米国指揮幕僚大学のロジスティクス分野の論文を今回は一部試訳し紹介しようと思います。
】Operational Logistics
著者】Michael Cyril Lopez 少佐(当時)
製作年度】2001年

 本論文は題の通りロジスティクスについて書かれていますが、いくつか注記すべき特徴があります。
 第1に、作戦レベルのロジスティクスに完全に絞られていることです。戦術レベル、本文中で言えば局地輸送の話はほとんどなく師団内部や軍団内部でどうやり繰りしたかなどは書かれていませんし、小技などは皆無です。戦域規模の計画立案と実戦での問題点調査に絞られています。故に多少抽象的ではあります。
 第2に、本文の分析はMETT-TCの体裁に従って行われています。論文のテーマの都合上短くされていますが、作戦レベルのロジスティクス用METT-TC分析の具体例と呼べるかもしれません。(先に後半の実戦例読んだ方がわかりやすいかもしれません)

 第3に、実戦例として湾岸戦争の砂漠の嵐作戦が取り上げられています。ロジスティクスの理論もほぼこの作戦を基盤に置いているので一般的なものとしてよいかは個々に注意が必要です。

 そして最後に、実戦分析に基づく追加考察として「米陸軍は湾岸戦争地上攻勢が終結せずにもし追撃が実施されていた場合、それはロジスティクス的にどのような影響があったか」を少佐はしています。

 湾岸戦争は米国軍(多国籍軍)の勝利で終わりましたが、陸軍は当初狙っていたイラク軍の撃滅という軍事目標の達成に失敗しました。大半の湾岸戦争書籍で撃滅失敗の論点となるのは「なぜ包囲できなかったのか」具体的に言えば第7軍団の攻勢中の前進停止です。これについて当初糾弾されたロジスティクスが足りず部隊が停止した説についてはパゴニス将軍を筆頭に否定する話が多くでています。第7軍団内の司令官たちの戦術的判断ミスだったのか、それはなぜ起きたかは激しい議論を米国で呼びました。
 しかし包囲は手段にすぎず、本論文は全くその議論は焦点になっていません。少佐の着眼点は全く別の所にあります。包囲失敗したという事実に基づきながらも軍事目標の敵撃滅を達成するために、バスラ市近郊で北へ撤退するイラク軍を、現実の停戦命令がなかったら作戦レベルの縦深で追撃することはできたのか…それを少佐は考察しています。最後の章に書かれたことだけでもぜひ読んで頂きたい興味深いものとなっています。
Operation Desert Storm_gif
___以下本文________________________

【 第1章 導入 】
 (略)
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【 第2章 作戦的ロジスティクスのMETT-TC】
  (METの箇所は略)
 当時の陸軍マニュアルのMETT-TCの書き方にはロジスティクスにとって不備があることなどが書かれています。

T:部隊と支援の可用性_Troops & Support Available

「司令官は自軍の質、訓練水準、心理状態を査定する。
その分析にはクリティカルとなるシステムと統合的支援の可用性を含むことになる。」 
米陸軍指揮幕僚大学, (2000), "ST-3-0 : Operations"より抜粋

 作戦レベルにおける部隊と支援の可用性とは、必要となる部隊と支援そのものであると更に適切に定義されている。この区別をすることは必須である。なぜなら米軍を作戦のある戦域に投入する手法は4つあるからだ。即ち配属、配分、課役、増加である。(4つのA=Assigned, Apportioned, Allocated, and Augmented.)
平時配属部隊(Assigned forces)とは、平時用に国防省によってある統合司令官の戦闘指揮権下に置かれた部隊のことである。
配分部隊(Apportioned forces)とリソース配分は、事前に時間をかけた計画立案のために使用可能となるものだ。平時配属部隊や動員を通した場合に予定される部隊そしてある特定地形地域のために投入を想定した部隊、これらを部隊及び資源配分には含んでいる。
課役部隊(Allocated forces)と割り当て資源は、国家指揮権限(NCA)によって何らかの(具体的行動目標を持つ)計画立案または実行をするために振り当てられた部隊のことである。
増加部隊(Augmentation forces)とは、サポートしている司令官の指揮下からその戦闘司令官の指揮権下へと移管される部隊のことである。または国家指揮権限の認可が為されたある作戦指令を実行する期間において支援を受けている司令官の作戦的統制下へと移管される部隊のこと。

 任務達成に必要な部隊と支援を決めるために為された分析とは実際の所、軍事作戦のためにロジスティクス部隊が戦力と維持支援活動の計画を立てることだ。分析とは、(戦域への)進入方法や自軍の作戦レベルのロジスティクスに影響を及ぼす敵能力そして海港と空港の処理能力の推定といった事項を決定するための事前の作業の複合なのである。また戦闘サービス支援組織の構築、戦域の貯蔵目標に関する推奨事項の作成、作戦及び戦術的な維持支援用基地の位置特定、そして提案された作戦レベルの維持支援活動用の基地のロジスティクス可能範囲を推定することも含まれている。

【TFOP:戦域部隊開幕パッケージ】

 まず進入の方法を決定するのは、積載港で米軍を受け入れるために必要な戦域部隊開幕パッケージTFOP)のタイプを明確化する手助けになる。戦域部隊開幕パッケージとは作戦レベルでの戦闘サービス支援の資産であり、荷揚げ港で作業を進行させ米軍の生活サポートの初期段階をもたらしてくれるものだ。
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TFOP
※ 訳者補足:TFOP 参照元:FM100-10-1 THEATER DISTRIBUTION  第4章Theater Distribution Operations 

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【任務必須補給クラス】

 自軍の作戦的ロジスティクス組織に影響を及ぼす敵能力を判断することで、必要となる港のセキュリティの種類と量の策定が導かれる。海港と空港の処理能力を決定することで、利用可能な時間、スペースや資源の観点から米軍が任務を遂行できるかどうかが決まってくる。ロジスティクス範囲とは戦闘サービス支援の資源を決定的に使用可能な距離として定義される。その総合評価は行動手順開発のためのロジスティクス上の選択基準を定めるのに役立つのである。

 戦闘サービス支援の必要事項の推定は、その任務において地上戦闘部隊を維持するために必須となる補給クラスの査定によって達せられる。ジェームズ・ブラバム(James Brabham)は任務必須補給クラスを「3つの物品」の観点から定義した。食料と水のクラスⅠ、燃料のクラスⅢ、弾薬のクラスⅤだ。
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※訳者補足:補給物資のクラスは現代の米軍では次の様に分類されている。
ClassⅠ=食料と水(レーション)
ClassⅡ=衣類及び日用品
ClassⅢ=燃料(POL)
ClassⅣ=建築資材
ClassⅤ=弾薬
ClassⅥ=個人用品
ClassⅦ=部隊の主要機材(戦車やパラシュートなど)
ClassⅧ=医療品
ClassⅨ=修理部品
ClassⅩ=その他非軍事物資
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 大規模攻勢作戦において戦闘サービス支援部隊はその作戦のテンポを維持するために必須物資を備蓄しておき、渡しに行かねばならない。これは重要なことだ。その実践のためには必要なものと「持っておくと良いもの」を厳密に選定しておく必要がある。
 持っておくと良いものの例はクラスⅨの修理部品の大量備蓄だ。攻勢作戦中、主要車両を修理する機会は限定的だ。オペレーターとメカニックが戦闘による損害の評価及び修理を行い、車両はしばしば任務遂行用の完全なステータスに満たぬ状態でも動作し、そしてもはや任務遂行が不可能な損害を負った車両は補給物資の供給源になるのである。(※パーツの流用、共食いのこと。)
 必要物資の見積もりはショートトン(STON = 907.184kg)とガロンの単位で定量化される。例えばクラスⅠ及びⅤは1日当たり必要なSTONsの数量として定義されている。水とクラスⅢの燃料は1日に必要なガロン数として定義されている。

