循環移動射撃(カルーセル、トラゥザーズ)戦法について紹介した前回の記事に続き、それを組み込んだ戦術的行動について調査しましたので記載しようと思います。
 機甲の循環移動射撃が組み込まれ得る戦術は様々あり、現在シリアでの実戦やロシア軍の演習で試されています。いずれも極めて強力なものであり、相手がもしそれを把握しておらず巧みな対処ができなければ破滅的な影響をもたらし得ます。それらは真新しいものではなくむしろ歴史的に幾つもの巨大な実績をあげた戦術の現代への適合と統合という意味での進化に近いものでした。循環移動射撃戦法がもたらす効果はその戦術を構成する一要素として、例え循環移動射撃が単一では敵に重い損害を与えていなくとも、全体の戦果に対し大きな貢献をしています。
 以下の事項について特に着目して記述しました。

・偵察‐打撃コンプレックスの活用
・機甲のノマド式運用
・長時間制圧射撃と別チームの移動支援
・誘引からの分断、包囲、逆襲(マニューバラブル防御の一部)
カルーセル_偵察からの打撃

関連
前回の循環移動射撃(タンク・カルーセル、ファイヤ・カルーセル、タンク・トラゥザーズ)、シリア式塁壁に関する調査記事。
リンク→タンク・カルーセル戦法_機甲による循環移動射撃
http://warhistory-quest.blog.jp/20-Apr-15

攻撃時に後退を含む頻繁な移動を許容し、継続的な射撃を行うタイプの戦闘技法とそれを用いた包囲戦術の事例
リンク→弾性の包囲概説と戦例
http://warhistory-quest.blog.jp/18-Apr-12

____以下、本文_______________________________________
 循環移動射撃は一撃を正確にあてることというよりも、あてられないようにしながらある程度の火力を放ち続けることを主眼としている。そこには必ずポジティブな効果と共にネガティブな影響が生まれる。各要素は置かれた戦争の形態、地理的状況、そして戦術によって活かされもするし逆に致命的欠点にもなり得る。
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 シリア内戦でアサド政権軍の機甲部隊は非正規戦そして市街戦にも投入された。戦闘手法が実戦に即していなかった前半期に膨大な損失を出し機甲戦力は事実上崩壊した。ロシアの支援を受けながら再建をしたが機甲車両の欠乏は埋まらりきらず、文字通り虎の子の部隊をあちこち駆けずり廻らせている。(未確定だが2018年までで1800~2000輌以上の戦車が失われたとも言われている。[参照41],[参照42]
 彼らは1輌でも損失量を減らすために戦力保存性能の高さを重視した手法として移動射撃&即時離脱に比重を置いた戦闘スタイルを洗練させて行き、タンク・カルーセル及びトラゥザーズへと到った。

 常に採用したのではなく、リスク覚悟で瞬間火力を高める他の戦闘技法を取ることもある。だがそれはリスクをとってリターンが期待できる場合だ。市街での非正規戦のような戦場では機甲がリスクを冒しても見合った戦果を得られないケースが幾つもあった。それ故にリスクを抑えながら戦いトータルで戦果を得るという代替案を用意するようになったのは理外の事ではなかった。
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 この戦法は間違いなく複数の短所を内包している。
 例えば「循環移動射撃をすると戦力の逐次投入となり、投射できる瞬間火力最大量が減少してしまう」ことは簡単に思いつくだろう。他にもその移動の増大により燃料消費や修理の負荷が増えることも考えられる。そもそも移動をし続けることで敵攻撃を避けられると謳っているが、反撃を受ける可能性が本当に減るのか敵兵器や戦場ごとに検討しなければならない。下手をすれば移動先を特定され狙い撃ちにされる可能性すらある。ロシア軍は当然それらを承知のはずだ。

 2020年4月時点までの実戦運用はシリアとウクライナの紛争で事例がある。これらは限定的な戦力あるいは非正規戦であり、強大な先進国を相手にした通常戦での実戦検証はまだない。ロシア国防省は幾つかの多国間演習でタンク・カルーセルを披露及び指導しておりこの戦法の有用性に確信を持っているようである。その演習の政治的性質にもよるが、循環移動射撃が『テロリストの様な脅威(非正規戦)に対抗する上で有効的な手段の1つであると発表をしているケースがある。[参照11] しかしロシア軍のみの演習では、タンク・カルーセルを『通常戦』を想定して対抗演習を行った際にも使ってもいる。更にそれは野戦市街戦の両方で行われている。[参照20], [参照40]
 即ち、戦闘環境次第では非正規戦でも通常戦でも循環移動射撃は有効であるとロシア軍は考えているのだ。

 それぞれの状況に合わせ、循環移動射撃が有するポジティブ面とネガティブ面がどうなるかを分析し、それが上位部隊の企図する戦術に貢献できるか判断することが必須となる。採用可否、バリエーション、即応変更などでこの戦法は部隊指揮官及び各車長の高度な判断能力を要求する。逆にその手腕がある時、循環移動射撃は広い可能性を持ち様々な戦況で効果を発揮するであろう。

 以下にはまず循環移動射撃がそれ単一で有する効果で代表的なものを挙げ、続いて各々の効果発揮を期待される戦術についてシリアでの実戦例及びロシア軍の演習を参考としながら記述していくこととする。

直接的効果_損失リスク低減性、ハラッシング、偵察、制圧、誘引

 循環移動射撃の効果として特に有力なのは損失リスク低減、ハラッシング、偵察、制圧(抑込)、誘引である。循環移動射撃はそれ単体では強大な打撃力を発揮できないが、戦術の中では非常に重大な役割を果たし得る。一部は被る所もあるし同時に発生しないこともある。戦術の前にまずこれらの効果を簡単に記しておく。

損失リスク低減
 自軍戦力の損耗を抑えることを重視するのが循環移動射撃の特性である。機甲は移動をほぼ常時しながら頻繁に危険域から離脱するので被弾リスクに晒される時間は短く、もし反撃を受けたとしてもそれは各チームの内の1つ(多くとも2つ)だけになる。しかもその攻撃を受けているチームはすぐ移動離脱を最初から許可されており、別のまだ敵に特定されていないチームが即時に支援をしに来る態勢が整っている。これが循環移動の大きな効果の1つだ。他の手法でも以下に記す攻撃的効果は得られるが、この戦力保存性という防御的効果と兼ねられる手法は多くない。
 また、この性質を利用して単一でも目標破壊を担うケースがある。目標が小規模であればその破壊を担うことが充分でき、危険地帯に入らねば攻撃可能範囲に収められない場合にリスク低減性を有するこの手法が有力となる。
 ただし誘導兵器の即応性や運搬性そして誘導精度が戦車側の技術進歩を上回る速度で今後劇的に発展した場合、この長所は著しく縮小する。実戦での脅威の量にはコストが大きく影響するだろう。

ハラッシング
 harassingとは敵を単一戦闘で撃破できるような打撃ではないが、削るか圧力をかけ続けることを指す。
 例えば米軍教範中ではゲリラの散発的な襲撃と離脱の際に受ける効果としてハラッシングを記述している。歴史的には騎兵が弓で継続的に襲撃と離脱を繰り返して少しずつ相手に出血を強いたり心的及び肉体的な疲労を貯めさせる際に使われ、突撃的攻撃とは区別される。多くの場合自軍戦力の保存を重視し敵と常に離隔距離をとろうとする。

偵察
 危険区域の一部とわかってはいるが敵に強力な反撃能力があるか判明していない場所へ火力投射を行うことで相手の反応を探ることができ、その際の未確認敵脅威からの反撃による損害を極小化できる。
 また敵反応を得るには必要充分な刺激を与えなければならない。その点で1分間に何発もの戦車主砲の攻撃を長時間続けられた場合、敵はその攻撃を無視しきれなくなる可能性が高い。敵にとって面的制圧射撃でないため一部なら反撃をやろうと思えばできるのも効果的だ。ただその攻撃が命中する可能性は低い。
 自軍損害のリスクを抑えたまま敵脅威の兵器、量、反応時間などの情報を晒け出させることが期待できるのである。

制圧(抑込)
 高速かつ安定的な交代で火力投射が持続するので砲撃が止む時間帯が最小化される。これにより砲撃区域にいる敵は常に制圧射撃を受け移動が阻害されることが期待できる。
 火力量が少ないため砲撃箇所以外は移動できると一応机上では言えるのだが、戦闘中に砲撃を受ける敵兵士が相手の事情を正しく把握できるかはわからない。またたとえ一輌でも最大毎分8発近く撃たれたら少なくともその戦車へ直接反撃できる位置の者達はかなり抑え込まれる。長時間続けることによる心理的な摩耗も反撃のためのマニューバを行う士気を削ぐだろう。
 ただし実施チーム数が少ないと瞬間投射火力量は大きくないため圧力をもたらせる範囲は狭く、戦術立案時に指揮官はどこに行うか入念に考える必要がある。

誘引
 誘引は2つのケースが考えられる。
 1つ目は単にその長期間攻撃を受けている場所が主攻箇所と誤認して戦力を集める場合だ。敵戦力は循環移動射撃をする部隊に引き付けられ本当に必要な個所を手薄にしてしまう。あるいは自軍後方部隊を含めより包括的な打撃が集中され集まった敵を打尽にすることができる。(ただしゲリラなら逃げ散る可能性がある。)
 2つ目は循環移動射撃による継続的な圧力をほどくため討って出てくるケースだ。これは誤認していなくともカルーセルを「戦力の分散、逐次投入」と敵指揮官が考えてチャンスと捉える場合でもあり得る。自軍から仕掛ける場合だけでなく、敵攻勢の際に防御部隊が循環移動射撃を実施し特定方向にハラッシング及び誘引をすることも可能である。
 ただこれら誘引成功の期待はそこまで高くはない。相対的戦力比及び敵企図によっては全く成功しない。だがもし成功すれば敵の進撃位置を自分の意志で決められるという絶大な影響をもたらす。

