撃をできるのか把握するのに手間取ることになる。もし攻撃を受けたとしても、元々すぐに後退するコースなので危険に晒される時間は短くすむ。そしてあらわになった敵にペアの相方チームか、砲兵隊が攻撃を仕掛けるのである。
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【ルートは円形とは限らない】

 上述のように実戦的なやり方として円形的移動になると述べられているが国防省のコンセプトはそのような指定はしていない。
 Thomas(2019)では「戦車を円を描くように移動させるように運用し、交代で同じ射撃位置から敵と交戦するのが特徴である。」と書かれている箇所がある。[参照24, p.26] 
 だが他の文献を辿る限り「同じルートの同じ位置」で必ずしも射撃するとは限らない複数の射撃地点候補を作っておき、その中から各周回ごとに(敵にとって)ランダム的かつ露になった敵に対し有効となる射撃位置を選ぶ。また後述するシリア式塁壁でも射撃地点は同じとはならない可能性が示されている。Thomas研究員もそれはわかっているようで直後には以下の文を続けている。
 「ある情報筋によると、(循環移動射撃を担う)兵士は『500m~2500mの範囲にある出現ターゲットや移動ターゲットが完全に撃破されるまで、戦車が交代で射撃位置を変えながら連続的射撃を行う』という。」[参照24, p.26] ※出典元は2019年1月30日のロシア国防省サイトの英語版記事…とのことだが発見できない。情報求。

 本質は円形ではなく縦深方向を含む頻繁な移動である。後述の『ズボン=交互進退式』は縦方向の移動にのみ焦点が置かれているが、循環移動式は縦方向+横方向の移動を組み込んだ発展的戦法となっている。
 ロシア国防省の演習レポートによれば陣地にいる時の射撃および正面方向の移動中の射撃に加え、横方向への移動中に射撃を1つのコース内で行ったと報告されている。 [参照15]
 この形状を考えるとむしろ水滴型の方が適切であるように思える。実戦においては掩蔽の状況に合わせるのでバリエーションは多数あるだろう。
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【米陸軍外国軍事研究室の着目文章】

 2018年8月号のFMSOの定期誌にロシア軍のこの戦法について紹介する記事が載せられた。ページは冒頭であり注目度は高いがまだ詳細には踏み込んでいない。記述の主な情報源は上記シチョーゴレフ大尉のインタビュー記事(直接的にはスプートニク紙英語版)とズヴェズダ紙(ロシア語版)である。以下にはズヴェズダ紙の方の訳を載せる。[参照23, pp.6~7] 

____以下、抜粋翻訳(p.7)_____________________________

 シリアでの戦闘経験は訓練と演習に組み込まれつつあり、戦術的および火力投射の実地訓練にも導入されていっている。中央軍管区の人員でのデモンストレーション訓練セッションが2017年12月チェバルクリ地方で軍管区司令官の指導の下で試験実施された。そこでは『1個の諸兵科連合部隊、編制、そしてサブユニット内における偵察‐打撃(火力投射)ループの創生。その運用手順』がトピックとなり、そして『ジハード・モバイル』に対する戦闘方法がその訓練の中で見られた。2勢力対抗式の大隊戦術演習のシリーズが通常編制及びサブユニットレベルで実演された。そこではモバイルの砲兵隊の役割範囲内としての敵性の無人航空機と戦車部隊の投入があった。そして偵察‐火力投射ループ及び『タンク・カルーセル』の運用がリハーサルされたのである。

 例えば後者(Tank Carousel)に関して、Totskiy地方でのセッションが注目に値する。そこでは大隊戦術演習の期間中にその戦車大隊を指揮する将校は習得したタンク・カルーセルを持って敵性戦力を打ち破るための意志決定を行った。特に戦闘模擬実験の過程内において、中隊を指揮する将校は2つのタンクのペアからの火力投射弾幕で、一連の識別された敵全体への制圧(抑込)とすることができた。(※英語版には単語が抜けているが原文はподавить=suppressすると表記されている。)
 どのような方法か。シリアでの手法に基づくと、使い切った弾薬を回復するために後方に幾つかの戦車を残しておき、即座に戦闘車両の次のペアと交代して敵への激烈な火力効果を持続させるのである。

____以上、翻訳終了_________________________________
 ここには重要な単語が記されている。それは『偵察‐打撃ループ』だ。これに関しては戦術の章で後述する。

【ウクライナ軍での運用と訓練】

 この手法は既にロシア以外の国でも実践的に訓練が為されている。
 その内の1つがロシアと限定的軍事衝突を続けるウクライナ軍であり、Sobko中佐が米陸軍指揮幕僚大学でこれについて論文を2017年に発表してくれている。以下はその第4章の該当箇所の抜粋翻訳である。[参照26, pp.97~]