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 戦闘サービス支援の見積もりは、支援する部隊組織を構築するための基盤となる。軍団より上の梯団の戦闘サービス支援部隊とは、ビロウ・ザ・ライン部隊として定義される。戦域支援コマンド(TSC)を除いて、通常はビロウ・ザ・ライン部隊は事前計画または緊急行動プロセス中に国家指揮権限によって割り当てられたりすることはない。支援を受ける司令官は自分たちの任務分析に基づいてそれらを要請する必要がある。ビロウ・ザ・ライン部隊として基本的に(各役割ごとに)中隊規模の部隊が複数編成される。作戦時間にわたって使用可能なものを定めるため、地図上には戦闘サービス支援の配列が示される。
(※軍団よりも後方の根本的ロジスティクスは、政府上層部が決めるのではなく戦域に配属された司令官とロジスティクス計画者達が要求するものを配備する。なぜbelow the lineと呼ぶかは後述の区域所掌図を見るとわかりやすい。)

 それぞれの戦闘サービス支援が機能する領域において固有のものとして、これらビロウ・ザ・ライン部隊から戦闘サービス支援部隊組織の構築が為される。そこには11個の機能領域があるが今回記すのは4つに絞る。即ち補給(Supply)、武器科(Ordnance)、現場サービス(Field service)、輸送(Transportation)である。
 補給及び弾薬を担う諸中隊の場合、任務必須補給クラスを受領し保管し支給する能力に基づいて部隊は割り当てられる。
 武器科及び現場サービスを担う諸中隊の場合、支援が必要な部隊の総数に基づいて割り当てられる。
 輸送を担う諸中隊の場合、任務に不可欠な補給クラスを運搬するための合算された要求量に基づいて割り当てられる。
 多機能戦闘サービス支援部隊の組織を構築するために最も有用な参照文献は米陸軍『CGSC ST 101-6:G1/G4 Battle Book』である。

(※余談ですが、米陸軍指揮幕僚大学ハンドブック『ST 101-6:G1/G4 Battle Book』は現代戦についての良書です。実践的に使えることに絞って要約が並べられていますのでロジスティクス畑以外の人にも奨められる本。)
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【備蓄目標】

 戦域での備蓄の推奨目標とは実際の所、その戦域で維持する必要がある特定の物品の供給日数(DOS)の決定のことである。戦略規模の処理量、作戦規模の処理量、戦役あるいは主要作戦の期間、そして戦域にあるインフラへの破壊/破損の影響の推算に基づいてその決定は為される。最も重要な決定要因は指揮官がある小規模な戦域備蓄を維持する上で受け入れるリスクの程度である。(※見境なく多く備蓄要求すると準備時間/コストがかかり過ぎるし鈍重化する。)

 戦域のロジスティクス基地の場所は海港、飛行場、陸路/鉄道の連絡線が集結する地点に結び付けられる。作戦レベルの維持支援用の諸基地は時間/距離、戦闘部隊の前進軸、戦術レベルの維持支援用の拠点の場所に影響される。効果的な分析によって任務必須補給クラスの戦域内備蓄量を最小限に抑えるのだ。
 
 多くの場合、米軍のロジスティクス資源は何らかの制約を受け、その結果として維持支援の不足が発生する。ロジスティクスの制約に対する解決策を発見することこそがロジスティクス計画立案における技巧(art of logistics)である。ロジスティクスの諸基地の影響到達範囲を把握し、ロジスティクス予備というコンセプトを使用することによって、それ(art of logistics)は始まる。だが現状の所『JP4-0 (統合参謀本部のロジスティクス教範)』で述べられていることだが、ロジスティクス兵術は未だ完全には開発がなされてはいない
 ロジスティクス予備とは戦略的ロジスティクスの維持支援用基地からは供出されないリソースを調達するプロセスのことを指す。これが現実的に意味するのは、『外部委託』ロジスティクス支援である。ホスト国の支援、何らかの組織と契約しての支援、連合国の支援、あるいはそして地域的サ支援を確保することで戦闘サービス支援の作戦的範囲を拡大することによって外部委託は為される。外部委託の焦点は任務必須補給クラスの資源提供をサポートすることだ。
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【ロジスティクス範囲】

 戦術的及び作戦的な維持支援用基地のロジスティクス可能範囲は、連絡ゾーンと戦闘ゾーン全体の各ロジスティクス基地の配置を視覚化することで決定される。用語の定義は後述する。この視覚化の点において持続的に使用する維持支援用基地と一時的な基地との違いを明確にすることが重要だ。戦域レベルでの各基地は一般的に継続的使用を行い、受付基地や中継基地、前進移動基地、統合基地で構成されている。統合基地は戦域内において展開前に戦力が集結する場所だ。
 一時的基地とは、戦術的または作戦的な維持支援用基地、そして展開した戦力がそこから維持支援される拠点を含んでいる。戦術的及び作戦的な維持支援用基地は戦闘状況に応じて移動する。

 マクロ的に見て、戦術的及び作戦的な維持支援用基地の設置の構想をするということは現実的には、師団・軍団・軍によって運用される戦術的及び作戦的領域の次元を理解することを意味する。ロジスティクスの観点においては師団支援コマンド(DSC)、軍団支援コマンド(CSC)、戦域支援グループ(TSG)のコンセプト的配置のことだ。
 マニューバ計画立案者が己の2レベル下の各部隊を配置するように(例:師団計画立案者が大隊レベルのマニューバ部隊も把握する)、ロジスティクス担当者も同様に2レベル下を扱う(例:戦域支援グループ計画立案者がその戦域内にいる師団支援コマンドも把握しておく)。端的に言うと、軍団支援コマンドとその隷下部隊の任務とは軍団にロジスティクス及び医療支援を提供する事であり、師団支援コマンドの任務はその師団にロジスティクスと健康サービス支援を提供することだ。

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 『ST 101-6:G1/G4 Battle Book』は戦闘ゾーン、連絡ゾーン(COMMZ)、内的区域を含む線形の作戦領域を詳細に図解している唯一のマニュアルだ。[添付1を参照]
 戦闘ゾーン師団エリアと軍団エリアで構成されている。(戦闘ゾーン=師団ゾーン+軍団ゾーン)
 諸作戦の師団エリアは前進境界から60~75㎞の縦深で定められる。
 諸作戦の軍団エリア140~180㎞の縦深で定められる。
 従って、戦闘ゾーンの縦深は200~255㎞となる。
 連絡ゾーン(Communication Zone)は戦域エリア全体から構成され、距離は状況に応じて異なる。

Operational logistics-51_添付1

 師団支援コマンドにおいて、組織的戦闘サービス支援の局地輸送距離が師団の縦深さを定義しているのである。自動車輸送では補給業務を局地輸送(local haul)と長距離幹線輸送(line-haul)に分けて捉える。
 局地輸送とは10時間の稼働シフト4往復を完了できる能力(を持てる距離)として定義される。通常の計画上の局地輸送距離は35~45㎞である。
 長距離幹線輸送20時間の稼働シフトで2回の往復を完了する能力(を持てる距離)として定義される。長距離幹線輸送の計画上の距離は通常なら140~144㎞である。