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 また、上記の効果を狙い射撃をする際に正確な狙いを定めることに拘らずに撃つことも考えられる。タンク・カルーセルでは射撃位置についてから離れるまでの時間が極めて短く、標的が見えていなかったり視界が開けてから標的を探す必要が生まれる。もし正確に中てることを望む場合は機械的にも人的にも極めて高い水準が要求される。これは自分が移動する場合だけでなく敵が射撃即移動をしてくる場合でも同じであり現代の機甲部隊には必須になっている。ロシア軍は一瞬しか標的が見えていなくとも即断速射をできるように様々な訓練を続けている。2019年に第1親衛戦車軍隷下の部隊が2000人規模で実施したニジニノヴゴロドでの演習では、遮蔽陣地からでも外にいる時でも、平均2kmの距離で短時間だけ姿を現す敵に対して戦車が即応し命中させる訓練を大規模に実施した。さらに戦車部隊は弾薬補給、停車陣地から攻撃陣地への移動の訓練も同様に報告されている。[参照46]

 以下には上記の効果を循環移動射撃を行うチームの所属する上位部隊が実行可能な戦術の例を記す。

偵察を主としたカルーセルと戦術_Tank Carousel as Reconnaissance in Force

 敵がいる危険区域だとわかってはいるもののその戦力が判明していない場合、偵察をまず実施する必要があり、そのための候補として循環移動射撃を指揮官は頭に浮かべることになる。他の選択肢とリスクや長所/短所を比べ、あるいは同時的に実施しながらこの戦法の採択を決めてから各員に通達する。
 偵察を狙いとする場合、もちろんある程度事前情報に基づき狙いは定めるが、厳密に循環移動射撃の固定目標を作ることはない。偵察とは限らないがロシア国防省の原文にもそれが示唆されている。[参照12]

 基本となるコンセプトは、ある部隊が循環移動射撃を実施しその偵察効果により敵戦力内容と配置を判明させ、その部隊の全力または別部隊が特定した敵に打撃を仕掛けるというものだ。詳細バリエーションは複数あるが概念的にはこの一文で説明は済んでいる。
カルーセル_偵察からの打撃
< 循環移動射撃による偵察_敵反応検知時の即応的打撃_own work>

 循環移動射撃が威力偵察に有効なことはロシアでははっきりと認知されており、次のように報告されてもいる。

 シリアでの戦闘経験は次のことを明らかにした。あるエリアへのこの(循環移動射撃の)激しい砲撃は敵に極めて早く撃ち返すことを強制したのである。それにより敵の武装を特定し、そこに別の待伏せしていた戦車あるいはヘリが攻撃をするのである。これは戦車兵の近代的経験であり、カンテミロフスカヤの部隊(第4親衛戦車師団)によって連隊規模の対抗戦演習でデモンストレーションされたものである。[参照40]

 循環移動射撃の脅威を考えるにあたり決して忘れてはならない事は、直接的にカルーセル運動をしている車両以外の戦力が控えており即応的な連携を取る(可能性が高い)ということだ。特にカルーセルによる偵察と別部隊(戦車、砲兵隊、戦術航空戦力)の打撃という組み合わせが期待される。

【偵察‐別部隊の機甲による打撃】

 近距離の機甲部隊が直接その場に現れるパターンである。基本的に最初から投入を想定しておき近くに隠蔽していた戦車部隊が強力かつ正確な砲撃をピンポイントで判明した敵へ実施する。循環移動射撃を含んだ各アクションを定式化しやすく旅団や大隊、中隊で実践するシステムを根付かせやすい。

 シチョーゴレフ大尉の説明にそのことが明記されている。
 「10、20あるいは30分もの時間絶え間なく戦車が砲撃することを。対する敵側はもはや我慢できなくなり撃ち返してくる、そしてその武装をあらわにするのだ。その瞬間、我々の隠蔽しておいた狙撃-戦車が特別な訓練を施された乗員と共に行動へ移る。(位置と武装が露見し)特定されたターゲットに対し彼らは迅速かつ効果的な打撃を行うのである。」[参照1], [参照2]

【ノマド式運用】

(メモ:ノマド式運用の参考文献→シベリア連邦大学軍事教育科学部(2017)『一般戦術』、ロシア連邦軍事訓練センター(2014)『戦術教練』、ベラルーシ・グロドネンスキー医療大学(2013)『特殊戦術教練』、モスクワ国際関係大学軍事部門※現軍事訓練センター(2011)『自動車化歩兵及び戦車の主要戦闘 教練ガイド パート1』、ロシア連邦金融大学HP、ソ連(1944)『赤軍の装甲及び機械化部隊規範』)
 攻撃/守備いずれにせよ各部隊は配置割り当てがある程度決まっているので、その範囲を統括する指揮官に直属し柔軟に動かせる部隊がこの打撃を担うことが多いだろう。勿論各部隊を大胆に配置転換させる指揮官もいるが、基本的に米軍‐NATO系ではこの種の投入に割り当てられる部隊は予備(reserve)である。

 ロシア‐旧ソ連圏でも予備戦力が担うが、少し違う部隊を用いるケースもある。それはノマド式運用を予定している部隊である。Кочующее / Кочующий / Кочующаяという形でロシア連邦軍の複数の教本に登場し専用の軍隊符号も存在する。直訳なら動き回るという意味なので訳語は回遊的とするべきかもしれない。英語ならnomadic(対訳кочевой)かroamingが該当するのだが、内実は停止して運用しても良いためノマド式と訳しておく。チーム全体にも使われるが機械化小隊&中隊用教本や一般戦術教本などでは例えばノマド式BMP(Кочующая БМП)、ノマド式戦車(Кочующий танк)という表現がされている。この言葉を機甲に使う概念は古くからあり1944年のソ連軍の戦車及び機械化教範にも登場している。砲兵隊も含め『ノマド式火力投射(Кочующее огневое средство)』として扱われている。
nomadic armored vehicle_ノマド式運用の部隊

 言葉の通り放浪的な移動を最初からノマド部隊は想定し、偵察/初期交戦で判明した状況に合わせて指揮官は最も効果的な位置へと隠蔽位置から移動させる。ノマド部隊は今回焦点となっている活動のみをするわけでなくポジション防御、打撃や伏撃、支援など多岐の用途で使われる。米軍ではどちらかというと中~小規模編制内のmobile unitの概念が近い。小規模編制の一部がノマドになることもあれば全体をそうすることもある。
防御陣地_前方配置のケース 防御陣地_後方配置、ノマド運用のケース
< 自動車化(または戦車)部隊の防御陣地の例_左図A:前方配置ケース_右図B:後方配置及びノマド運用ケース >

 例として教本にある小隊(または中隊)の典型的防御陣地を添付する。上の左図Aが前方配置型の防御陣地の基本図である。部隊の初期配置は前方の即時攻撃位置であり代替及び予備陣地(点線)は全周にはあるが後方に位置している。一方で右図Bが後方配置ノマド運用をするケースだ。車両の初期配置は後方の隠蔽位置であり、前方には既に陣地を用意してあるが配置はなされていない。これは名目上は代替陣地であるのだが、戦闘が始まると指揮官の指示で各車両は前方のどこかの陣地または場所へ移動し主要な迎撃を開始する。よって後方の初期位置は主陣地とは限らない。
 これはあくまで一例であり、他にもノマド式運用は様々な場面で見られる。
機甲の後方配置、ノマド運用の例
< 図C:機甲の後方配置及びノマド式運用例 >

 多少強引だが米軍と違う箇所を言うとしたら、その投入の積極性/容易性である。米軍の予備は最前線部隊では対処できなくなった時に投入される傾向が強く、最初から移動を想定しているモバイル部隊でも一度投入すればそれに全力を尽くすことが期待されるので、指揮官は投入を慎重に扱う。
 一方でロシアのノマド部隊は最初期からその戦闘に加わわることに抵抗が全くない一度ある場所に投入されてからそこを離れるのも普通のことだと考えている。動かすというより動き回らせる部隊である。ロシア軍内でも予備部隊を別に置く場合がありこの2つの境界は厳密に定める必要はないが、どちらかというと予備部隊は戦力が多くノマド部隊はより小さく軽く動かす用といった具合に思われる。米軍でも禁止されていることでは無いため指揮官によってはこの性質を持つはずだ。
前方に複数の陣地候補を作って起き状況に合わせ移動
前方の複数陣地候補へ移動する_戦線
< 上図D:複数の陣地候補を前方に造っておき戦闘時に移動する例_下図E:戦線各所の防御陣地で実施>
※これはノマド運用ではない。

 ノマド式運用は必然的に頻繁な移動を前提とした陣地構築を行う。それ故に打撃だけでなく、循環移動射撃と類似的な効果をノマド部隊が発揮する場合もある。その場で撃ってからまた別の代替陣地へと移動し再び射撃するケースがあるとも記されているのだ。

 これにより敵に損害を与えるだけでなく、彼我の戦力を誤認つまりミスリード効果をもたらすことが期待されていることが記されている。添付図Eはタンク・トラゥザーズの陣地と似ているがそのような名前は使われていない。教本の典型例はオプションで複数陣地から移動先を選ぶのを主題とした説明であり、循環移動射撃とは移動の頻繁さと交互性に差異があるが、同じになる場合が発生することを否定していない。少なくとも2017年までは戦術教本中にカルーセルという表現は使われておらず、循環移動射撃や交互進退式射撃ほど常なる移動をするような指定はないが、充分にそれをできる基盤をロシア軍は持っていたのだ。図Cで丘の後ろから左右に移動して撃つのを頻繁かつ移動をほぼ常にすればほぼカルーセルであり、図Eで複数チームが交互かつ頻繁に前後の移動を繰り返せばトラゥザーズとなるだろう。
 さらに車体の隠掩蔽方法の例も教本には載せられており、その中にはシリア式塁壁とほぼ同じものが載っている。下図вのことを教本中では『огневой дорожки(射撃レーン型)』と呼んでいる。
車体隠掩蔽方法のバリエーション
< ロシアなどで使われる戦車用陣地の例_※これはノマドとは限らない >