____以下、翻訳_______________________________
ハイブリッド的脅威に対するウクライナ軍の調整とその効力性についての評価

<< ドクトリン >>
 和平合意と明確な境界線を受けて、交戦国は線的防御(単一の確固たる防御戦線を構築する形態)を実施することを強いられた。ウクライナ軍司令部は陣地火力主体の防御が有効ではなくやめるべきであることを理解しているにも関わらず、全ての部隊がこのタイプの防御を実行している。
 機械化および戦車旅団の拡張的防御において、その小隊と中隊の強化拠点はサイズの面で拡大される。例えば小隊の強化拠点は戦線正面に沿って500~600mになり得る。強化拠点の後方において、対戦車用の予備部隊による補助的陣地と機甲車両部隊用の隠掩蔽陣地が準備される。機甲車両用の後方陣地の目的は敵砲兵の攻撃を後ろに退いて避けることである。戦闘車両は敵が容易に我が方の車両を発見できる場所に配置し、ただし航空偵察からは隠れるようにしておく。車両用の(車体遮蔽)トレンチの隣には人員用のシェルターを用意しておく。テントや家屋の中に人員を入れておく慣行は差し迫った損失を引き起こしてしまった。この事態を避けるために、長期快適に留まれるように適応調整された待避壕に乗員は身を置いたのである。監視システムは効果的に組織された。

 強化拠点やチェックポイントあるいはその他陣地を増強するための戦車やBMP(ソ連開発の歩兵戦闘車)が不足していたが故に、『複数の機甲チーム』が運用された。中隊レベルにおいて、1個の機甲チームには2~3輌の戦車またはBMPが含まれた。大隊レベルでは3~4輌の戦車またはBMPが置かれた。

 戦車部隊の運用において最も効果的だった手法は『Tank Carousel』と『Fire Carousel』と呼ばれたものであった。これら2つの手法を使えば、長時間にわたって敵を制圧(抑込)している期間の砲火を高い発射率を維持することができた。タンク・カルーセルの基盤は、ある指定期間またはターゲットが撃破されるまで複数戦車からの連続的な火力投射を敵に行うことだ。タンク・カルーセルは1部隊の各戦車または数個の部隊内の各戦車によって実行可能である。(図3参照)
図3_tank carousel_in Ukraina Force
< 図3_戦車循環射撃の例_Sobko中佐の作図 >

 砲火循環移動射撃(Fire Carousel)の基盤は、ある指定期間またはターゲットが撃破されるまで複数戦車及び砲兵隊からの連続的な火力投射を敵に行うことだ。一般的には最初に機甲部隊が敵へ火砲を放つ。戦車隊が弾薬を使い切るかあるいは移動しなければならない状態になったら、砲兵隊が砲火を放ち始め、戦車部隊が再び射撃できる準備ができるまでは(少なくとも)続ける。
図4_Fire Carousel
< 砲火循環移動射撃の例_Sobko中佐の作図

<< 組織 >>
 独立自動車化歩兵大隊のように、領域防御を担う大隊は機械化/機甲部隊の(役目の)一部となった。砲兵旅団は自動車化歩兵大隊を護衛部隊として内包する。戦車部隊と自走式多連装ロケット砲部隊は高い移動能力を有する空挺部隊で編成された。これらの組織再編はかなりの火力増大をもたらした。
 UAV(無人航空機)部隊は旅団の中に組み込まれた。Battery of Control and Artillery Reconnaissance of Brigade Artillery Groupの中には1個UAV小隊が編成された。その結果、砲兵隊の効果が極めて増大した。だがUAVの機数が不足していた。

<< 訓練 >>
 2015年3月から、ウクライナ軍の人員の経験と訓練は伸張していった。1つの作戦エリア内における諸兵科連合部隊とその他軍事サービスの連携は劇的に改良された。情報の交換、火力支援そして包括的支援も同様に改善していった。
 旅団及び大隊の演習も含み(実用的な要素の)訓練活動の量が増加した。ただしこの訓練の質は、特に実弾射撃演習は未だに低水準に留まっている。機械化及び機甲部隊は線形的戦術を訓練で使用し続けてしまっている。上級司令部は示威行動の訓練と演習実施に重点を置いてしまっている。(宣伝的示威ではなく地味だが実戦的な訓練が必要になる)モバイル・ディフェンス、市街戦、攻勢作戦は練習されていない。訓練は陣地防御を実行するよう志向している。通常、部隊は1つの階梯だけで防御を行い、1個の予備も無い。隣接部隊との連携も組織されていない。さらにウクライナ軍の部隊はハイブリッド的脅威に対抗するためにデザインされた特殊訓練を現在まったく実施していないのである。にも関わらず2014年9月から現在(2017年時点)まで機械化/戦車部隊の戦闘経験は増大している。彼らは己が能力、戦力、兵器に自信を持っている。最も重要なのは国家を護るに充分な士気を人員が有していることである。

____以上、翻訳終了_______________________________

 このように循環移動射撃は戦車だけでなく他の兵科、特に砲兵との連携を前提に組み立てられることが多い。ただしウクライナは深刻な戦力不足に悩まされておりロシア軍とは同質ではない。ロシア軍の砲火循環移動射撃も砲兵隊と機甲部隊が連携をとるが、(ウクライナ軍には発生してしまう機甲の弾薬補充の間の射撃停止時間のフォローをするためだけでなく、)機甲が砲撃中でも制圧射撃を支援したり機甲の偵察で敵位置を特定したらそこに火力を集中する決定的打撃の役割を砲兵が担い得る。