 諸作戦の軍団エリアもまたいくつかの戦術的維持支援用基地で構成されている。軍団支援コマンドには前方軍団支援グループ(Forward CSG)と後方軍団支援グループ(Rear CSG)が配備される。
 前方軍団支援グループ(縦深70~90㎞)は、師団後方境界の背後で稼働する。
 後方軍団支援グループ(縦深70~90㎞)は、前方軍団支援グループの背後の中央に置かれる。
 線形型戦場において各エリアは連続しており、それ(F CSG + R CSG縦深)により軍団の縦深140~180㎞が構築される。基本的に軍団支援グループの組織的戦闘サービス支援部隊の長距離幹線輸送の長さとは軍団の縦深で定義される。よって合計で戦闘区域の戦術的な縦深は200~255㎞となる。(※つまり米軍の軍団などの所掌区域距離は攻撃射程等ではなくロジスティクス能力を基準に定められている。)
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 戦闘区域の戦術的な幅は『ST 101-6』では定義されていないが、幾つかの陸軍野戦教範を参照することで近似的に算出できる。『FM34-130』には米軍の1個大隊タスクフォース(BN TF)の典型的な防御正面標準4㎞、延長して8㎞と記されている。防御正面を念頭とするとほとんどの場合、旅団戦闘チーム(BCT)司令官は2つの大隊タスクフォースを並べて攻撃し、もう1つの大隊タスクフォースに後続を担わせる。更に攻撃の際は、旅団戦闘チームの司令官は大隊タスクフォースのフォーメーションを拡大し防御時の1個大隊タスクフォースの2倍の距離になると想定される。よって、旅団戦闘チームの戦術的攻撃の幅は約15~20㎞になると導出される。

 攻撃中の1個師団にとって、2個の旅団戦闘チームが並んでおり1個が後続する形と同じ方針を使用した場合、師団の戦術的な幅は約30~35㎞となる。
 このコンセプトを4個師団編制の1個軍団の攻撃について拡張すると、3個師団が前線に並んで1個師団が後続となるため、軍団の戦術的な幅90~120㎞と概算できる。
 この推算値(90~120㎞)は軍団縦深(200~255㎞)のちょうど半分となっている。これは攻撃時に米国の軍団司令官は戦術の柔軟性を高めるために戦力的重心を縦深方向に分散させることを望むという観点においては論理的である。(※縦方向に戦力を深く厚く持つことは、戦線で何か起きた場合に投入/後退できる余力を増大させることに繋がる。逆に横へ広げると攻撃幅が拡大する利点はあるが厚みが減り予備戦力の投入可能範囲が足りない場所がでてくるため不測の事態への対応力が減少する。)
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 基本的に戦闘区域内のロジスティクス範囲はある程度は固定的な計画距離(縦250㎞前後 x 横120㎞前後)となるのだが、一方で連絡区域(COMMZ)でのロジスティクス範囲の要求は未知(未確定)の変数となる。ただしこの未知の数量はR(率)、T(時間)、D(距離)の計画上の係数を使い任務に不可欠な補給クラスを線引きすることで定義はできる。
 率とは平均速度のことであり出発地から目的までの移動中の輸送コンボイが維持しなければならない目標値である。道路状況が劣悪な場合の計画上の率は16㎞/hとなる。良好な道路の計画上Rは32㎞/hである。

 時間の係数には出発地から目的までの移動時間だけでなく積み込み/積み下ろしも含まれる。輸送機械はストレート型、コンテナ型、セミトレーラー型の3種類に分けられる。ストレート型トラックとセミトレーラーでは1往復あたり2.5時間の積み込み/積み下ろし時間がかかる。コンテナ輸送型は1往復あたり1.5時間の積み込み/積み下ろし時間がかかる。セミトレーラーをリレーする方式(タンカー輸送)でのトラックトラクターはリレー1輌分ごとに1時間の積み込み/積み下ろし時間がかかる。

 距離はロジスティクス基地間の道路距離と定義される。戦域/作戦レベルにおいて、戦術支援グループ(TSG)は通常は後方軍団支援グループ(CSG)の長距離幹線輸送上に配置される。上述のように作戦的な長距離幹線輸送の距離140~144㎞となる。
 ロジスティクス限界に達する(logistical culmination)のを防止するため、戦術支援グループと後方軍団支援グループとの距離はこの定義上の距離を越えてはならない。線形型戦場では戦術支援グループがカバーしなければならない範囲とは、出発地点から最終目標までの前進軸に沿った軍隊の合計縦深と合計幅から軍団区域の縦深と幅を引き算したものと推算できる。
 添付1の図に要約されている役務距離を考慮すれば、作戦的ロジスティクス提供者が戦域ロジスティクスの応答性を決める役割を担うのは明らかなのだ。

T: 利用可能時間_Time Available

(略)

 他のロジスティクス関連METT-TCも略します。

Appendix 2_Operational Logistics METT-TC


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※ 以下には実戦例として1991年湾岸戦争での作戦レベルのロジスティクスについて取り上げる。特に各町の位置を事前に要確認。
gulf war graound offensive
<※ 湾岸戦争の陸上攻勢オペレーション・デザート・セイバー 補足挿入>
【 第3章 砂漠の嵐作戦の事例研究 】

支援コンセプト

 砂漠の嵐作戦(Operation Desert Storm)において、米陸軍戦域ロジスティクスに責務を担った司令部は第22支援コマンド(SUPCOM)である。地上戦闘が4日(100時間)以内に終結したためロジスティクス面での限界到達と一時停止は発生しなかった。ただしもし陸上攻勢は第4日を越えて継続されていた場合、作戦的ロジスティクスのシステムが第3軍の地上戦役に作戦的停止をせずに維持支援をもたらすことができたかどうかははっきりしない。
 この事例研究の目的は砂漠の嵐作戦での4日間の地上戦役に対し維持支援を提供した戦域ロジスティクスシステムの反応性を査定することである。第1章で述べたように反応性とは、予期していない作戦上の要請を予想することによって軍事作戦の任務や組み立やコンセプトを支援するあるロジスティクスシステムを発展させるものと定義される。砂漠の嵐作戦での戦域ロジスティクスシステムを理解するには、地上戦支援コンセプトを検証する必要がある。このコンセプトは添付3にまとめられる。

anticipating unforeseen operational requirements.
添付3_Operational logistics-53
<  添付3:サウジアラビアに展開した初期の多国籍軍配置とロジスティクスルート 
ロジスティクス基地のA、B、C、D、E、及び内陸南Riyadh市、海岸Dammam市、図中央右側のAn Nu Ayriyah市を要確認  >


 第22支援コマンドは開発したのは5段階支援コンセプトというものだ。
・第1フェイズ=サウジアラビアの防衛と(米国の)戦闘部隊受け入れ
・第2フェイズ=陸上攻勢の準備
・第3フェイズ=イラクとクウェートへの陸上攻勢
・第4フェイズ=クウェートの安全保障と米軍の地固め
・第5フェイズ=米軍の移転
 砂漠の嵐作戦の非機密文書には記載されていないが、連合軍(多国籍軍)のRSOI、維持支援、移転については第22支援コマンドがその役務を負っていた。
(※RSOI=Reception, Staging, Onward movement, and Integration:受入れ、中継、進行、統合)