 これらを鑑みればタンク・カルーセルやトラゥザーズを新戦法だと感じないと述べた理由がわかるはずだ。ただし常時移動や複数車両の連動性などは教本には指定されておらず、トラゥザーズなどは移動距離が長いことやロシア軍自身が新たなやり方だと述べていることからも彼らにとって進化的なコンセプトと言える。ノマド式運用の概念が進化しその可能性を拡げたという観点を考えると、歴史的に猛威をふるった類似戦闘スタイルが新しい武器と連携と共に蘇ったと言え、そして更なる発展と戦術との統合が将来起こることを予感させる。

 ノマド式火力投射についてロシア軍の注目度は米軍よりも高い。米軍は「Кочующее огневое средство」の訳語にあたるShoot & scootやfire & moveの主な用途を砲兵の射撃後即時転換の説明のために使っているが、ロシア軍は上述のように戦車や歩兵戦闘車での運用方法を積極的に開発しており、教本中に具体的に記している。にも関わらず米陸軍外国軍事研究室は解説書「Russian Way of War」の軍隊符号翻訳の際にノマドを省いてしまっている。[参照39] (ただ米軍ができないのでも概念的に欠落しているのでもなく類似的な運用は可能だ。軍内の注目度の高さはそれが要求される事態が多いかどうかだろう。現行のATP 3-20.15/MCRP 3-10B.1では戦車陣地は基本的に2つ以上の射撃ポジションを持つことにされているがそれはあくまで角度を変えるためとなっており大きく位置を移動させる距離を取ってはいない。)
海兵隊_戦車陣地_ATP 3-20.15_MCRP 3-10B.1
< 米軍教範中の戦車陣地>
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 柔軟かつ意思決定に抵抗少なく指揮官は後方隠蔽しておいた部隊を前線に投入できるようにロシア軍はなっている。投入するタイミングが遅れてはジハード・モバイルや先進国の機甲戦力を相手に効果的な攻撃を与えられない。打撃部隊の規模は敵戦力合わせて変化し、大規模な戦車部隊の投入もあり得る。これにより検知した敵を逃さず、戦術的偵察‐打撃を完遂するのである。

 当然ながら循環移動射撃を使用しなくても他の偵察行動でもこの戦術は実施できる。ただし循環移動射撃がその常時移動による危険地帯での生存性や持続的火力投射能力による圧力特性を有するため、シリアでの実戦で次第に採用が増えていった。戦力欠乏から機甲を1台でも多く生存させたかった背景も影響したはずだ。

 また、状況次第では偵察効果のために循環移動射撃をしていた部隊が、友軍打撃部隊の到着した後に自らもその戦力を一斉展開し敵への攻撃に加わることで瞬間火力量を最大化する可能性は充分ある。
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【偵察‐砲兵及び航空戦力による打撃】

【カルーセルで偵察→連動する砲兵隊、ロケット、航空機による即時の火力集中投射】

 打撃部隊として傍にいる戦車部隊以外の火力、特に砲兵も用いられる。
 循環移動射撃をすることを計画している部隊と砲兵隊が最初から密な連絡を、ほぼリアルタイムで情報を得るようにシステムを組んで置く。これにより循環移動射撃に敵が我慢できず撃ち返した瞬間に、戦車部隊は回避行動に注力し、偵察で特定した敵へ砲兵隊が高精度かつ強力な火力投射を行うのである。
偵察‐打撃コンプレックス_1
< 偵察‐打撃コンプレックスの中でのタンク・カルーセル_威力偵察開始_他の可能な偵察手段も併用_own work>

偵察‐打撃コンプレックス_2
< 偵察‐打撃コンプレックスの中でのタンク・カルーセル_敵反応_情報をほぼリアルタイムで他部隊と共有_own work >

偵察‐打撃コンプレックス_3
< 偵察‐打撃コンプレックスの中でのタンク・カルーセル_砲兵を中心とする可能全投射手段の即時・高精度の打撃_own work >

 砲兵隊のカバー範囲は広く複数の箇所へ支援を行える。戦力が限られた軍隊でもこの方式は活躍する。例えば機甲戦力が不足している軍隊において機甲を各地点全ての後方位置に揃えるのは不可能だが、各砲兵隊は大半の地点を射程に収めておける。そして偵察を行い、敵戦力がある程度存在する地点で反応があるのでそこに砲兵隊は間髪入れずに火力を叩き込む。各機甲がリスクを冒しすぎることを厳に禁じられあくまで戦力の保存を第1としていても、砲兵まで含めた部隊全体で見れば十分な打撃力を発揮できるのだ。
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 ロシア軍ではミサイル部隊も遠い距離からの高精度爆撃を狙っており、2018年の大規模演習では次のようなやり方が取られた。

 ムリノ地域でマニューバの素晴らしい戦闘訓練が実施され、そこには『イスカンデル-M』作戦‐戦術ミサイル複合(ОТРК)も計算された。ミサイルは正確に指定された通常戦力の敵の要塞化地点へとヒットした。
 イヴァノヴォ・ミサイル旅団は敵地点の偵察データを受領し、ミサイル攻撃の初期データを迅速に準備した。戦車部隊による追加偵察および自動車化歩兵部隊の偽装マニューバに続いて、イスカンデル-Mミサイル旅団は電子上でだが標的へミサイル攻撃を実行した。ミサイル部隊は発射後に位置を変えた。[参照40]
 イスカンデル-Mの攻撃は仮想敵の司令部を撃破することに成功してたと報じられている。[参照45]
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 また、上述のように戦闘ヘリも大きな打撃力を発揮する。同2018年演習で参加した航空戦力はSu-34(作戦‐戦術航空機と書かれている)、Mi-8ヘリコプター、Mi-24戦闘ヘリが少なくとも参加した。[参照45]
 仮想敵が逃げ出すと、ヘリなどの航空複合が空対地ミサイルでの攻撃を移動中の目標へ実施した。ヘリは自動車化部隊と戦車部隊が実施中の逆襲打撃に支援を行ったのである。[参照40]
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 現場に即した指揮系統が必要で簡単なものではないが、この火力投射を砲兵隊だけでなく航空機で行うことも考えられる。航空戦力のカバー範囲は更に広い。ただ戦力と時間が限られるため即応性を獲得するためのシステム作りが厄介で各国は試行錯誤をしている。シリア領内のロシア空軍の戦力は多くなかったが、彼らはかなりの活躍をした。ロシアがこの戦争で実施した即応的な空爆手法はフリー・ハント(free hunt=свободная охота)と呼ばれている。[参照24], [参照30] 

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 より強力な火力集中を狙うなら機甲、砲兵隊、航空機すべての打撃を複合することが望ましい。
 敵勢力を検知特定・打撃・撃滅するために有効な手法として、複数の偵察手段・通信・近距離及び遠距離両方での火力投射を効果的に行うコンセプトをロシア軍は導入・発展させている。それはテロリストの様な発見が普通難しい相手でも有効であるとされる。その内の1つは偵察‐打撃コンプレックスと呼ばれるものである。[参照11] 

 砲兵隊及び航空戦力の打撃力は当然他の偵察手法と組み合わせても実施され高い需要が有り、そのシステム作りと即応性及び精度向上は最重要テーマの1つとなっている。砲兵や航空機の打撃には最前線より要請が来てから如何に時間的ギャップを無くすかという難しい課題が立ちはだかっている。ロシア軍はそのために一貫したコンセプトを開発している。それがソ連後期から続き現代戦に適応化された偵察‐打撃コンプレックスである。
 ロシア国防省はタンク・カルーセル戦法を使った演習で偵察‐打撃コンプレックスの運用を明言している。[参照11], [参照20] 

【偵察‐打撃コンプレックス】

 偵察‐打撃コンプレックスの概要については米陸軍指揮幕僚大学ソ連陸軍研究室のVego博士の論文(1990年)を記事末尾に要点箇所翻訳し載せておく。
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 基幹となる偵察‐打撃コンプレックス=RSC(Reconnaissance-Strike Complex)= RUK(разведывательно-ударного комплекса)と呼ばれるものは冷戦後期に米ソ両国で競うように発達したこの戦闘コンセプトだ。[参照35, pp.1~3] この概念はネットワーク中心の戦い(NCW)によって更に重要になってきている。[参照36] ロシアではネットワーク詳細部の高速化を含め『ЕСУ ТЗ』と呼ばれている。
 RSCを簡単に言えば諸兵科連合の各部隊による偵察、目標捕捉、兵器選定と指し向け、攻撃を1グループの高速ネットワークシステムで行い、偵察から攻撃までの時間を最短化し且つ打撃手法を最大効果発揮させようというものだ。特に戦線から離れた距離にいる砲兵隊と航空機を即時連動させ、彼らの有する強大な火力を標的へとタイムリーに投射することを目指していた。

 偵察‐打撃コンプレックスは高度に統合され(コンピュータ等により)自動化された情報処理及び統制プロセスを備えたシステムであり、航空及び地上戦力の偵察・兵器統制・攻撃機能を統合的に機能させる。 [参照38]
 偵察・指揮と統制・交戦をほぼリアルタイムで行い統合的な打撃を正確かつ同時的にターゲットへと叩き込むことを目標とする。火力投射手段、索敵及び捕捉手段、指揮と統制のシステム、そして各種サブシステムのコンビネーションがその主体となっている。
 コンピュータ及びその他自動化システムの発達で様々な人的中間手続きを省き、高精度かつ遠距離の砲爆撃アセット、連絡システム、偵察機械などの技術的発展がこの複合体の効力を特色あるものに押し上げた。[参照35, pp.1~2], [参照38]
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 またロシア側も例えば米軍のエアランドバトル・ドクトリンにある行進中の敵第2梯団への偵察と打撃(J-Sak)をこの偵察‐打撃コンプレックスの一部であると捉えている。[参照38]
 正確にソ連の定義を言うと偵察‐打撃コンプレックスと偵察‐火力コンプレックスはわけることができる。更に戦略・作戦・戦術レベルでもわけている。ロケットなどのロングレンジな打撃を主体とするのが偵察‐火力コンプレックスであり、偵察‐打撃コンプレックスは作戦‐戦術的及び戦術的ミサイルといったものを打撃主体とする。[参照35, p.2]
 細部は異なるが、これらは冷戦期の対NATO欧州戦域の大戦争用として開発が進められた後、現在のロシア軍の下で新たな戦略方針で修正が加わっている。本稿の焦点となる戦術レベルにおいては同等質のものとして扱うことができる。[参照37, p.1] 米陸軍指揮幕僚大学が引用している文章でも「偵察‐打撃(火力)ループ」という書き方がされている。[参照23, p.7]