交互進退式射撃_Tank Trousers

 戦車交互進退式射撃『танковые штаны』とは2つ以上の前方陣地と1つ以上の後方陣地を用意し、縦方向に迅速に前進→射撃→後退をし、1つのチームが後退したらもう1つが前に出て連続的に射撃を繰り返す戦法である。各機甲車両は後方陣地から前方陣地へと移動する別々のレーンを有する。
Tank Trousers_Example Tank Trousers_Concept
< Tank Trousersのイメージ図_左図:複数個所の移動候補を有す_右図_複数チーム Own work >

 単独チームだけでもやることができるようだが複数チームが望ましく、片側のチームが前方陣地にいる時はもう片側のチームが後方陣地に下がっている状態をキープすることで持続的に射撃を敵に捕捉されることなくすることができる。

 штаныとはズボンという意味で、両足をそれぞれ入れるところを戦車のラインと捉えるようなイメージだ。直訳するならズボン型戦車戦法かもしれないが交互というニュアンスを強調した方がより良いと思われるため交互進退式という言い回しを今回は使っておく。
 米陸軍外国軍事研究室ではタンク・トラゥザーズ(Tank Trousers)と訳され、より詳細に説明する語として『rapidly alternating fire between two trenches』が使われている。[参照23, p.6]

 具体的なやり方は塹壕を使用して次のように行われる。
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 機甲はペアで活動し、場所を変え、クロスオーバーして稼働することができる。それにはランダム的な順序も含まれる。
 各戦車はそれぞれ隣り合って掘られた2つのトレンチから交互に射撃する。一つが主でもう一つは予備とし、1か所に数秒以上留まることなく行動する。戦車が1つのトレンチに入り、射撃し、後方へ戻る。それから迅速に隣のトレンチへと移動するのである。敵の対戦車兵器は対応に間に合うことができないだろう。[参照1], [参照2]

  下記動画の前半部分(1:34まで)がこの方式の訓練例である。片側の戦車が林に潜んで置き、命令と同時に前方にいた戦車が射撃開始しすぐに後退、入れ違いに後方待機していた戦車が前進するが微妙に前進レーンがずれており射撃位置は2レーンで構成されている。
 後半部はシリア式塁壁(塁壁型車体遮蔽)を用いたTank Carouselの例となっている。

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 一見簡単そうに見えるが、このやり方は即席でできるものではなく高度な訓練をしておかないとどこかで齟齬をきたしたようだ。
 現役の戦車中隊指揮官のヴワディスワフ(Владислав Селиверстов)先任中尉曰く、「これらはかなり難しいやり方であり、戦車クルーには高い練度が要求される。我々は常にそれ(訓練)に従事してきた。毎週最低でも2度の射撃と1度の運行訓練が実施された。(中略)兵士たちは戦車においてどう適切に作業するか、そしてどう火器を扱うかを学んだのである。」
 ヴワディスワフ中尉はカザン高等戦車アカデミーを卒業しており戦車内の仕事ならなんでもできた。必要とあらば戦車の操縦手だろうと砲手だろうと代われる。インタビュー元記事では戦車乗員個々の高い(自律的)練度が要求される戦争になったことを特に強調し後半部の文が割かれている。[参照1], [参照2]
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 今回はTank Carousel の方が焦点の記事のため交互進退式射撃はこれ以上は記述しないが、もっと多くの情報が実際にはある。基幹はどちらも同じ、縦方向への頻繁な移動と射撃したら前方に長く留まらず離脱することだ。

シリア式塁壁_塁壁型車体遮蔽_最前線で活動する装甲ブルドーザー

【名称】

 ロシア及びシリア政府軍がタンク・カルーセルとタンク・トラゥザーズ戦法を実戦で使う上で、それを補強するノウハウが存在する。それは『сирийским валом(シリア式塁壁)』と呼ばれる掩蔽手法だ。英語では訳がまだ定まっておらずSyrian shaft、berm、Parapetなど複数書かれている。内実を考えると塁壁型車体遮蔽手法と呼ぶのいいかもしれない。これはあくまで隠掩蔽手法の1つであるため特定の戦法ではなく広く様々な手段と組み合わせられるだろう。[参照1], [参照2], [参照24, p.10]

【基本コンセプト】

 その目的は基本的に機甲の車体を遮蔽する土盛建設や地盤掘削と同じだが、形状が単一車体を収める用ではなく長く壁の様に続くことが特徴である。遮蔽となる胸壁が最前線に(平行に)事前準備され、機甲が射撃する際にそこへ前進する。[参照27]
 長く続く壁であるため前方での射撃位置は幅広く色々な場所を選べる。そして最も重要なことは、車体が収まっていないためその機甲は障害無く迅速に壁沿いを(横方向に)容易に移動できることである。
 胸壁にボディを保護されながら壁に沿って移動をしていき、ターゲットを撃てる位置や装填状態になったら発射し、そして即座にそのまま移動をしてより安全な陣地構築がされた(後方)地点に移るのである。[参照1], [参照2], [参照23, p.6] 
 止まっている状態から始まる場合もあるが必ず前後のどちらかに移動フェイズが発生する。この車体遮蔽方式はロシア連邦軍の教範中ではогневой дорожкиと呼ばれるものである。
 シリア式塁壁はゲリラ勢力がIEDやATGMを使用するのに対し有効な対策として採用されるようになったと主張する者もいる。[参照49] ただ高性能の誘導兵器に対し機甲の移動力がどれほど有効か、ロックオンするまでの時間を含めて今後とも追いかける必要があるだろう。
MHGHGG550