 サウジアラビアの防衛と米軍受け入れのために、第22支援コマンドは戦域受け入れ基地をDhahranのDammam市の近くに設営した。最初の作戦レベルの維持支援用基地はAn Nu Ayriyah市の近くのログベース・バストーニュ(Logbase Bastogne)に置いた。ログベース・バストーニュは第22支援コマンドの前進指揮所が置かれた場所でもある。第22支援コマンド本部はリヤド(Riyadh)市にあるアメリカ中央陸軍(ARCENT:第3軍)とアメリカ中央軍(CENTCOM)司令部の近くに置かれた。
 陸上攻勢の準備を支援するために第22支援コマンドはコンボイ支援所主要補給路(MSR)の沿線に設置し基礎生活支援及び維持支援活動を行った。加えて第2シリーズ維持支援用基地がリヤド市とキング・ハリド軍事都市(KKMC)の中間に置かれログベース・デルタ(D)と呼ばれ、ここには戦域弾薬備蓄所も含んでいた。そして広範的維持支援用基地はキング・ハリド軍事都市に置かれログベース・ブラボー(B)と呼ばれた。
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 イラクとクウェートへの陸上攻勢を支援するため、第22支援コマンドは第3フェイズ用の作戦的維持支援用基地を設営した。それから第4フェイズ用を設置するための緊急事態対応計画を策定していったのである。
 地上戦が発起される前に、第18軍団(ログベース・チャーリー:C)と第7軍団(ログベース・エコー:E)のそれぞれの戦術的集結エリア(TAA)の所に作戦レベルの維持支援用基地が設置された。そして戦闘が始まってからは軍団の戦術的集結エリアは地上戦の主要な戦域維持支援用基地となったのである。
 再補給ロジスティクスはその戦術的集結エリア(つまりCとE)から出発し幹線輸送をして各後方軍団支援グループ(Rear CSGs)に到着する。そして後方軍団支援グループから前方軍団支援グループ(Forward CSGs)へと幹線輸送をする。それから各前方軍団支援グループは直接的に幹線輸送をして師団支援エリア(DSA)か前方支援大隊(FSB)へと繋がっているのである。
 戦域輸送車両の幹線輸送距離(ロジスティクス範囲)を超過して(つまり上述の「20時間の稼働シフトで2回の往復を完了する能力を持てる距離」を越えて)、幹線輸送活動は戦闘区域の背後境界(後方軍団支援グループ)まで続けられることになってしまった。第22支援コマンド司令官パゴニス将軍はこの距離(通常ロジスティクス範囲)を「90マイル」あるいは144㎞だと定めていた(のだが越えてしまったのだ)。それ故にこの時点で、この近い将来予測される事態に備える作戦レベルの維持支援用基地とするためログベース・オスカル(O)とログベース・ノヴェンバー(N)を新たに設置するための緊急対応計画が策定され、その補給プロセスが再開されることになった。(詳細は後述)
Operational logistics-51_添付1
 第2章で説明した作戦レベルのロジスティクスMETT-TCプロセスが今使われ、戦域ロジスティクスシステムの査定をする。

戦例研究

【M:Mission_任務】

 作戦レベルの使命タスクを決定する際に、中央陸軍司令官ヨーソック将軍から与えられた1の指針となる原則に基づいてパゴニス将軍と彼の部下の計画立案者たちは作業した。即ち、(補給面では)如何なる作戦的停止も発生しないように陸上攻勢を維持させるのだ。ヨーソック将軍がこの指示を出した理由は「The campaign plan strived to force the enemy beyond his culminating point first.」であった。これを為すためにヨーソック将軍が構想していたのは、まず中央陸軍ARCENTで包囲し次にバスラ近郊のイラク共和国防衛隊がユーフラテス川を越えて逃げる前に撃滅することであった。作戦計画を維持するためにパゴニス将軍は3つのクリティカルとなる想定をすることで計画者たちに集中させるようにした。即ち、連合軍が地上戦に勝利するであろうこと、戦線前線は急速に変化するであろうこと、支援コマンドが柔軟なロジスティクスのシステムを開発する必要があることだ。

 地上戦が成功すると想定すれば、計画者たちはその時間と限られたリソースを作戦の成功を維持することに集中することができ、それと対比することで膠着または失敗した場合の緊急対応計画を策定することができたのだ。
 戦線前線が急速に変化すると仮定すると、計画者に通常戦闘と会敵交戦のテンポについてのメンタルモデルをもたらせる。このメンタルモデルの利点は、任務に不可欠な補給クラスの移動備蓄(mobile stocks)を向上させておくというコンセプトを創り出したことだ。
 柔軟な戦域ロジスティクスシステムが必要であると仮定すれば、(基本)ロジスティクス計画はシンプルであることが必要となるのだ。即ち港からログベースへログベースから前線へ、である。

【E:Enemy_敵情】

 ロジスティクス計画者たちは、地上戦開始前においてサウジアラビアの海港、飛行場、陸路/鉄道連絡線に脅威を与える敵能力はスカッドミサイル攻撃に限られると判断した。地上戦開始後ではイラクが連合軍の後方地帯でのテロ攻撃やスカッド攻撃の増大によって重要ロジスティクス拠点に脅威を与える可能性があると推定した。ロジスティクス資源を防衛するために計画者達がしたことは次の事項になる。

・パトリオット防空大隊に海港と飛行場を守らせる。
・地上/鉄道連絡線を安全確保し続けるために憲兵旅団の投入を要請する。
・特殊作戦チームを侵入させイラクの戦線奥地にあるスカッド発射場所を発見及び破壊してもらう。

 また、計画者達はイラクの作戦的ロジスティクス組織の逆BOS分析を実施し、敵の戦域ロジスティクス基地の場所を予測した。(※訳者注 Reverse Battlefield Operating Systems Analysis = 敵の戦場ロジスティクス能力の分析、敵の維持支援及び発達に使われる補給源の安定性も調査する。 参照The U.S. Army/Marine Corps Counterinsurgency Field Manual p.260 )
アメリカ中央軍の作戦エリアにはサウジアラビア、クウェート、ユーフラテス川南域イラク領が含まれることになった。その作戦エリア内において、イラクにはバスラ市に大規模な国際空港と主要商業港が1つずつあった。そしてアズ=サルマン(As Salman)、タリル(Tallil)、ジャリバ(Jalibah)に計3つの軍事基地があった。1990年6月までにイラクはクウェート国境のサフワン(Safwan)とシリア及びトルコ国境を結ぶ6車線の国際道路(ハイウェイ8号線)を完成させていた。鉄道連絡線はサフワンからトルコへつながるハイウェイ8号線と並行して走っている。加えてイラクのアル=ブサイヤ(Al Busayyah)とアズ=サルマンの町を結ぶクウェート国境から伸びている東西方向の道路が国土南域にあった。イラク南域~サウジの主要な地点は添付4を参照とする。
添付4_Operational logistics-54
  この情報に基づいて米軍のロジスティクス計画者達は敵イラクの戦域ロジスティクス基地がハイウェイ8号線と鉄道連絡線に沿って配置されること、そして飛行場に近接するであろうと判断したのだ。そして彼らの分析のおかげでジュワリン町(Juwarin)がイラクの戦域ロジスティクス基地の置かれている可能性が高い場所だと特定されたのである。その分析の結果、イラクの戦域ロジスティクス基地、バスラ空港、3つの軍事基地(サルマン、タリル、ジャリバ)が第18空挺軍団と第7軍団の中間目標となった。