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 戦術レベルにおいて、偵察‐打撃コンプレックスによってリアルタイムの目標偵察/捕捉そして攻撃が可能となる。かつては敵検知から交戦へ到るまでの時間的インターバルが長すぎ、その間に敵の機甲などのモバイル的部隊は配置を変えてしまい砲兵隊や空爆などの効果が減衰させられてしまっていた。偵察は最初の発見と攻撃直前の2度行わざるを得なかったのだが、偵察‐打撃コンプレックスを発展させた軍隊ならば一度の偵察で即応し最大限の打撃効果を発揮できるのである。[参照35, p.2]
 
 (最初は冷戦期の欧州戦域用に考えられたため)偵察‐打撃コンプレックスはソ連の持ち得るあらゆるロケット兵器と航空機を大規模投入することができる前提であり、偵察でも打撃でも航空機にかなり頼ることになっており、また方面軍のロケット砲兵隊なども投入されることになっていた。[参照35]
 しかしロシアの直面する現代戦では、もちろんまだその可能性は残っているが、かつてとは違うよりスリム化した運用が求められるようになった。加えて偵察における地上部隊活用の再挑戦が実戦の中で進んでいる。これは偵察において航空機/衛星の能力への期待から過剰な責任を置いてしまい、実戦においてそれらには見つけられない敵活動によって損害を被ったことが背景にあるだろう。航空偵察の負担を分かち合うため地上部隊はより積極的な情報収集をするべきとなっている。
 地上部隊による観測およびスパイ、電子的活動による偵察はソ連時代から挙げられていたことであり、重要性の再評価がなされたと言える。[参照35, p.12]

 ただし一点、ソ連時代から現在まで変わっていないことがある。それは偵察‐打撃コンプレックスにおいて打撃主体を担うのは砲兵隊であるということだ。ソ連‐ロシアには数多の種類の砲がありそれぞれ作戦や戦術レベルに割り当てられてはいるが、どのレベルでも重大な役割を担った。ソ連の偵察‐打撃コンプレックスは如何に砲兵隊に速く正確に伝えるかを焦点としており、そのための指揮統制ネットワークと機械システムが課題となっていた。

「直接的支援砲兵大隊および砲兵旅団から派遣される各砲兵中隊が、敵を撃破する火力の中で最も決定的な役割を今なお果たし続けている」
[L.W. Grau & C.K. Bartles, (2018),"The Russian Reconnaissance Fire Complex Comes of Age", p.2より抜粋]

 故に戦場においては砲兵隊が求める敵情報をどのように偵察で獲得するかが重要になる。現代は衛星やUAVも加わりながらも、隠れている敵の反応を引き出すために地上部隊の威力偵察が今なお重要となっている。そしてその中でカルーセル戦法は有効なのである。循環移動射撃をそれ単体で評価してはならないのは、偵察‐打撃コンプレックスの一部である可能性が非常に高いからだ。(たとえ循環移動射撃での直接的な敵殺傷数が0であったとしても)偵察‐打撃の複合的な戦術の中で極めて重大な役目を果たしているのだ。
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 また、偵察後にそのままハラッシング及び誘引へと繋げることができ、ロシア軍はここまで一連にして演習をしている。(後述)

制圧(抑込)を主体としたカルーセルと戦術_Carousel for Suppressive Fire

 敵内容が判明しそれがその場にいる自部隊(循環移動射撃実施チームの直接的に所属する部隊)で対応が可能であった場合、退却をすることなく攻撃を実施する。この状況で循環移動射撃を採択するのであればその意図は抑込(制圧)、拘束となる。ただし瞬間的な火力投射最大量は一斉に撃つタイプよりも減るため、果たして敵を充分に制圧/拘束できるかどうかを相対的戦力を分析し指揮官は判断しなければならない。

 これは典型的な火力投射部隊と移動部隊のコンビネーション戦術に貢献できる。もちろん循環移動射撃チームはFire側を担当することになる。循環移動射撃で絶え間ない射撃を長時間続けることで敵を制圧/拘束して、移動チームの行動が阻害されないようにする。文字通り全く途切れることがない射撃である利点は大きな影響を与える。最高のケースならただの一度も移動チームが停まることなく敵への攻撃位置につける。(循環移動射撃でない場合火力量が著しく弱まる瞬間が時折発生するので、その瞬間は移動部隊は警戒を強めて遅くなったり停止して隠れる。)
 循環移動射撃チームの派手な動きに敵がミスリードされる可能性もある。また循環移動射撃の戦力保存性のおかげで火力チームが敵の攻撃を受けて一瞬で大損害を出す可能性がほぼ消えるので、例え戦術変更を強いられたとしても、比較的余裕をもって対処ができる。
Tank Carouselを組み込んだ制圧と移動の連携
< Tank Carouselによる制圧射撃_別動隊が移動し目標攻撃するのを支援_own work >

 それと自戦力も敵戦力も圧倒的な打撃力/突進力を保有していない場合に、循環移動射撃は活躍できる。
 例えば単独の機甲チームが敵と予期せぬ交戦状態に陥った時に循環移動射撃は、自軍戦力を保護するために使える。あくまで自戦力保護を主眼として有効なのであり、敵への打撃力は二の次であることに注意する必要がある。

 敵に効果的な追撃をされるのを避けるため、退くにせよそのエリアに留まるにせよある程度の圧力をかけて戦闘を続けながら動くことが望ましい。ここでタンク・カルーセルを使用すれば常に火力を投射し続けて絶え間なく敵に圧力をかけられる。単一チーム且つ循環的射撃なので恐らく火力量は少なく、敵を一挙に物理的に破砕するのは難しい。けれども隙が少なく自軍戦力が簡単に壊滅的打撃を受けることを避けられる。
 要するに回避と削り合いの我慢比べに持ち込めるのだ。互いに決定打を欠く状態に主導的にしてしまい、もし弾薬補給量に自信があれば少しずつ削り続け倒せると期待できるし、もし友軍チームが駆け付けてくれるならそれまで損害を極小に抑えながら耐えることができる。
 粘り勝ちした事例が2020年のFreeNewsが報道しているシリアでの戦闘だ。ただ勝つだけならこの時期の戦力差なら珍しくないが、貴重な機甲の損失を抑えているのが着目すべき点である。[参照28]
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 この能力をロシア軍は有用だとみなしており演習で積極的に使用している。例えば大規模なものが2018年に西部軍管区の第1親衛戦車軍が行った演習だ。イブニング・モスクワ紙の報道記事にカンテミロフスカヤ師団(第4親衛戦車師団)とタマンスカヤ師団(第2親衛自動車化歩兵師団)の訓練の一部が載せられており、国防省の各発表をまとめたもので文もコピーの箇所も多い。この演習は野戦も航空戦力もミサイル含む大規模砲兵隊も参加していたのだが、その各特殊訓練の中に戦車の市街戦があった。具体的なレポートは次のようなものだ。

 カンテミロフスカヤ師団の戦車部隊は市街で展開する仮想敵の対空砲に対してタンク・カルーセルを実施し破壊した。タンク・カルーセルは「レボルバー」のようなものであり、カートリッジの役割を戦車が担った。1輌が遮蔽位置から姿を現し射撃すると即座に各位置を離れた。ノンストップで戦車は射撃していった。現代戦では対戦車兵器を有する敵が襲ってくるが、これによってその効果を失わせた。1つ目の戦車が撃ち、2つ目が後方へ戻りリロードし、3つ目が攻撃位置へつく準備をするのだ。望むなら3回、6回、10回だろうとその死の舞踏(смертоносном танце)を戦闘車両は振舞えた。特にその射撃がほとんど連続的であり、一分間に8~10発にも及び、敵は顔を遮蔽位置から上げることができなかった[参照40]
 他にも2019年の中央軍管区で行われた演習でタンク・カルーセルを使用し、敵に移動をさせず抑え込んだと述べられている。[参照48]
 このようにロシア軍は自軍戦力の損失リスクを極小化しながらでも充分な制圧(抑込)効果があると見込んでいる。
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 興味深いのはロシア軍は市街戦もしておりその中で「対空砲を破壊するために」戦車部隊がタンク・カルーセルをしたと報告されていることだ。[参照40]
 これは移動射撃による被弾回避・戦力保存性に大きく期待し、市街戦であろうと果敢に戦車が進撃したのだろう。市街戦で激しい移動しながらの射撃を戦車がすることで損害を減らすのはシリア軍が数多くの事例を残している。
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 だがこの試みは更なる威力の可能性を有している。それは敵戦力の誘引である。

ハラッシング、誘引を組み込んだ逆襲戦術

 戦史には成功した時に甚大な戦果を挙げる戦術が存在する。それは誘引からのハラッシング、伏撃、分断、包囲、そして撃滅を企図する打撃へと繋げる戦術である。

 循環移動射撃による誘引をどの程度期待している戦術なのかは判然としていない。当然だが循環移動射撃以外の誘引手法も使うことになる。より上位の誘引行動を構成するために行う場合もあるため判断は難しい。ただロシア国防省はハラッシングにより敵を少しずつ削りながら誘引により敵を奥地へ引き込んでから逆襲し撃滅する戦術を訓練しており、その中でタンク・カルーセルが使われたことを公表している。