【バリエーションと実戦上のやり方】

 バリエーションは主に2つに分けられる。
 1つは胸壁が丁度車体のボディ部分を隠し砲塔は顔を出している形状である。[参照27]
 これなら常に主砲を発射でき、自由度は高い。ただし一部が露出しているため敵攻撃に晒されるリスクは存在し、また敵に我が方の姿を捉えられてしまう。

 上記Tank Trousersの章の動画の1:35からが当該アクションである。長大な塁壁が造られており、建物や路肩および畑の輪郭そして自然地形など利用可能なものはすべて活用する。
4_塁壁の位置に沿って横方向移動 5_塁壁に沿い移動しながら側方射撃
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 2つ目は車体全体が完全に隠れる高さの壁が続き、時折に壁が途切れるかのぞき窓のような場所があるタイプである。やはり壁に沿って移動していき要請があったタイミングで窓の地点へ現れ射撃し、即座にその露出した地点から再び壁に遮蔽された位置へ移動する。これは射撃可能地点が限られるがこちらの移動が隠れるため敵にとって合わせにくい。[参照1], [参照2], [参照23, p.6], [参照24, p.26]
Syrian Berm_high ramparts
< Syrian Bermのイメージ図_土盛りが高く窓位置で撃つケース_Tank Carouselを補強_Own work>

 シリアでの戦闘では市街地またはその外郭が多く、壁や建物がこの塁壁の役割を果たした。故に2つ目の完全に隠れて壁沿いに移動し途切れた窓地点で射撃する手法は大きく活躍した。
 ただ間隙箇所から撃つ方式だと自分もそこで身を晒すことになるし、そこに現れると敵にバレてしまう可能性がある。ウクライナ軍の様に煙幕を利用したり、市街ならルートを工夫しどこの間隙箇所にいつ現れるかを悟られないようにする必要がある。間隙に身を晒す僅かな時間で標的を正確に狙う技術も求められる。

 広く分散的かつ不規則に移動してくる(この移動方式を『ジハード・モバイル_(jihad-mobile=джихадмобили)』とロシア軍は呼称している。)敵ゲリラを相手取っていたが故に砂漠戦あるいは荒野や草原も戦場になり得たため、工兵がブルドーザーを使い砂や土で胸壁を作成しておくやり方が効果的であると評価されるようになった。[参照1], [参照2], [参照23, p.6], [参照24, p.26], [参照27]
 戦車が来る前に最前線に事前に塁壁を建設しておくというのがポイントであるのだが、建設を戦車の前進とほぼ同時に行うケースがあるようだ。装甲化されたブルドーザーが前衛を走り土盛を「急速に」創り上げ、即座にそこに戦車が来て発砲する。[参照29], [参照30]
 疑いの余地があるが、戦車が前進する際にその前を装甲ブルドーザーが直接土塁を押しながらターゲットへ近づいていった、つまり防壁を移動式にしたというレポートもある。この際に土が敵レーザー及び光波ホーミング式ロックオンを妨害する役目を果たせたと述べられている。[参照24, p.26], [参照29], [参照30]

 ブルドーザーはシリアではかなりの活躍をしており、反乱勢力が使うトンネル戦に対抗するためにも要請を受けて最前線での活躍を求められることが珍しくない。[参照24, p.29]
 そのように危険地帯で頻繁に活動するので、2019年末にシリアの丘陵地帯の最前線歩兵用及び機甲用の陣地構築のためにブルドーザーが活動していた際に敵襲撃を受け破壊されてしまった事例もある。これにより政府軍は完全に前進ができなくなり、この時期には珍しく敗北し撤退した。[参照34]
2019_syria_破壊されたブルドーザーと機甲車両2019_syria_ブルドーザー

 恐らく装甲ブルドーザーの最前線活動は今後も続けられると予想している。
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 塁壁型車体遮蔽が上述の戦車循環移動射撃や交互進退射撃と組み合わせられるようになった理由は次の2事項が主だと思われる。

【1】車両が横方向に常に移動可能。
【2】塁壁は最前線に事前準備され、機甲車両は後方に普段は居て射撃の時に前方へやってきて、位置を複数候補から選べる。

 1つ目の移動可能な特性は考えるまでも無く循環移動射撃をよりスムーズにする要素である。通常の車両が収まる隠掩蔽壕と併用することもできる。
 2つ目も現代戦ではとても重要だ。塁壁が戦闘の発生する可能性のある領域の最前線にある。故に車両は普段は比較的安全な後方にあり射撃する必要が発生したら前方へ移動するが、その際に事前準備されていた遮蔽陣地へ入り撃てる上に即座に移動できる。(自軍陣地内では強固な隠掩蔽箇所に入っていられるが、前進して攻撃する際には車体を露出しなければならなかったスタイルの戦闘とは異なっている。)敵攻撃に晒されるリスクのある時間は極小化されるし、もちろん前進先に何もないよりも良い。それも少なくない距離を移動している。もちろん移動先は歩兵の偵察/監視が行われるのが望ましいが、状況が混沌化すると戦車は高い自律性を持って車長の判断で移動する。