 イラク軍の作戦的到達範囲をテンプレート化するにあたり、米軍のロジスティクス計画者達は敵に2つの選択肢があると判断した。アル=ジュバリー(Al Jubaly)やダーランといった沿岸都市かまたは内陸リヤド方面に向けてサウジ国内へ縦深攻撃をするか、あるいはハファル・アル=バティン(Hafar al-Batin)やキングハリド軍事基地などの局地的目標に対し限定的な攻撃をするかである。サウジへの敵イラク軍の縦深攻撃をするとしたらクウェート侵攻で進んだ距離の2倍はある300㎞を超える進撃を必要となる。ハファル・アル=バティンまたはキングハリド軍事基地への制限的攻撃ならその前進が必要とするのは100㎞未満である。2番目の選択肢の方が遥かに可能性は高かったのであるが、結局の所どちらの選択肢もイラク軍には実行不可能であった。イラク軍がこれまで行った最も縦深のある作戦はクウェート侵攻であり、国家情報局機関からの情報によるとイラクのロジスティクスシステムはこの侵攻の際にT55、T66、T72主力戦車で構成される機動部隊の武装や燃料補給そしてメンテナンスをするので精一杯であったことが示されていたのだ。それ故に1990年8月にイラク軍は第3の選択肢を選び、起こりうる可能性のある連合軍の地上攻撃を撃退するために作戦的縦深防御を構築したのである。

【T:Terrain & Weather_地形と気候】

 作戦レベルの戦域は815㎞x640㎞であり、イラクのユーフラテス川南域領とサウジアラビア、クウェートを内包している。その大きさは米国本土の約4分の1にあたる。作戦の第3段階(陸上攻勢)においてロジスティクス計画者達が直面する2つの課題があった。まずサウジの海港と飛行場の間には長大な距離があること、そしてイラク及びクウェートに構築されたイラク軍防御の作戦的縦深である。添付4の図に要約されているのだが、その中心的問題とは港から戦闘部隊へクリティカルとなる補給クラスの物資を渡るよう処理することであった。

 サウジでは、国土の外縁部に優良な地上道路の連絡線が南北方向及び東西方向にあったのだが、内陸部には主だった連絡線がなかった。南東海岸にある空港と海港から軍団の戦術的集結エリアまでの距離は北ルートでは500㎞超であり、南ルートでは900㎞を超えていたのである。北ルートはタップ幹線道(Tap Line Road)と呼ばれ、最前線へ最も直接的に繋がるルートであった。ロジスティクス計画者達はこのルートを戦闘部隊の移動のために優先して使用した。タップ幹線道では1日当たり5780台の車両を扱えた。南ルートはMSRダッジ(MSR Dodge)と呼ばれ、ロジスティクスの移動のために優先して使われた。MSRダッジは1日あたり19720台の車両を扱えた。

 イラクに占領されたクウェート市には主要揚陸空港(APOD)であるクウェート国際空港と、主要揚陸海港(SPOD)であるシュワイフ海港(Shuwaikh)があった。この揚陸空港は米空軍のC-5輸送機を着陸させることができ、揚陸海港は再補給用の喫水の深い大型船を受け入れることができた。さらに揚陸海港には9台のフロントローダー、移動式及び固定式クレーン、フォークリフト、トレーラーもあった。揚陸海港と揚陸空港は北方、南方、西方に伸びる道路連絡線が繋がっていた。クウェート市からは湾岸に沿って北にイラクへと、南にサウジへと走っている主要幹線道路の連絡線があった。

 米軍のロジスティクス計画者達はサウジで米軍を維持するという難題に加えて、軍団の戦術的集結エリアからユーフラテス川までの距離が355㎞以上ありイラク/クウェートの海岸線までは365㎞あるという現実に直面したのである。決定的作戦実施中に極端に長い距離ができる場合は、支援コマンドが敵の領域内に100~160㎞入った所に前進ロジスティクス基地を設置する必要があったのだ。

【T:Troops & Support Available_部隊と支援の可用性】

 第3フェイズ(陸上攻勢)で連絡線が引き延ばされてしまう影響を最小限に抑えるため、ロジスティクス計画者達はいくつかの改革を行った。まず第1に陸軍のロジスティクス上の要求事項を食料、水、燃料、弾薬に限定した。物品の内で燃料と弾薬の要求事項がクリティカルであると判断された。戦術レベルにおいては任務に耐えられなくなった機器からパーツを流用(共食い)することで修理部品の再補給を果たした。医療用補給は死傷者後送プロセスを通じて実施された。兵器の交換と戦域再構築は第4フェイズ(クウェートの安全保障と地固め)まで延期することとされた。この補給の焦点を狭めた主な理由は主導権を手に入れ、そして維持するためであった。
(※訳者注:戦域再構築 theater reconstitutionとはその領域内で行動した軍隊が損耗した分を回復させ新たに変化した戦域に適合する形で行動可能なように態勢を整えること。)

 ロジスティクス計画者達は第7軍団が必要とする燃料は1日240万ガロン(トラック480台分)、弾薬は9000ショートトン(トラック450台分)であると判断した。第18空挺軍団では一日に必要な量は燃料210万ガロン(トラック400台分)、弾薬5000ショートトン(トラック400台分)であると設定された。従って1日の合計必要量は燃料450万ガロン(トラック880台分)と弾薬14000ショートトン(トラック850台分)である。それぞれの補給物資に対応するトラックの負荷量を考慮しておくことは、移送分配システムを構築するための基礎情報となるため重要だ。

 それから計画者達は任務必須補給クラスの戦域備蓄目標を決定した。任務に必須の物品のうち弾薬の要求事項が戦域への戦略的な処理を必要とする唯一の物品であった。燃料と水はサウジ政府が提供してくれていた。湾岸に作った陸軍の使う逆浸透水浄化装置(ROWPU)は大量の水を浄化していた。1990年12月までには戦域には充分な量の食料も配備された。

 1991年1月1日まで、海上連絡線によって弾薬補給は15日ごとに約42000ショートトンを運搬してきた。これは(第7軍団と第18空挺軍団の)三日分の補給にあたる。こういった条件に基づいて計画者達は必要となるであろう戦域備蓄目標を供給日数(DOS)を使って定めた。
・食料=30 DOS
・水=4 DOS
・燃料=30 DOS
・弾薬=45 DOS
戦域備蓄はサウジの作戦地域の前方に配置された。それぞれの備蓄基地に置かれた量は次のようになる。
・ログベースD:弾薬15 DOS
・ログベースB:食料15 DOS、燃料15 DOS、弾薬15 DOS、水1 DOS
・ログベースA:食料5 DOS、燃料5 DOS、弾薬5 DOS、水1 DOS
・ログベースC:食料5 DOS、燃料5 DOS、弾薬5 DOS、水1 DOS
・ログベースE:食料5 DOS、燃料5 DOS、弾薬5 DOS、水1 DOS
添付3_Operational logistics-53