【誘引からの逆襲打撃戦術】

 最大級なものは2018年のニジニノヴゴロドで西部軍管区が行った演習であり総参加数は4500人を越す。そして重要なのはこの演習は通常戦を想定していることだ。仮想敵の自走対空砲をタンク・カルーセルを用いて破壊している。更に近代的な戦車戦力を有する親衛戦車軍(の一部)が連隊級の大規模な対抗戦をする戦術演習を行った。
 この大規模演習のメインステージは非常に興味深い流れとなった。通常戦を行う敵に対し偵察‐打撃コンプレックスが火力投射をし、敵主力を戦闘に引っぱり込み、そこでムスタS152mm自走榴弾砲が掩蔽位置から砲撃を実施することで切り離した。この戦闘中に予備として置かれていたT-72B3の兵員はこのマニューバラブル防御の際に、側面から1800mの距離で直射して敵を撃破した。戦車は『タンク・カルーセル』と『シリア式塁壁』手法を実施しながら射撃を行い、さらにそこに砲兵隊による20㎞離れた位置からの火力投射も加わった。この連隊規模の対抗演習の縦深距離は35㎞に達した。[参照20]

 以上の演習の様相は非常に興味深い。モスクワやレニングラードを含むロシア最重要地域の西部軍管区に所属するのは第1親衛戦車軍だ。ソ連時代から減少した戦力の中で2014年に事実上唯一の復活した作戦的編制の戦車部隊である。この精鋭が使いこなそうとしているのは最も困難で効果的な戦術の1つだ。
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 この演習について別記事にもう少し詳しく載っている。それは次のような説明だ。[参照40]

 参加した航空戦力はSu-34(作戦‐戦術航空機と書かれている)、Mi-8ヘリコプター、Mi-24戦闘ヘリである。これらの機械化された部隊が特殊戦闘訓練を行ったのは市街戦を想定したものが含まれていた。
 (中略:既述の市街戦でのカルーセル使用や砲兵隊、イスカンデル-Mの運用の報告)
 また演習のメインステージにおいて戦車のパトロール演習が行われた。戦車部隊の偵察‐打撃コンプレックスによって通常戦戦力の敵へ火力投射を行い、敵主力を戦闘に引きずり込み、掩蔽位置からの砲撃を152㎜榴弾砲部隊が行うことで分離させたのである。T-72B3はマニューバラブル防御を行い側面から敵に直射して1800mの距離から撃破した。

 一連の戦車や砲兵隊そして偵察部隊の複合的活動の中で、BMP-2歩兵戦闘車両部隊の後退と再集結のための状況が創り上げられた。戦車は『タンク・カルーセル』と『シリア式塁壁』手法を実施しながら射撃を行い、さらにそこに砲兵隊による20㎞離れた位置からの火力投射も加わった。この連隊規模の対抗演習の縦深距離は35㎞に達した。

 仮想敵が逃げ出すと、ヘリなどの航空複合が空対地ミサイルでの攻撃を移動中の目標へ実施した。ヘリは自動車化部隊と戦車部隊が実施中の逆襲打撃に支援を行った。[参照40]

※ マニューバラブル防御はロシア軍の戦闘コンセプトの中でも極めて重要なので別記事で詳しく書く予定だが、これは米軍の言うモバイル防御ともエリア防御とも違う。より正確に言うと、両方と被る部分があり、しかしその根本的着目点が異なる。とりあえずここでは、前線にいる主戦力が後退することを含め戦闘マニューバを広範に行うことを主として想定した防御コンセプトとだけ書いておく。
 マニューバラブル防御の具体的なやり方をロシア軍の教本と米軍外国軍事研究室は小~中隊規模までしか載せていないが、軍の定期誌などで触れられているようにマニューバラブル・コンセプトは遥かに大きな規模の部隊で使用可能である。2018年演習はその実例である。

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 この戦術は特殊なものではないが極めて重大な脅威であり、たとえもしカルーセル戦法が関係なかったとしても着目すべきだ。主戦術はハラッシングで削りながら誘引し、伏撃と後方部隊投入の打撃を行い分断し最終的に突出孤立した敵を逆襲で撃滅するというものだ。これは古来から使われているものであり、特に弓術に秀でた騎兵を有する遊牧民の軍が使い戦史に多くの勝利をもたらしてきた。
ris2239
< 中央アジア、南ロシア、ステップ地帯の遊牧民が使用した輪舞戦法と誘引からの逆襲包囲戦術_Бобров Л.А(2013) >

※ボブロフ研究員は作図の際に簡略化して1つの円にしているが、後退フェイズに複数の移動矢印があるように、実際は複数チームがそれぞれ行っていたし円は連続的ではなく途切れたりルートが変わることもあり得た。戦列全体に対して複数のチームが別個のショット&アウェイを行う可能性が高い。これは別図の鴉群戦術の包囲する各チームが別個のショット&アウェイをしていることからも確認できる。また必ずしも円形ではなく「接近→距離をとったまま射撃→敵に近づかれたり強力な反撃投射を受ける前に離脱」という点が重要であった。上図はあくまでコンセプト説明である。[参照47]
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 けれどもその実現は、特に高度な教育を受けた将校が率いる大規模な軍隊同士でやってのけるのは非常に難しい類の戦術であった。
 逆襲成功の必須条件では無いが、次の3項目を達成することがより効果的な逆襲を創り上げるために望ましい。

初期戦線にいた自軍戦力は後退などの陣形変更中に崩壊的損失を避け、逆襲時に打撃部隊に最大限の支援を行う。
・自軍防衛組織の領域的な破綻を避ける。(例えば線の連続性を維持する)
・敵の攻勢戦力/補給をその前進中に可能な限り削る

 何か1つを達成するために他が幾つも破綻しては誘引からの逆襲は成功しない。その点でショット&アウェイ型の戦闘スタイルはバランス良く適している。
 だがだからと言って成功するとは言えない。防衛組織の領域的な破綻を避けるのは指揮官及び車長の手腕に大きく影響されるからだ。いつ、どのような状況で、どのように循環移動射撃を実施するかは重大な要因となるだろう。これは現在のロシア軍の解釈ではマニューバラブル防御の範囲となる。循環移動射撃は誘引の起点となりさらに別の後退行動が続きより大きな規模の誘引を達成する。巧みに実施できれば戦術的誘引の途上でも、かつて遊牧民がしたように、敵を削り尚且つ更に奥地に引き込む一助となり得る。
 誘引のためにあらゆる手段を使い、敵を自軍の望む方向へ最小限の戦力かつ最小損害で引き寄せてから、最大戦力を集中した友軍打撃部隊のマニューバに合わせて逆襲へ加わることになる。逆襲フェイズに入ると逐次の連続射撃及び後退をしていた部隊はその戦力をフル展開し最大火力を投射できるようにし、量と質両方で急激な相対的戦闘能力を変容させるであろう。

 繰り返しになるが、循環移動射撃で重要な概念はその損失リスク低減性と継続的圧力である。瞬間的な打撃力や火力投射量の強化ではない。他の手法の方が瞬間火力投射量は上回るし、あるいは誘引など単一の要素を成功させるために有用であろう。だがバランス性という観点で循環移動射撃は優れている。

 敵側視点に立つと循環移動射撃とマニューバラブル防御による誘引を狙っている相手に対抗するには、誘いに乗らずにカルーセル部隊へ反撃後に深入りせずすぐ隠掩蔽位置へ戻り陣地を保つという方策があるだろう。局所的反撃に抑え全体を崩さずに隙をみせないようにする、というのはかつて遊牧民の弓騎兵の襲撃を受けた軍隊が取っていた方法でもある。ただしそれでも循環移動射撃で少しずつ削られるのは避けられないし心的な圧力を解くことはできず疲弊していく。更に現在のロシア軍の場合、誘引が成功しなくとも偵察がある程度できれば偵察‐打撃コンプレックスが襲い掛かってくるので、これが最良の対抗手段とは言えない。

暫定のまとめ

 情報も実戦例も不足しているためあくまで暫定的だが理論を整理しておく。

 循環移動射撃戦法は理論上多様な戦場で運用が可能であり、非正規戦でも通常戦でもその中の市街戦または野戦の両方で、この戦法を実施できる状況は存在する。その主眼は敵に攻撃をあてられることなく攻撃をし続けるということである。複数候補地点で次々とそして常に移動、射撃、離脱をし続けることで敵は狙いを定めるのは非常に難しいが、ルートや位置を敵に見破られないようにするためと敵攻撃があった時にすぐ危険を避けるために、戦車クルーと部隊指揮官には変更を含む高い自律性と即応能力が求められる。
 本戦法固有のポジティブな効果とネガティブな影響を各戦場及び敵戦力に照らし合わせ、運用するかどうかを指揮官は決める必要がある。そしてこの激しく流動的な戦闘技法は準備段階でも実施段階でも指揮官と各車長に高い判断力を要求する。小~中隊規模だけでなく、より大きな範囲でマニューバラブルの戦術・作戦を展開する際にその一部として指揮官は運用状況を分析しなければならない。

 循環移動射撃が有する損失リスク低減性、ハラッシング、偵察、制圧(抑込)、誘引といった各効果を上位部隊の戦術の中に組み込むことでより大きな戦果を最小リスクで達成することができる。

 特に偵察効果を主体とする場合の戦術は強大な脅威となり得る。市街戦など機甲が攻撃を受けやすい場所でもリスクを下げながら攻撃を行い続け、内部にある敵兵器などを破壊することや敵戦力を抑え込み別部隊の移動を支援することもできる。
 ロシア軍は偵察‐打撃コンプレックスの一部に循環移動射撃を組み込んでいるケースが見られる。強力かつ射程の長い砲兵隊と柔軟な戦術航空機を、威力偵察してから即座かつ高精度で投射するシステム作りを進めている。危険エリアであったり自軍戦力が充分でない場合でも威力偵察をリスク最小で行える機甲の循環移動射撃は、この偵察‐打撃コンプレックスをより有効にすることができる。