 この事前に前方危険域内へ簡易陣地を構築しておくやり方は陣地線ではなくより戦線が流動的、モザイク的になった戦争の中でこそ効果が発揮できる。陣地線の敵の銃砲が構えている所に事前に作りにいくことは難しい。しかし現代の戦争には(戦車が踏み込めば敵襲撃の可能性のある)危険地帯ではあるが普段は敵の砲が向けられてはいない領域が多数存在する。その外縁に入り込んだところでこの事前の前進予定箇所への陣地構築がなされる。
 これはシリアの事例であり、先進国同士の索敵性能及び遠距離砲撃能力が高いケースで適用できるかは証明されていない。
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 以上のような性質があるがTank CarouselもTank TrousersもSyrian Bermも中心基盤は移動が多用され射撃位置に長く留まらないこと、交代で射撃地点に行くこと、前方射撃地点は何らかの事前準備または観測が為されていることであり、軍事コンセプトとしては類似的に考えられている。ここではまとめて循環移動射撃と呼び進める。ただし実戦において将校が指示する具体的手法としては当然分けて理解しておく必要がある。

Fire Carousel は新戦法なのか

 いくつかの記事、特にロシア系情報サイトでは循環移動射撃をシリアの戦訓から編み出された新戦法として紹介している。
 ただ上述の内容を踏まえると果たして新たに発明された戦法なのか疑念を抱いたはずだ。なぜならこの戦法の個々の構成要素そのものは程度の差こそあれ、各国の軍隊でそしてソ連で類似的なものが実践されてきたものだからだ。土盛りを横に長くする手法、複数チームがローテーションを組み交代しながら攻撃を担う手法、移動して射撃する手法、後方に下がって補給を受け即座に前線に戻る手法…全てどこかで見たことがある類のものだ。砲兵的視点なら対砲兵レーダーの出現で射撃後の迅速な陣地転換など基本中の基本事項だと感じるだろう。更に言うならこの循環式に射撃するやり方は戦車以前の時代に騎馬で使われていた。中央アジアの騎馬の民が使った戦法は『輪舞』と呼ばれている。ショット&アウェイを基本コンセプトに置くのは古今東西で珍しいものではなく、そしてかつて猛威を振るったものだ。
 よってこの戦法は新しい発想とは言えない。少なくとも革命的な新戦法とは捉えない人々がいることは不思議ではない。[参照31], [参照32]
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技術の進化と共に
 だが重要なのは21世紀の変質した戦場の中で、今この瞬間にも発展を続ける最新技術を用い複数の要素を統合的に運用し、極端なまでの特徴性を示していることだ。個々の要素の程度はかつて各国で為されたよりも高まって且つ統合されている。その意味で特性を有している。
 米陸軍外国軍事研究室はTank CarouselとTrousersをnew tacticsとして紹介する際に新技術が影響していることを注記した上で、『refine』つまり精錬/改良されたものであるとも書いている。[参照23, p.6]

 即ち、この戦法は新発明では無く既存の要素それぞれが進歩し且つ複合的精錬をされたという点で、新たな進化であると言うべきなのだろう。
 シリアでの経験による新発明というより(洗練)再進化なのだ。[参照24, p.10]

 この戦法を戦場に舞い戻らせたのは、各技術の進歩を基盤にしながら将校たちが考案したことによる。どちらが欠けてもシリアの実戦の中で見られることはなかった。
 今回の場合はまだ小規模の戦術への影響の発露であるが更なる可能性を秘めている。
2018年チェチェンでの演習_Tank Carouselと側方射撃使用

 循環移動射撃を再び表舞台へと立たせた技術革新の1つが機甲の走行間射撃性能の向上だ。
 WW2や冷戦中期までは、例外的な実施や漸進的進歩はあったが、戦車の射撃は基本的に停止して狙いを定めてからするのが望ましいとされた。突撃と呼ばれるものでもそれは同じだ。この様相は意外と米軍内でも誤認する者がいたようだ。[参照32]
 しかし冷戦末期から現代にかけて走行間射撃をするための技術は更なる発展を遂げ、激しい上下の揺れの中で走ろうとも砲身が常に標的方向を捉え続けることができるようになった。お約束となっているコップを砲身の先に載せて動くパフォーマンスは確固たる基盤技術が備わっていることを宣言するものだ。
 現代の戦車戦闘において走行間射撃は忌避されるものではなくなりつつある。

 自車両の側方へ砲身を向けた射撃の可能性も拡張された。側方射撃は見栄えが良い宣伝写真用ではない。本来装甲の薄い己の側面部を敵脅威の正面方向へと晒しながら闘うこのやり方は、当然戦闘中に初期予想とは違う位置から敵が出てきた場合に実施することはあったが、可能なら避けるべきであった。しかし移動しながらの射撃と即時離脱により被弾の可能性を下げ、さらに塁壁型車体遮蔽などの方策を加えることで、ロシア軍とシリア軍は側方射撃を実戦で恐れず使って見せている。
 さらに自動装填装置によって安定した高速の連続主砲発射が確立した。砲弾の射程や精度も漸進的に向上してきた。

 技術的発展は単一の戦闘能力の上昇だけでなく、この循環移動射撃に代表されるようにそれまで非主流だった戦法の可能性を拡大し、そして戦術そのものに影響を与える。技術者たちの貢献は時に彼ら自身の想像すら超え広がっていく。