 定められた処理必要事項とインフラを用いて計画者達はこの国で利用可能なリソースから移動型ロジスティクス部隊(mobile logistics force)を編成した。第22支援コマンドは4個のエリア支援グループ(ASG)、2個の輸送担当グループ1個の需品(quatermaster)担当グループ、1個の武器(ordnance)担当グループから構成されていた。
・第22支援コマンドはキングハリド軍事基地に1個のASGを配置し、軍団支援コマンド(CSC)を直接サポートすることにした。
・ダーラン市近郊には2個のASGが置かれて戦域ロジスティクス基地を運営した。
・リヤド市のMSRダッジに沿った所にあるコンボイ支援所には1個のASGが予備として残された。
・第7輸送グループはサウジにある第18空挺軍団の戦術的集結エリアからイラクにある第1の軍団支援コマンドの戦術的維持支援用基地への幹線輸送に活用された。
・第32輸送グループはサウジにある第7機甲軍団の戦術的集結エリアからイラクにある第13の軍団支援コマンドの戦術的維持支援用基地への幹線輸送に活用された。
・需品グループは戦域ロジスティクス基地と作戦的維持支援用基地においてクラスⅢポイントを運用するように配備された。
・武器グループは弾薬の戦域備蓄エリアを運営するために使用された。

 これらの要求事項に基づいて計画者達は5000ガロンの燃料タンカー413台弾薬トレーラー350台で構成される戦域輸送組織を作り上げた。第18空挺軍団は5000ガロン燃料タンカー200台、弾薬トレーラー125台を必要とした。第7装甲軍団は5000ガロン燃料タンカー213台、弾薬トレーラー225台を必要とした。要求事項を満たすために輸送グループは24時間ごとに2往復する幹線輸送活動を実行しなければならなかった。

 軍団の戦術的集結エリアにある作戦的維持支援用基地が届くロジスティクス範囲を推定するために、計画者達はコンボイの速度は16km/hとなるだろうと結論付けた。なぜなら各軍団へと向かう350台以上のトラクター・トレーラーが路面状態の悪質な道路を、あるいは道路が存在すらしない所を移動しなければならないであろうからだ。さらに軍団の連絡線は混雑するであろうと想定を立てていた。
 また、連日求められる要請を達成する(その日作業した車両が次の日にも使われる)ためにそれぞれの幹線輸送は24時間以内に完了する必要があった。途中で遅延が発生することも考慮に入れると、発車地点から到着地点までの(片道の)運転時間は10時間以内としなければならないことを意味していた。(積み下ろし/積み上げと往復して帰還する)全作業を20時間以内に完了しなければならない。
 よって速度(16㎞/h)条件と使用可能時間(10h)を組み合わせることで、160㎞がロジスティクス可能範囲であると定義されたのである。

 加えて米軍の計画者達は自軍の(陸上攻勢)最終目標がバスラ市近くのイラク軍を包囲してユーフラテス川を越えて逃げる前に撃滅することであることも分かっていた。これを念頭において彼らは地形を分析し、ロジスティクス可能範囲の制約内で任務の必要事項を満たすために緊急時対応計画を予め作成しておいた。その第1計画はアズ=サルマン町とアル=ブサイヤ町付近のイラク領内に、作戦レベルの前進維持支援用基地O(オスカル)とN(ノヴェンバー)を設置することだ。その直線距離は約140~150㎞であり、推定ロジスティクス可能範囲よりも僅かに短くできていた。これらの町を選んだ重要な理由は、道路や固定建造物があり淡水の生産に使用できる井戸の近くにあったことだ。

【T:Time Available_利用可能時間】

 J3(作戦)計画者達は陸上攻勢は2週間続くと推定しており、さらにクウェートの安全回復と米軍の地固めには更に4週間かかると予測していた。
(※訳者注:J3 = Operation 戦闘作戦立案チーム。J4 = Logistics)
セキュリティ回復段階の第4フェイズの期間中に、作戦計画者達が企図していたのは戦域レベルで部隊の戦闘能力を再構築することである。各軍団は1個戦闘大隊規模の損失を出すと作戦計画者たちは推測していた。戦域再構築場はキングハリド軍事基地に設置された。第4フェイズの同時作戦には、アラブ軍がクウエート民衆の治安を回復させ、米軍が予想されるイラクの反撃を撃退するためクウェート/イラク間国境沿いに防御を展開することも含んでいる。

【C:Civil Considerations_民事】

 計画者達は地上戦開始時にホスト国の労働者及び輸送車両が地上攻撃を維持するのに信用できるほどの支援リソースではないと判断し、米陸軍の輸送部隊が幹線輸送の大部分を担わねばならないと予想していた。米陸軍とサウジ政府は作戦の第4フェイズでクウェート市へ基礎的サービスを回復させる計画にした。作業は2つのパートで実施される予定となった。第1パートはエリア支援グループはクウェート/サウジ間の中立地帯の近くに作戦的ロジスティクス基地(ログベース・ゴルフ:G)を設営し、基礎的な人道支援物資とサービスを提供し、地元住民の負担を最小限に抑える。第2パートでサウジの請負業者がクウェート市を再建する。これに加えてロジスティクスは1国の責任であるため、(他の)連合国の陸軍の再構築の支援について米陸軍は責任を負わないこととされた。
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【実戦経過】
DesertStormMap_多国籍軍の攻勢
 ※バスラ市(図右上Al Basrah)、アル=ブサイヤ町(図中央Al Busayyah)、アズ=サルマン町(図左上Az Salman)

 地上戦発起(G-Day)が為され、第18空挺軍団の第24歩兵師団と第2機甲騎兵連隊(ACR)がアズ=サルマン市に到達した。(添付5参照、図の中央左)
Operational logistics-55

 開始2日目(G+1)までに第7機甲軍団の第3機甲騎兵連隊はアル=ブサイヤ市へ到着した。(添付6参照、図の中央)
Operational logistics-56

 3日目(G+2)では、両軍団は戦術的縦深の最深部まで前進していた。(添付7参照)
Operational logistics-57


 第18軍団は平均速度15km/hで約300㎞前進し、第7軍団は平均速度12km/hで約240㎞前進していた。両軍団はその前進を日中に行うよう限定していた。「Shammals」(猛烈な砂嵐)により日中は視界が50~75%低下し夜間の視界は0%近くになってしまったのだ。戦車とブラッドレー歩兵戦闘車の砲手たちは熱感知ターゲットを特定するのは困難だと報告してきた。同士討ちの可能性を最小限に抑えるために陸軍の日中の1日約8時間に前進は制限されていたのである。
 この時点で、アズ=サルマン市とアル=ブサイヤ市の作戦レベルの前進維持支援用基地は作戦的トレーラー中継地点(TTP)であった。
 4日目(G+3)までに、両軍団の戦力の中心は東方へ向けられイラク軍の機甲部隊と直接戦闘状態へ入った。第18軍団はアズ=サルマンの真東に175㎞前進していき、第7軍団はアル=ブサイヤの真東に125㎞前進していった。イラク軍は南北方向の海岸沿いのハイウェイで退却していっている。イラク軍の大半はバスラ市にいたのである。1991年2月28日朝(G+4)に国家指揮権限から敵対行為の停止命令が下った。
Operational logistics-58

 示されていた軍事目標が達成される前に地上戦は時期を早めて終了したので、地上戦役のロジスティクス面の計画と実践は充分でであった。シュワルツコフ将軍は米陸軍の主目標は「イラク共和国防衛隊を撃滅すること」であると述べていたのだがこれは起きなかったのである。