 制圧効果があることをシリアでの実戦からロシア軍は確信しており演習で積極的に使っている。ただし使えないかあるいは他手法の方が効果的な場合もある。制圧のために循環移動射撃をある部隊がしている間に別部隊が連携を取り移動や打撃をする戦術を取るのが望ましいが、友軍部隊がいない時に時間稼ぎに使うこともあり得る。敵戦力に充分な打撃力や補給が無いのならば、損失を最小限にしながら制圧射撃を続けて粘り勝ちする手法として循環移動射撃をすることができる。
 破壊目標が小規模なものであれば、循環移動射撃で達成を試みることがある。特に危険地帯に踏み込む必要がある場合に損失リスクを抑えることを重視して採用する。

 またロシア軍の大規模な戦術演習ではマニューバラブル防御による誘引とハラッシングからの逆襲を実施した。マニューバラブル防御の際にタンク・カルーセルを実施し犠牲最小で敵を引き込みながら削り、偵察‐打撃コンプレックスによりミサイルを含む砲兵隊と航空戦力の打撃を実施、敵前進戦力を分断した後に強力な逆襲を行っている。戦闘ヘリは戦果拡張・追撃を間髪入れず実施して逆襲部隊を支援している。
 マニューバラブル防御の一部として偵察、誘引、ハラッシングを狙う際に循環移動射撃をする可能性がある。

 結論として、循環移動射撃はそれ単体では強力な打撃力を有さなくともリスク管理を含めバランスの取れた手法であり、他部隊との連携の中で極めて脅威となる戦術を組み上げることができる。特に偵察‐打撃コンプレックスの一部としての汎用性と、誘引からの逆襲を実施する際の利便性は重大な影響を戦場にもたらす可能性がある。

 歴史の中にタンク・カルーセルと似た戦闘技法を使いこなした騎馬の民がいた。彼らは卓越したショット&アウェイを戦場にもたらしたが、その真価はより広い戦術・作戦の中で発揮され恐るべき勝利を成し遂げた。今一度彼らの刻んだ歴史を思い出す必要がある。この戦法と戦術は決して万能ではなく対処のすべはあるが、それを侮ってしまった者達にこそ致命的な脅威となったのだ。かつてユーラシアで猛威をふるった戦闘技法と戦術は、より進化した形で現代の戦場に再びその姿を現わそうとしている。

















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 以上です。ここまで長い文を読んで頂きありがとうございました。
 御見識を少しでも教えて頂きたく、今後も追記と修正をしていくため本記事を書きました。考察・別資料等をご存知でしたら何卒よろしくお願い致します。
 ロシア軍のマニューバラブル防御はかなり重要な考え方なのでいずれ詳しく書こうと思っています。その際に2018年演習のイメージ図を貼るつもりです。このマニューバラブルという言葉を現在の米海兵隊などが強調しているManeuver Warfareと捉えるのは、概念的には部分的な内包はありますが、具体的な手法の観点で問題が生まれるかもしれません。少なくとも米軍があまり重点を置いていない所にロシア軍は注目しています。今回のカルーセルもまた複数地点かつほぼ常時の移動という激しい流動性を有しており、マニューバラブルの詳細部であると思っています。

2020年4月26日 戦史の探求 サイト編纂者





以下補足ですが、直接的にはタンク・カルーセルとは関係していませんので、気が向いたらで…。

補足:偵察‐打撃コンプレックスの概要_ソ連時代

 米陸軍指揮幕僚大学ソ連陸軍研究室のVego博士の論文が巧くまとめてくれているのでそれを紹介する。ただし冷戦期より現代はスリム化し、本文でべられているような欧州戦域での対NATOの大規模戦争ではなく限定的/間接的な紛争用に適応化してきている。
___以下、抜粋翻訳___________________________________________
第1章:Recc-Strike Concept
 偵察打撃複合体の発達は複数の要素、幾つかはドクトリンのそして幾つかは技術的な要因の結果として生まれたものだ。まず始めに1970年代後半からソ連は欧州での戦争で通常兵器の使用への重視が増大したことで、かつて戦術的・作戦的な核投入システムが担うよう割り当てられていたタスクを実行できる能力を有する、新しくそして高度に進歩したシステムを開発するフレームワークをもたらした。

 偵察、指揮と統制、ターゲット・エンゲージメントの質的に新たな可能性が近年生まれたということをソ連は強く主張している。従って戦場の多様なタスクは、これまで可能だったものよりも遥かに短時間かつ遠大な縦深で、方面軍及び軍所属の航空戦力との密接な連携を取りながらソ連陸軍によって遂行される。この発展にはいくつかの要因がある。
 1つ目はソ連軍の陸海空全サービスと戦闘部隊の通常兵器の火力の著しい増大だ。最も先進的な通常兵器は戦術核と同等の破壊力を有するとソ連はどうやら考えるに至ったようだ。結果として、核兵器だけでなく通常兵器も敵をもはや作戦成功不可能にすることが可能となった。よって、全ての敵火力手段が発揮される前にそれらに対して妨害無き偵察および会敵交戦をすることが、自軍の活動を成功裏に達成するために最も重要な前提条件の1つとなった。
 2つ目に、近年までは大型コンピュータシステムしか持っていなかったのと同等のスペックの小型コンピュータが開発されたことで、自律的な偵察・指揮と統制・打撃システムの活用だけでなく、それら個々の自動化、そして何よりもこれら全てを完全自動化された1つのシステムに統合することが可能となったのである。これらのシステムならば従来に比べて、より速くより正確により確実に、偵察とターゲット・エンゲージメントのタスクを果たす。偵察‐打撃システムは状況に関するより包括的でタイムリーな情報を集めることができる。システムの各個別部分のエラーや妨害は、同システム内の他の構成要素の調和的活動の結果として中和されるので、システム全体の性能に重大な影響を与えることはない。

 統合され自動化されたシステムであり高精度・長距離兵器の支援と戦闘運用をもたらすものとして、ソ連は偵察‐打撃コンプレックスを記述している。一般的に偵察‐打撃コンプレックスは次のアセットによって構成される。
・偵察
・ターゲット指定
・方向づけ
・ナビゲーション
・連絡

 特に、偵察‐打撃コンプレックスは4つの基本要素を有している。
・偵察と方向づけ、または火力の自動化されたシステム
・地上をベースとした移動可能な統制センター、または火力統制センター
・高精度の破壊兵器
・正確な位置特定システム

<< p.1 >>
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 ソ連は偵察‐火力コンプレックス(разведывательно-огневого контура)と偵察‐打撃コンプレックスの区別もしている。偵察‐火力コンプレックスは多連装ロケット砲(MRL)あるいはロケット砲兵隊の打撃を言及するものであり、一方で偵察‐打撃コンプレックスが関連するのは戦術的航空機、陸上ベースの作戦‐戦術的および戦術的ミサイルである。
 偵察‐打撃コンプレックスは次の要素からなる。
・(戦況の)情報収集
・情報集積
・情報評価
・各兵器プラットフォーム
・各兵器統制
・特殊弾頭
・データの受領、表示、送信のための要素

 西側諸国の現在の情報によるとソ連の偵察‐打撃コンプレックスとは新たな各種砲兵隊システム(遠隔操縦無人機を含む)、高性能の対砲兵レーダー、新型弾(無誘導、誘導兵器の両方含む)、目標捕捉・指定・会敵交戦を調整するための新型の指揮と統制システム、新型兵器のサブシステムのコンビネーションであるとされる。

 200~300㎞の範囲内の地上または海の移動目標または固定目標へ、偵察‐打撃コンプレックスは偵察及び打撃をする即応性を必ず確保しなければならない。また膨大な数のターゲット及び状況の急進的な変化に対処する能力を持つ必要があり、そして敵の火力投射および電子戦手段による反撃行動の中でも高度な信頼性と生存性を有していなければならない。

 偵察‐打撃コンプレックスによってリアルタイムの目標偵察と破壊が可能になると、ソ連は強く主張している。かつて標的への偵察は二度実施されていた。戦闘行動の計画の前に、そして打撃を実施する直前にである。だがしかし、標的検知から交戦へ到るまでにある時間的インターバルはあまりにも大き過ぎた。その時間は機甲部隊のような高度な移動能力を有する部隊にはその配置を変えてしまう余地を与え、それらに対する打撃の効果を減少はては回避することを可能としてしまっていた。偵察‐打撃コンプレックスはそのような標的に対しても発見と同時的な打撃を可能とする。例えば、最後の偵察の必要性を失くしてしまえるのだ。

 航空及び地上部隊の偵察‐打撃とは偵察・標的指定・破壊の相互接続された各手段の単純な合計ではなく、破壊行為による偵察データの同時的活用を確実に実施できるようにする統合され高度に自動化された1つのシステムであるとソ連は強調している。

 どうやらソ連は作戦レベルと作戦‐戦術レベルの偵察‐打撃コンプレックスを分けている。作戦レベルの偵察‐打撃コンプレックスは敵兵力前方ラインから約500㎞の縦深まで広げたものだ。

<< p.2 >>
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 作戦‐戦術レベルの偵察‐打撃コンプレックスは(少なくとも)2つの基本タスクを果たすことになる。1つ目は電子的な偵察(200~300km圏内にある敵防空アセットや無線連絡所およびその他地上目標の検知、特定、分類、位置捕捉を含む)だ。2つ目のタスクグループは空対地兵器(自動無線コマンドシステムによって戦術航空機を差し向けることを含む)および地対地兵器の統制を含んでいる。

 作戦‐戦術レベルの偵察‐打撃コンプレックスはターゲットとなる敵機甲への打撃、そして戦術的縦深内の敵第2梯隊グループへの打撃の実施に使用される。その目標とは、これらの敵戦力が戦闘へ移る前に撃破することである。
 戦術レベルの偵察‐打撃コンプレックスは航空偵察および偵察情報評価と破壊兵器誘導のための地上統制中継センターで構成される。