戦術の中での循環移動射撃戦法

 循環移動射撃の有効性は戦法単一では適切に評価できない、というより戦術の中の一要素として視た時こそその真価が発揮される。故にそれが置かれる戦場の形態そして戦術の形態も考える必要がある。各種の戦場を網羅することは今はできないが、少なくともこの戦法には制限がありいくつかの状況では非効果的になる。
 効果が発揮できる場合において、現在ロシア軍が実施を考え演習で練度を高めている循環移動射撃を含んで展開される戦術は、極めて大きな脅威となる可能性がある。以下にはそれに焦点を起きながら書き進める。


 (続きます。長すぎるので別稿に分けます。)


続き↓
カルーセル戦法を組み込んだ戦術_偵察‐打撃コンプレックス、制圧射撃と移動、誘引からの逆襲
http://warhistory-quest.blog.jp/20-Apr-26







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 本稿はとりあえず以上です。ここまで長い散文を読んで頂きありがとうございました。
 続きは戦術の中にどう組み込まれているかです。個人的には
こちらが本題です。

 結局このFire Carousel戦法についてよくわかっていません。ショット&アウェイを基盤とするのは確かですが、それがどの程度か調べていたらバリエーションが多いからなのか複数パターンあって混乱が深まってしまいました。どうか戦車やロシア軍に詳しい方のご見識や考察を教えてほしいと願っています。非対称戦のケースと先進国同士の激突のケースで分けなければならず、膨大な可能性があるので少しでも御助力頂けたら感謝致します。
 own workのイメージ図等で修正、追記の必要あればご連絡ください。


本稿について貴重なアドバイスをして頂いた藤村純佳先生に心より御礼を申し上げます。







参照資料

[1] 2018年のスプートニクのTank Carouselに関する英語記事。これで英語圏に飛躍的に名が知られた。
https://sputniknews.com/military/201807041066049372-russian-armor-tactics/

[2] 2018年のRIAノーボスチ通信のインタビュー記事ロシア語。シチョーゴレフ大尉へのインタビュー。これが2018年に広がった大本。
https://ria.ru/20180704/1523753522.html
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[3] 2020年のロシア国防省の記事。アルメニアの山岳で戦車循環射撃戦法を実施。100人以上参加。
https://function.mil.ru/news_page/country/more.htm?id=12273217@egNews

[4] 2020年のロシア国防省の記事。シベリアでの演習で戦車循環射撃戦法を実施。500人以上参加。
https://function.mil.ru/news_page/country/more.htm?id=12270654@egNews

[5] 2020年のロシア国防省の記事。モスクワ軍管区での演習で戦車循環射撃戦法を実施。100人以上直接的参加。連続的攻撃の記述有。
https://function.mil.ru/news_page/country/more.htm?id=12271620@egNews

[6] 2020年のロシア国防省の記事。北オセチア区域での演習。T-90使用。300人以上参加。ユニット数は50以上。一部隊が射撃中はもう一部隊が装填し、動いている標的に対し継続的に攻撃をしたことが明記。
https://function.mil.ru/news_page/country/more.htm?id=12283400@egNews

[7] 2019年のロシア国防省の記事。オレンブルクでの訓練。600人以上参加。戦車循環射撃戦法の具体的やり方と効果が記されている。敵の移動を拘束し、最も危険度の高い敵をタイムリーに制圧(抑込)する。循環射撃により継続的に主砲の火力下に敵を置ける。
https://function.mil.ru/news_page/country/more.htm?id=12253904@egNews

[8] 2019年のロシア国防省の記事。スヴェルドロフスクでの訓練。50人参加。T-72B使用。距離800m射撃。本質は射撃を交互に行う事との記述有。
https://function.mil.ru/news_page/country/more.htm?id=12225625@egNews

[9] 2019年のロシア国防省の記事。ブリヤートでの訓練。T-72B使用。距離700~1200mでこの戦法を使用している。相手は戦術的マニューバ能力を喪失したことが確認された。
https://function.mil.ru/news_page/country/more.htm?id=12196963@egNews
https://function.mil.ru/news_page/country/more.htm?id=12226209@egNews

[10] 2018年のロシア国防省の記事。ヴォルゴグラードでの訓練。T-90A使用。30輌がT-90Aで合計戦車数は約100輌。125mm砲は最大射程を200m増加し2200m対応。照準速度が増大し射撃率が更に向上。夜間訓練。
https://function.mil.ru/news_page/country/more.htm?id=12189854@egNews

[11] 2018年のロシア国防省の記事。上海協力機構のピースミッション2018演習。カザフスタン、タジキスタン、キルギスタン、ロシア、中国、インド、パキスタンが参加し彼らにジハードモバイルと循環射撃戦法を説明したと明記有。ウズベキスタンもオブザーバーとして参列。
https://function.mil.ru/news_page/country/more.htm?id=12193374@egNews

[12] 2018年のロシア国防省の記事。チェチェンでの訓練。T-72B使用。夜間訓練で循環射撃戦法使用。流動的に変化する戦術及び状況、の記述有。戦車クルーにとって射撃セクターやターゲットまでの距離は事前にはわからない。
https://function.mil.ru/news_page/country/more.htm?id=12200845@egNews