 「3月1日までに共和国防衛隊の機甲及び機械化部隊はバスラ市の約100㎞北にあるアル=クアルネーまで北上していた。これらの部隊は無秩序に逃げているわけではなかった。敵の行軍序列は律されていたのだ。敵は停止すると、戦車隊が散らばって360度の警戒をしながら防壁を掘った。敵にはシーア派とクルド人との別の戦いが残っていたのである。3月1日に北に到達するには26日では無く、27日中にバスラ市に移動しなければならなかったのだ。」

Robert H. Scales, (1994), "Certain Victory : The US Army in the Gulf War", p.316

 支援コマンドがその作戦の追撃段階で維持支援をし続けられたかどうかの回答は得られないままとなったのである。
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【 第4章 】

調査_バスラ市への即時追撃は可能だったか

 地上戦闘に維持支援が施されるようにした戦域ロジスティクスシステムの1例として、砂漠の嵐作戦を見なせるかどうかを判断するために、地上戦が4日目以降も継続しヨーソック将軍はラックとフランクス両将軍に追撃命令を発することができた場合という想定をして議論を深める。
 ヨーソック将軍の追撃命令とはバスラ市近郊でユーフラテス川を越えて逃げられる前に共和国防衛隊を撃滅する事である。つまり元々は攻撃(南岸で包囲された敵への攻撃)のために設計されていた物資分配システムが今度は追撃を支援する必要があるという事を意味する。

 前進開始後4日目(G+3)、両軍団の戦力中心は東へ差し向けられイラク軍と直接戦闘を行う。第18軍団はアズ=サルマンの175㎞先へと進み、第7軍団はアル=ブサイヤの125㎞先へと到達する。その日の終わり頃、ラック将軍とフランクス将軍に通常の追撃を命じる準備をヨーソック将軍はする(と仮定する)。第22支援コマンドは追撃を予想して2つの緊急時対応計画を進展させる。

 第1計画イラク領内へ150㎞入った所に作戦レベルの前進維持支援用基地(ログベースON)を設置し、サウジから続く支援コマンドの幹線輸送のロジスティクス可能範囲を拡大することである。その意図とは支援を受ける部隊までの距離を短くすることで幹線輸送作業の効率を改善することだ。ただしこれには代償無しには成し得ない。このような動きは(包囲攻撃のために割り当てられていた)限られた量しかない運搬用機材をサウジとイラクの各基地へと再分配する必要が生まれてしまうのだ。それはロジスティクスの勢いの低下を引き起こすであろう。総量の変わらない幹線輸送機材をサウジとイラクの2つの地域へと分割して配分する必要があるため、陸軍の部隊は燃料と弾薬の要求量を50%削減しなければならなくなるだろう。

 第2計画は、海岸超越式統合ロジスティクス(JLOTS)作戦を実施することであるがその成功はクウェートの港が利用可能であるかにかかっている。
(※訳者注:JLOTS = Joint Logistics Over the Shore。LOTSとは喫水の深い船や固定型海港施設を使用せずに実施される積み込み/積み下ろしプロセスのこと。参照:Joint Publication 4-01.6)
 その目的とは全く新しい戦域ロジスティクス基地を作成することにより、地上連絡線が引き延ばされてしまう問題を回避してしまおうというものだ。この第2計画は3つの理由で実行不可能であろう。それは次の事項だ。
・全てのクウェートの港は機雷が施設されている(可能性がある)
(この新ロジスティクス基地を作り始める必要がある時間には)まだイラク軍(の一部)はクウェート市にいる。
・そもそもJLOTS作戦を実施するには(海岸への)突入作戦の実施が必要であり、それをするに充分な時間もリソースもない
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 よって、どちらの緊急時対応計画も最適とは言えないのである。このジレンマは現在の幹線輸送作戦の速度を上げるかするのか、別の維持支援用基地を作ることで戦術部隊までの距離を短くするかというものだ。
 ただしより良い計画は、攻撃フェイズ中に設置された各トレーラー中継地点を使用して追撃を維持することだ。
 第18軍団の区域においてアズ=サルマンからイラク海岸までの距離は325㎞を超える。戦術的到達可能範囲の議論(添付1のcombat zone)に基づけば、第18軍団(自身が占有する距離は)は200~255㎞までが範囲限界であると判断される。追撃作戦においては(最も間延びすると想定されるため)軍団が有する最大距離は255㎞であると想定できる。よって第22支援コマンドはサウジからの150㎞に加えて、アズ=サルマンから軍団後背までの(325-255=)70㎞をカバーする必要がある。諸々を足した総距離は250㎞を超えるであろう。
 従って1回の幹線輸送作業を24時間以内に収めるには輸送コンボイの速度を16km/hから20km/hに増速する必要がある
 主要補給路の状態を改善するために、地上での攻撃開始と同時に工兵部隊が作戦を実施すれば問題を解決または極小化できるであろう。
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 第7軍団区域の状況はそれほど良くはない。アル=ブサイヤからクウェート海岸線までの距離は240㎞ある。この距離は軍団の戦術的保有可能範囲の200~255㎞以内の数値だ。だが軍団が地上戦力をバスラ市に配置できるようにする場合、更に75㎞(合計315㎞)をカバーする必要が出てくる。
 この作戦を支援するために第22支援コマンドはサウジからの150㎞に加えてアル=サルマンから軍団後背までの75㎞をカバーしなければならないのだ。
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 よって両軍団区域ともに幹線輸送は急激に速度を上げなければならない。(実際は)工兵部隊がこの任務を遂行するように命じられたという兆候も、ロジスティクス計画者達がそれを実行可能な解決策だと見ないしていたという兆候も無い
 
 砂漠の嵐作戦は持続的な地上戦闘のために応答性があった戦域ロジスティクスシステムの戦例ではないのだ。第18空挺軍団も第7軍団もバスラ市の南域にその戦力を集結させ共和国防衛隊を撃滅することはできなかった。なぜならその距離は第22支援コマンドのロジスティクス可能範囲を超えていたからである。(添付9に要約を記載)
Operational logistics-59

 ジェームス・ヒューストンの予言は今なお真実であり続けている。

 「ロジスティクスの脆弱性の1つは、ある活動における戦果拡張フェイズ及び追撃フェイズを支援するための輸送の不足にあった。」
 James A. Huston, (1967), "The Sinews of War: Army Logistics, 1775-1953", p.672






(※訳者注:原文は"great"な弱点と書かれている。ただし戦果拡張の失敗の原因が必ずしも輸送能力の不足であるとは限らないこともJ.A.Hustonは追記している。この書籍は近代ロジスティクスの実戦例について研究した大著。)

【査定】

 上述のように、応答性とは予期していない作戦的要求事項を予想することにより、軍隊の任務や構成及び作戦コンセプトを支援する戦域ロジスティクスのシステムを開発することである。コンセプトは陸軍ドクトリンと一致したものとなる。例えば、陸軍のドクトリンでは攻勢行動には次の4種がある。
移動し接敵
攻撃
拡張
追撃
予期していない攻勢作戦上の要請を予想するためにドクトリンに必要なことは、この4種の攻勢行動を維持することに関係している。これを実施するためにロジスティクス計画者達はあらゆるタイプの軍事行動にある3つの可能性すなわち成功膠着失敗に対応できるようにしておかねばならない。如何なる作戦の計画立案であれ不可欠のツールとは、作戦の各段階へ移行する要件次項(transition requirements for each phase)を作っておくことだ。分岐や続行のいずれかを実施するための基準にその移行要件がなるのである。