 西側の情報によれば、ソ連の戦術レベルの偵察‐打撃コンプレックスは50㎞までにあるターゲットを破壊することを意図としているという。コンピュータに支えられた偵察アセット及び砲身砲部隊(多連装ロケット砲含む)から構成される。それらは師団レベルの掌握下で運用される。軍または方面軍では極めて多様な目標捕捉手段と長距離砲兵隊を使う。
 作戦レベルの偵察‐打撃コンプレックスの各システム(ミサイルシステムと航空支援アセット含む)の連携は300㎞までの縦深のターゲットの破壊を確実なものとしなければならない。
(略)
<< p.2 >>
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 【第2章 偵察
 攻勢または防御の戦闘を実行する際に、ソ連は偵察と標的捕捉の速度と精度にかなり依存している。偵察アセットはソ連の偵察‐火力及び偵察‐打撃コンプレックスの主要構成要素の1つだ。諸兵科連合部隊の戦闘には最重要ターゲットの探知と制圧(抑込)または無力化(敵の兵器へと差し向けることを含む)を直接的にリンクすることが必要とされるとソ連は前提にしていた。有する兵器の効力と部隊のマニューバ能力をフルに発揮するために、入手した源情報をリアルタイムあるいは準リアルタイムで分析し送信するのが必須であった。

 偵察は作戦的または兵員と航空機の戦闘支援の構成要素の1つだ。それは如何なる状況であろうと全ての部隊規模の指揮官と幕僚によって組織される。ターゲットの価値と重大性を見積もり、ソ連はそれを戦略的、作戦的、戦術的な偵察に分けて捉えた。
(略:作戦レベルの偵察の重要性、航空偵察の重要性と広い役割を主に述べている。)

<< p.8 >>
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 地上での偵察は兵員、無線電子装置、砲兵隊、工兵隊、核兵器及び化学兵器の偵察から構成される。偵察‐火力及び偵察‐打撃コンプレックスはもっぱら砲兵隊と無線電子装置の偵察で得られた源情報を活用する。幾つかのケースでは他のタイプの地上偵察手段によって得られたデータを同様に使用する。

 近年、現代兵器の射程距離と速度が著しく向上したことで、兵員の地上での偵察の役割が大幅に増強されたという意見をソ連は支持している。地上部隊の偵察の基本的な注力は、敵縦深にある各ターゲットの配置についてのタイムリーなデータを入手することに向けられている。その主要ターゲットとは敵のミサイル発射装置、司令所、核兵器貯蔵エリア、通信センターである。

(略:砲撃偵察と無線、レーダー偵察などの役割と重要性を述べている。)

<< p.12 >>
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第5章 結論
(略)
 ソ連は軍事的活動のあらゆる面において詳細的な基礎事項を構築することに強いこだわりを持っている。だがしかし、ソ連の理論と実際の能力の間には常にギャップが存在している。これは偵察‐火力および偵察‐打撃コンセプトについても当てはまる。その理論的コンセプトはそれらを実際に適用するためにあるソ連の許容能力を超過している。けれども、その能力が向上するにつれて、その時点ではまだ不足している各許容能力を考慮しながらコンセプトを修正し再鋳造することが予期されているのだ。

 ソ連は全ての部隊で膨大かつ多様な偵察戦力とアセットを使用する。戦術的偵察情報を得るための高度に発達したシステムを彼らは有している。けれども作戦レベルでのソ連の偵察能力はあまり適切ではないように思われる。現在のソ連は戦場偵察プラットフォームとして無人機を広く使用することをしていない。ただし今後数年の間により多数の機体が使用されるようになることが予想される。ソ連にとっての最大の問題は偵察データの量と質ではなく、そのデータを下層部へと伝播させ戦術レベルの各指揮官が使用できるようにすることである。

 ソ連の火力支援コンセプトは砲兵隊による火力支援だけでなく作戦‐戦術及び戦術的ミサイル、航空機、防空部隊も含まれる。また戦術レベルにおける火力支援では戦車や対戦車兵器各種も加わるのだ。トレンドとしては、自走砲の数を増加させることにより砲兵隊の移動性、汎用性、生存性を大幅に向上し、牽引砲の数を減らそうとしている。
(略)
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 ソ連の統合火力支援コンセプトは、ターゲットに対する同時的かつ最大の破壊効果をもたらすために、連続的かつ統合的な火力投射を多様な火力アセットから実施をもたらす。その主要目標とは戦場に圧倒的な優勢状態を創り上げ、敵の戦闘効率の回復をさせないことである。このコンセプトの潜在能力を最大限に引き出すため、あらゆる種類の火力の密接な連携を可能にする改良型C3システム(Command, Control, Communication)をソ連は採用した。おそらく更に重要なのは、新たな統合火力支援コンセプトが火力の量と密度の両方を大幅に増大させたことである。
(略)

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___以上、抜粋翻訳終_____________________________________

参照資料

[1]~[34]は前回の記事参照。

[35]
Dr. Milan Vego, (1990), "Recc-Strike Complex in Soviet Theory and Practice"

[36]
ロシアの軍事産業情報専門通信VPKの記事。ネットワーク中心の戦争について述べながら、そこで偵察‐打撃コンプレックスの概念が更に重要になっていることを米ロ両方の研究を基盤にしながら記されている。
https://vpk.name/news/75154_realizaciya_setecentricheskoi_doktriny.html

[37]
オックスフォード大学による現在のロシア連邦軍の偵察‐火力コンプレックス調査論文
Lester W. Grau and Charles K. Bartles, (2018), "The Russian Reconnaissance Fire Complex Comes of Age"

[38]
2010年のロシア情報部の文章。終盤に偵察‐打撃コンプレックスの説明有。
https://lectmania.ru/1xbb6.html

[39]
2017年時点での米軍の現代ロシア軍分析の最良資料。
米陸軍外国軍事研究室, (2017), "The Russian Way of War - Force Structure, Tactics, and Modernization of the Russian Ground Forces"

[40]
2018年西部軍管区の大規模演習の記事。参照20に関する報道。
参加した航空戦力はSu-34(作戦‐戦術航空機と書かれている)、Mi-8ヘリコプター、Mi-24戦闘ヘリである。これらの機械化された部隊が特殊戦闘訓練を行ったのは『市街戦』を想定したものが含まれていた。
 カンテミロフスカヤ師団の戦車部隊は市街で展開する仮想敵の対空砲に対してタンク・カルーセルを実施し破壊した。タンク・カルーセルは「レボルバー」のようなものであり、カートリッジの役割を戦車が担った。1輌が遮蔽位置から姿を現し射撃すると即座に各位置を離れた。ノンストップで戦車は射撃していった。現代戦では対戦車兵器を有する敵が襲ってくるが、これによってその効果を失わせた。1つ目の戦車が撃ち、2つ目が後方へ戻りリロードし、3つ目が攻撃位置へつく準備をするのだ。望むなら3回、6回、10回だろうとその死の舞踏(смертоносном танце)を戦闘車両は振舞えた。特にその射撃がほとんど連続的であり、一分間に8~10発にも及び、敵は顔を遮蔽位置から上げることができなかった。(=制圧効果)
 シリアでの戦闘経験は次のことを明らかにした。あるエリアへのこの激しい砲撃は敵に極めて早く撃ち返すのを強いたのである。それにより敵の武装を特定し、そこに別の待伏せしていた戦車あるいはヘリが攻撃をするのである。
 これは戦車兵の現代的経験であり、カンテミロフスカヤ部隊によって連隊規模の対抗戦演習でデモンストレーションされたものである。
 また演習のメインステージにおいて戦車のパトロール演習が行われた。それは戦車部隊の偵察‐打撃コンプレックスによって通常戦力の敵へ火力投射を行い、敵主力を戦闘に引きずり込み、掩蔽位置からの砲撃を152㎜榴弾砲部隊が行うことで分離させるのである。T-72B3はマニューバラブル防御を行い側面から敵に直射して1800mの距離から撃破した。
 一連の戦車や砲兵隊そして偵察部隊の複合的活動の中で、BMP-2歩兵戦闘車両部隊の後退と再集結のための状況が創り上げられた。戦車は『タンク・カルーセル』と『シリア式塁壁』手法を実施しながら射撃を行い、さらにそこに砲兵隊による20㎞離れた位置からの火力投射も加わった。この連隊規模の対抗演習の縦深距離は35㎞に達した。
 ムリノ地域でマニューバの素晴らしい戦闘訓練が実施され、そこには『イスカンデル-M』作戦‐戦術ミサイル複合(ОТРК)も計算された。ミサイルは正確に指定された通常戦力の敵の要塞化地点へとヒットした。
 イヴァノヴォ・ミサイル旅団は敵地点の偵察データを受領し、ミサイル攻撃の初期データを迅速に準備した。戦車部隊による追加偵察および自動車化歩兵部隊の偽装マニューバに続いて、イスカンデル-Mミサイル旅団は電子上でだが標的へミサイル攻撃を実行した。ミサイル部隊は発射後に位置を変えた。
 仮想敵が逃げ出すと、ヘリなどの航空複合が空対地ミサイルでの攻撃を移動中の目標へ実施した。ヘリは自動車化部隊と戦車部隊が実施中の逆襲打撃に支援を行った。

https://vm.ru/army/340046-my-svoi-goroda-ne-sdaem

[41]
軍事論考専門サイトWar is boringのアサドの機甲部隊の初期損失についての報告。戦前の教範では戦車がまるで砲台のように固定的に撃つことになっていたと述べられている。戦車1800両が失われたとしている。
https://medium.com/war-is-boring/how-to-take-out-1-800-tanks-in-two-years-74ecd413cb93

[42]
アラブ圏、特にシリアについての軍事的出来事を多く調査しているニュースサイト。戦車2000輌が失われたと述べている。
https://www.almasdarnews.com/article/assad-loses-2000-tanks-since-syrian-war-started-still-has-thousands-more-anyway-also-happens-to-be-winning/

[43]
アメリカ統合参謀本部, (2013). "JP3-60 : Joint Targeting"

[44]
More on Effective Engagement Theoryの章
Voennaya mysl, (1994), "Russian Military Theoritical Journal : Military Thought July-August 1994"