[13] 2019年のロシア国防省の記事。ニジニノヴゴロドでの訓練。T-72B3使用。100発以上戦車は射撃した。200人規模参加。
https://function.mil.ru/news_page/country/more.htm?id=12268172@egNews

[14] 2020年のロシア国防省の記事。ニジニノブゴロドでの訓練。T-72B3使用。150人規模。この手法はシリアで証明された手法と記述有。
https://function.mil.ru/news_page/country/more.htm?id=12283261@egNews

[15] 2016年のロシア国防省の記事。ダゲスタンでの訓練。戦闘訓練は戦車部隊による攻撃と防御、昼と夜の戦闘すべての基本的な問題をカバーするように計画。1ルート廻る間に戦車は陣地にいる時、フロント方向への移動中、側面方向への移動中に連続的に射撃した。
https://function.mil.ru/news_page/country/more.htm?id=12096475@egNews

[16] 2017年のロシア国防省の記事。ダゲスタンでの訓練。リフレークス(Рефлекс:9M119対戦車誘導ミサイル)によって5000mまでターゲットを追えた。
https://function.mil.ru/news_page/country/more.htm?id=12142346@egNews

[17] 2019年のロシア国防省の記事。ヴォルゴグラードでの訓練。T-90A使用。戦車大隊指揮官ニコライ・チェルニコフ大尉の証言有。ダイナミックに変化する戦術的およびターゲットの状況が生まれたことにより、戦車クルーは迅速に反応し通常戦ではない戦闘タスクを果たす必要がある。
https://function.mil.ru/news_page/country/more.htm?id=12253180@egNews

[18] 2017年のロシア国防省の記事。チェチェンでの訓練。T-72B3使用。付属のСосна-Уデジタル火器管制システム、通信システム、コンピューターの複合により5000mまで追跡可能。
https://function.mil.ru/news_page/country/more.htm?id=12148867@egNews

[19] 2019年のロシア国防省の記事。ニジニノヴゴロドでの訓練。T-72B3使用。700人以上参加。ベラルーシ軍に循環射撃戦法を見せた。
https://function.mil.ru/news_page/country/more.htm?id=12251497@egNews

[20] 2018年のロシア国防省の記事。ニジニノヴゴロドでの大規模演習。T-72B3使用。4500人以上参加。西部軍管区所属のカンテミロフスカヤの師団の戦車が循環射撃戦法を実施。通常戦の軍事先進国が仮想敵であり非対称戦ではない? 仮想敵の自走式対空砲を破壊した。戦車部隊の偵察-打撃複合(танковый дозор разведывательно-ударного комплекса)が敵機甲の攻撃を誘発し敵主力部隊を戦闘に誘引し、そこで2A65ムスタ-B 152㎜榴弾砲からの砲撃で分離させる。更に誘引した敵を予備においておいた機甲部隊が1800mの距離から側面攻撃を行い撃破した。この戦闘演習の集大成は榴弾砲による20㎞からの連携砲撃に加えて、シリア式掩体と循環射撃であった。この演習の縦深は35㎞に達した。
https://function.mil.ru/news_page/country/more.htm?id=12198103@egNews

"Джисак"とも

同演習の別軍事サイト記事。カンテミロフスカヤ師団は市街戦を想定して行われている。シリアでの戦訓によれば、火力投射を行えばすぐ敵はそれに火力で反撃してくる。よって(最初に威力偵察をした部隊は攻撃を回避し代わりに)待伏せ待機していた戦車の狙撃や攻撃ヘリによってその特定された敵を撃破する。
https://vm.ru/army/340046-my-svoi-goroda-ne-sdaem

[21] 2019年のロシア国防省の記事。レニングラードでの訓練。T-72B3使用。戦車戦想定で昼と夜両方実施。200人規模。横を向いた砲撃を実施した。
https://function.mil.ru/news_page/country/more.htm?id=12217005@egNews

[22] 2018年のロシア国防省の記事。モンゴル軍との定期合同演習で戦車循環射撃戦法の公開。ブランコ(качели)戦法も一緒に使われている。常に移動し、常に隠れることがこの戦法により可能となる。
https://function.mil.ru/news_page/country/more.htm?id=12198171@egNews
 2019年にもモンゴル軍にタンク・カルーセルとシリア式塁壁を指導したことが軍の雑誌で書かれている。
http://redstar.ru/wp-content/uploads/2019/08/096-30-08-2019.pdf
 同じく2019年«Селенга-2019»演習でのモンゴルとの訓練でタンク・カルーセルを使用した記述。p.27
http://army.ric.mil.ru/upload/site175/4J5gI2MXZS.pdf
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[23] 米軍外国軍事研究室(FMSO)の季刊誌。p.6にTank Carousel 言及あり。
FMSO, (2018), "Foreign News & Perspectives of the Operational Environment : SPECIAL OPERATIONS FORCES"
https://aquadoc.typepad.com/files/oe-watch-vol-08-issue-08-aug-2018.pdf

[24] 2019年に公開された軍事研究をしているMITRE Corporationのロシア軍戦闘能力調査レポート
Timothy Thomas, (2019), "Russian Combat Capabilities for 2020: Three Developments to Track"
https://www.armyupress.army.mil/Portals/7/Legacy-Articles/documents/Thomas-Russian-Combat-Capabilities.pdf

[25] 2017年ザーパド演習の記事。循環射撃戦法が訓練されたことが記されている。
https://eng.belta.by/society/view/tank-carousel-demonstrated-as-part-of-belarusian-russian-army-exercise-zapad-2017-105063-2017/

[26] 2017年のウクライナ将校により米陸軍指揮幕僚大学で発表された論文。敵ハイブリッド戦の内で特に米軍の機甲旅団戦闘チームBCTと直接相対する脅威について調べている。
Serhii Sobko中佐, (2017), "The U.S. Armored Brigade Combat Team versus current Hybrid Threat: how should the U.S. ABCT be Organized and Equipped to address the Current Hybrid Threat"

[27] 2017年のロシア系安全保障ニュースサイトВоенное обозрение(Military Review)の記事。Tank Carousel と野戦でのシリア式塁壁について具体的に書かれている。
https://topwar.ru/126788-siriyskiy-val-i-tankovaya-karusel.html?utm_source=website&utm_medium=social&utm_campaign=group

[28] 2020年のロシア系ニュースサイトFree Newsの記事。ペアで戦車が行動しTank Carouselをして敵過激派を撃破したと述べられている。シリア軍に随伴歩兵がいないにも関わらず敵は戦車に対して何もできずに抑込されたまま潰された。
https://free-news.su/voennye-konflikty/42547-tankovaya-karusel-para-sirijskix-t-72

[29] 2018年のズヴェズダ紙の記事。シリア式塁壁とTank Carouselについて述べられており、ブルドーザーの記述がある。
https://zvezdaweekly.ru/news/t/201812131026-W8xqD.html

[30] 2018年のズヴェズダ紙の記事。Free huntとシリア式塁壁の記述がある。ここでもブルドーザーが触れられている。
https://zvezdaweekly.ru/news/t/2018101936-v1GUw.html

[31] ロシア系軍事を追っているサイトのTank Carouselについての記事。ウクライナのような軍には効果的ではなく、トレーニング用だと考えを述べている。
http://blog.vantagepointnorth.net/2018/07/the-russian-tank-circus.html

[32] 戦車系サイト。T-72Bについて調査した記事の中でTank Carouselに触れ、チェチェンなどで既に使われていたことを述べている。興味深いことに砲塔内に置いておく砲弾数を減らす方式としてTank Carouselを使えるかもしれないと捉え、過去の米軍の研究を引用している。
https://thesovietarmourblog.blogspot.com/2015/05/t-72-soviet-progeny.html

[33] デピュイ大将たちの冷戦期欧州戦線でのソ連侵攻に対応するための演習。旧ドイツ国防軍の将軍を招いて意見を聞いたもの。
William E. Depuy, (1980), "Generals Balck and Von Mellenthin on Tactics: Implications for NATO Military Doctrine"

[34]
 2019年のシリア内戦での丘陵地帯での戦闘。Battle for Kabani。この時期には珍しく完全に政府軍が攻撃失敗し撤退したケース。政府軍の装甲ブルドーザーや機甲が複数残されている。
https://international-review.org/battle-for-kabani-a-rare-defeat-for-the-syrian-army/

[35]~は別の戦術記事参照。
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【メモ】

Роман Щеголев = Roman Schegolev
фланговую стрельбу = 側方の射撃、自分が撃たれるのではなく自分が横を向きに撃つこと。

・線形的防御(linear defense)  防御戦線を明確に構築するタイプの防御。
・陣地防御(positional defense) 現在の米軍は陣地防御をarea defenseとしており、米軍内の概念的にこちらの方が正しい。positional defenseは陣地火力主体というニュアンスで使われており中佐も同じようだ。

・extended defense = 拡張的防御。広正面防御、担当戦線が延ばされた防御というニュアンスで使う者もいるようだが、それと違い米陸軍ではこれをmobile defenseと類似的概念として使う場合がある。基本的に前線での撃退ではなくより縦深に戦闘領域を拡張しその中で拠点陣地とmobile部隊が複合的に相手を倒すことを狙う。(1953), "Professional Journal of the United States Army", p.84を参照。

・MLRS = 自走式多連装ロケット砲

・Mobile defenseは日本では一般的に機動防御と訳されるが米軍の解釈に基づけば移動可能型防御と訳すべきであり、意図的にカタカナのままにした。またMobile defense とArea defenseの差異に関する問題は別の論文を別途紹介することとする。

・偵察‐打撃コンプレックス(reconnaissance-strike complex)の用語は次のロシア国防省記事でも使用されいる。
http://eng.mil.ru/en/news_page/country/more.htm?id=12193374@egNews

・シリア式塁壁が市街戦の動画などのタイトルに使われることがあるのだが、建築物利用のやり方をシリアの壁と言うべきかは少し疑問に思っている。

・2020年3月時点でタンク・カルーセルを使用したとロシア国防省が発表しているのはT-72B、B3、T-90である。T-80系でタンク・カルーセルをしたという報道を現在の所ロシア国防省サイトからは確認できない。
CRSVDVさんの御助力により一件発見。2020年4月11日というかなり新しい記事である。
https://function.mil.ru/news_page/country/more.htm?id=12286225@egNews

・移動中の戦車の射撃はWW2ソ連軍では許可されており教本も存在する。1943年発行