[45]
2018年のニジニノヴゴロドでの演習についてロシア国防省の記事。イスカンデル-Mが敵の司令部を破壊した。
http://contract.mil.ru/sel_contract/news/more.htm?id=12198099@egNews

[46]
2019年、ロシア国防省の記事。T-72B3とT-80使用。ニジニノブゴロドでの西部軍管区の親衛戦車軍が演習を実施。短時間だけ現れる敵に対し即応し射撃を命中させる訓練を行った。またこの際にローディングおよび停車陣地から攻撃陣地への移動の訓練も実施した。
https://stat.mil.ru/sniper/news/more.htm?id=12250692@egNews

[47]
Бобров Л.А, (2013), "Казахская тактика ведения боя в конном строю в конце XV–XVI веках"

[48]
2019年の安全保障サイトの記事。中央軍管区オルレンブルクでの演習の際にタンク・カルーセルが使用された。国防省の文を引用し、制圧suppressをして敵に移動をさせなかったことが報告されている。
http://defence.az/en/news/138330

[49]
2018年の安全保障サイトの記事。シリア式塁壁がゲリラのATGMやIEDに有効で採用されるようになったと書かれている。
https://web.archive.org/web/20180713180838/https://www.janes.com/article/81651/russian-tank-doctrine-evolves-to-combat-modern-threats?from_rss=1




ロシア軍公式の機甲火力のマニューバに関する説明 ノマディックな機甲は部分的には有効であると書かれている。(p.8=電子上18頁)
Маневр осуществляется подразделениями, силами и средствами, ударами и огнем. Он позволяет захватить и удерживать инициативу, сорвать замысел противника и успешно вести бой в изменившейся обстановке. С помощью активного маневра можно компенсировать недостаток сил и средств, быстро перебрасывая их на угрожаемые участки, на новые позиции и рубежи. Особенно эффективно маневрирование кочующих боевых средств, огневых засад. В обороне маневр подразделениями применяется для того, чтобы сменить позицию на более выгодную и с таким расчетом, чтобы более надежно прикрыть угрожаемые направления, усилить (или заменить) находящиеся на нем подразделения, а также для выхода из-под удара противника, занятия огневого рубежа, выхода на рубеж перехода в контратаку. В наступлении маневр подразделениями осуществляется для наращивания усилий на направлении достигнутого успеха — за счет ввода в бой второго эшелона, перемещения части подразделений первого эшелона с одного направления на другое, а также отражения контратаки противника. Видами маневра являются: охват, обход, отход и смена района (позиций).
https://sc.mil.ru/files/morf/military/archive/arm_sb_2013-08.pdf


参照20 国防省の原文 通常戦想定、4500人規模、戦車戦力による偵察‐打撃コンプレックス、タンクカルーセル、そして誘引からの打撃が記されている。
Танкисты ЗВО на учении в Нижегородской области применили метод «танковой карусели» для уничтожения мобильных зенитных установок условного противника
Танковые подразделения Кантемировской дивизии Западного военного округа использовали метод ведения боевых действий «танковая карусель» для уничтожения мобильных зенитных установок на полигоне Мулино в Нижегородской области.
Современный опыт применения танковых войск продемонстрировали подразделения в ходе масштабного двустороннего полкового тактического учения гвардейской танковой армии ЗВО.
При проведении его основного этапа танковый дозор разведывательно-ударного комплекса соединения вывел огонь бронированной техники условного противника на себя и втянул основные силы в бой, отсекая их огнем с закрытых огневых позиций самоходными 152-мм гаубицами Мста-С.
Экипажи резервных подразделений на танках Т-72Б3 в ходе ведения маневренной обороны с флангов вывели противника на стрельбу прямой наводкой и уничтожили цели на дистанциях до 1800 метров.
Кульминацией действий танковых подразделений стало выполнение боевых стрельб способами «танковой карусели», «сирийского вала», а также стрельба с закрытых огневых позиций на большие дальности до 20 километров.
Впервые глубина ведения боя в ходе двусторонних полковых учений достигла 35 км.
В двухстороннем полковом тактическом учении с подразделениями танковой армии ЗВО принимают участие более 4,5 тыс. военнослужащих и задействовано около 500 единиц вооружения и военной техники.
https://function.mil.ru/news_page/country/more.htm?id=12198103@egNews

___【メモ】________________________________
・Target Engagement
・Target qcquisition 目標捕捉
・tube artillery 砲身砲部隊 砲身を有している砲のこと。
・J-Sak = Joint Second Echelon Attack    エアランドバトルの際に行進中の敵第2梯団への航空兵器・ロケットによる偵察‐打撃を行うコンセプト
・ЕСУ ТЗ =ロシアのネットワーク中心の戦争におけるコンセプト
 偵察‐打撃複合体=RSC(Reconnaissance-Strike Complex)= RUK(разведывательно-ударного комплекса)
 偵察‐火力複合体=Reconnaissance-Fire Complex = ROK(разведывательно-огневого контура)
 
・RPV(Remotely Piloted Vehicle:遠隔操縦無人機)=UAV

・エア・パワー研究 第2号で岸本康男1等空佐は偵察‐打撃コンプレックスを
「広域センサー、指揮統制ネットワークおよび精密誘導兵器(PGM) を連接したシステム(Reconnaissance-Strike Complex:RSC)」と述べているが、これは対中の航空主眼の文脈上である。その点で特段問題は無いが、ソ連、ロシア、アメリカの概念はより包括的であるため一応注意。
https://www.mod.go.jp/asdf/meguro/center/AirPower2nd/052kenkyu2.pdf

通常の威力偵察部隊_ロシア軍の
通常のロシア軍の威力偵察部隊の例
(2018), "Reconnaissance-in-Force Russian Style"
https://mcoepublic.blob.core.usgovcloudapi.net/earmor/2018/winter-spring/2Grau18.pdf
機甲が薄い敵を突破した後に更に危険地域で活動する際にタンク・カルーセルが使える
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・【誘引の困難性と循環移動射撃のバランス性】※メモのみ
 誘引からの伏撃/包囲/打撃の戦術コンセプトは特殊なものでは無く現代の将校は全員知っているものだ。戦史では古今東西で広く見られる。しかし実際にそれを成し遂げられた事例は他の戦術に比べ多いとは言えない。その原因はこの理論は実戦で各必要事象を現実化するのが困難だからだ。その内の1つが誘引の困難性である。

 特に将校の軍事教育が高水準かつ一般的になった近代以降はより難しくなった。どうやって知識ある将校が率いる部隊を誘引するか、この難題を解決する方法は一応幾つかあった。
 例えば生贄を差し出すやり方がある。囮を使い誘い込むと言葉で書くと簡単だが、近代兵器の索敵性能と殺傷能力は犠牲を出さずに誘引を完遂することをほとんど不可能にした。犠牲が少ないと相手が警戒して軽挙に進んではくれない。あり得はするが、教育を受けた敵将校が愚鈍であるという前提に作戦を組み立てるのは楽観的すぎる。従って誘引部隊はほぼ確実に大量の犠牲が出ると覚悟し将校は命令を出し、結果に責任を持たねばならない。
 それを避け人命を少なく抑えるやり方として高価な兵器システムを囮にするやり方もある。多くの場合機甲がその役目を負う。引き付けた後できれば逃げ切りたいが、できなかった場合の貴重兵器の損失は重くのしかかる。
 あくまで理論上ではあるが、循環移動射撃を使う機甲による誘引はバランス良く影響をもたらすことができる。

敵反撃の誘引要素
・貴重な機甲が最前線に身を晒す。
・歩兵などの護衛は(一見)少ない。
・最前線に一度に現れる機甲の数量は多くない。
・瞬間火力投射量は大きくない。
・火力投射が持続的に続くため圧力が常にかかり、敵は放っておくと損失が積もる。
・後退行動が必ずあり、敵がそれを目撃する。

 瞬間的には致命的な打撃ではないものの、削り続けてくる無視できない脅威が長期持続的に圧力(harassing効果)をかけるため、敵は心的にも物理的にもこの脅威を取り除きたいと望むようになりやすい。そして我が方の脅威は瞬間的には小さいものである(様に見える)ので、容易に攻撃を仕掛けて相手を撃破できるかのように思えてしまう、理論上はそう言える。いきなり出撃を敵が決断することは少ないだろう。しかし出て来なければ、自軍損害は抑えられているので補給がある限りハラッシングを長期にわたり続けることができ、いつか敵が我慢の限界を超えるか損失が積もり撤退するまでそれは変わらない。
 持続的火力のトータルでの大きさが敵耐久力を削る要素となっており、そして逆に瞬間的火力の小ささが敵反撃を誘う要素となっているのだ。

自軍安全離脱の促進要素
・移動を常にしており被弾の可能性は小さくできる。
・移動状態を保ち後ろへ下がることを毎回必ずするので、そのまま離脱へと移るのが容易。
・機甲の総数は多くなくてもよい。

 被弾のリスクを抑え、離脱の可能性を高め、もし被害が出ても少なくなるようになっている。ただしこれもあくまで理論上の話しだ。実戦で工夫無く、例えばいつまでも同じルートで回っていたら撃破されるリスクが飛躍的に高まる。部隊指揮官と車長は事前準備をし柔軟に判断をする必要がある。

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・循環移動射撃を小隊~中隊の戦闘技法のみならずより広い概念で捉えることができれば更なる発展の可能性がある

・第1親衛戦車軍は現状ロシア軍で唯一の軍規模戦車部隊。第2親衛戦車軍の内実は変わっており戦車軍ではない。

2018年の大規模演習の報道でАлександр Лапин司令官の言を引用している。ペアのスナイパーや地雷原とタンク・カルーセルを使用してシリアで効果があった。書き方からするとUAVや自爆特攻車両にも効果的と読める気がするが確証が持てない。UAVに有効なのは位置が変わったり隠蔽の所に普段はいることが多いから敵の攻撃可能範囲に入る位置が容易に特定できないため?考察、情報求む。
https://defendingrussia.ru/a/vojska_cvo_borjutsja_s_dzhihadmobiljami_i_kvadrokopterami-7771/