 攻勢作戦において、ロジスティクス上の移行基準は3つの領域(任務必須補給物資、戦闘能力、作戦的進捗)での需要と供給の観点から定量化できる。
「査定とは作戦の現在の状態と進捗を継続的に監視し、成功基準に照らし合わせて評価し意思決定と調整を行う事である。」

 ロジスティクス計画者達が応答性ある支援計画を開発するには、第1に任務必須補給クラスの消費率を戦域備蓄量と比較する必要がある。それから任務必須補給クラスの戦域備蓄が戦闘部隊の小比率以下か/同等か/あるいはそれ以上であるのかを判断する。その結果に基づいて、その作戦がその戦域備蓄量で支え得るかどうかを査定をしなければならない。

 計画者達が第2にする作業は、戦闘損失率を戦域ロジスティクスシステムが生み出せる戦闘能力量と比較する事である。交換、任務に復帰する人員、メンテナンスでの復活、クラスⅦ(部隊の主用機材)の再補給が実際に起きるであろう損失率より下か/同等か/超えてしまうかを判断しなければならない。そしてその作戦は戦闘能力の生成に支え得るものかどうかを査定せねばならない。

 応答性あるロジスティクス計画をたてるための第3の鍵は、戦術的な前進率と支援活動の段階区分の比較である。計画者達は幹線輸送活動が陸軍各部隊の前進率より低いか/同等か/高いかを判断し、支援の各段階は(戦闘)作戦を支えられるかを査定する必要がある。
(※バスラ追撃仮定の場合、第1の消費率と第2の損耗率は満たしていたが、第3事項の戦闘部隊前進率へのロジスティクス追随が作戦レベルで破綻していた。)

 陸軍のドクトリンは応答性のロジスティクス上の特徴を定義してはいるが、施設内訓練基地はその適用を促進してはくれない。

【提言】

 砂漠の嵐作戦から3つの教訓があり、陸軍のための提言事項が1つある。

 1つの目の教訓は敵ロジスティクスシステム能力とその限界を把握する事の価値である。1991年8月(つまりクウェート侵攻をしたその月の内)に早くもイラク軍のロジスティクスは限界に達していた。従って米陸軍の(クウェート及びイラク近隣の)サウジへの展開は戦闘部隊、戦闘支援部隊、戦闘サービス支援部隊のバランスの取れたものにできたかもしれない。この研究では敵ロジスティクスシステムを分析するためのプロセスが示されている。このプロセスは敵の行動方針が実現可能かどうかを判断するために活用できる。

 2つ目の教訓とは、米陸軍司令官は追撃作戦中に100%充足した任務必須補給物資を受けることはできないと予想すべきであるということだ。米陸軍のロジスティクスのシステムは移動会敵及び攻撃という2種類の攻勢作戦を維持できるように設計され、組織され、リソースを割り当てられている。陸軍の戦闘サービス支援部隊が持っているのはある固定的な半径内で運搬する能力なのである。局地輸送の作戦上の計画単位は35~45㎞である。長距離幹線輸送の計画上の距離は約140~150㎞である。追撃の諸作戦が陸軍戦闘サービス支援部隊のロジスティクス可能範囲を超えると摩擦が発生する。
(現在の米陸軍では、単一作戦より大きい複合的攻勢での長大縦深の追撃用のロジスティクスは設計されていない、という苦言を呈している。)

 3つ目の教訓は、追撃の諸作戦の計画立案と実施が旅団、師団、軍団レベルの戦闘教練センター(CTC)で訓練されていないということだ。戦闘教練センターで行われる演習の期間はわずか5日間でだ。陸軍全体で補強されつつある『メンタルモデル』では、将来の戦争は短期的な作戦となるということである。(現状の演習/教練手法では将来の作戦は短期的な作戦『しかできない』という苦言を呈している。)

 問題を複雑にしているのは、指揮幕僚大学のロジスティクス教育の焦点がその5日間の作戦のために戦力を如何に受領し、中継し、前進し、統合し、維持するかの方法となっていることだ。(ロジスティクスに関する)陸軍のドクトリンが重視しているのは戦場で敵を打ち負かすための決定的軍事力の急速展開であるが、その(5日間の)戦いからは退いてしまい他の日に闘う方策を選ぶ敵や、長引く非正規戦において長期にわたり敵対行為をし続ける敵への対処方法については言及していない。

 次なる大規模戦域のために陸軍、特にロジスティクスに関係する者達は4種類の攻勢作戦(移動会敵、攻撃、拡張、追撃)全てを完全に修練しなければならない。敵がある戦場からは後退して別の日に闘おうとするのを未然に防止する能力こそが、拡張と追撃の諸作戦の重要性そのものなのだ。









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以上です。
ここまで拙い訳文を読んで頂きありがとうございました。
少佐の作戦分析を読んでどう感じられたでしょうか。何かご意見ありましたらぜひ教えてください。

 追撃の重要性は戦史における1つの鍵となる点です。追撃そのものの発想は遥か原初からありますが、その価値の考察や手法そして規模の発展史は巨大な影響と変質をもたらしてきました。あるいは近代軍事論の高度性の1つは作戦規模以上の追撃にあるのかもしれません。
 近代の増援投入システムの発展は単一戦闘域の戦術的勝利が作戦的成功あるいはその先の戦略的戦果へと結びつくことをより困難にしました。少々穴を戦線に開けて前進しただけではすぐ防御増援がかけつけ押し戻したり、あるいは前線部隊は戦力を保持して後退し別の戦線を作ってしまい戦争は継続します。
拡張と追撃は非常に困難なものです。B.ソコロフが独ソ戦でのドイツ軍の作戦の破綻は初期戦果の拡張(と追撃)に失敗しソ連軍前線部隊を撃滅できず後退を許したためだと述べたのは珍しい話ではないでしょう。
 その防御戦線回復をさせないために『拡張』と『追撃』の理論を近代以降の軍人たちは発展させ続け、特に2度の世界大戦とロシア内戦は挑戦的試みと考察がなされました。それは戦略的概念へも繋がります。制限戦争理論や平時及び戦時の戦力/ロジスティクス能力はどうすべきか、国家財政と軍事のバランスまで巻き込みます。
 少佐の分析では1990年代の米軍は極めて限定的な戦役しか戦う能力がロジスティクス的には無かったことが述べられていますが、戦時体制は変わりますし一概に「米軍には作戦レベル以上での追撃能力が無い」とは言えはしないでしょう。WW2で米軍は戦争中に軍事組織を凄まじい速度で拡大発展させました。ソ連もWW2中に急激な発達をしています。

 拡張と追撃は今なお軍人たちの前に最大の難題として立ちはだかっている、この論文はその例の1つなのだと思います。



…拡張と追撃はいずれ戦例紹介するつもりなのですが、なぜか最初にこのロジスティクス的観点からの話を記事にしてしまいました。戦闘的側面の理論を把握していないといまいちなぜこれほど重要視されているのかわかりづらいかもしれませんが…まぁこの場末のサイトにたどり着く人ならいいか。

【メモ】____________________________________

Support Command = SUPCOM
Culmination = 限界 
CSS = Combat service support = 戦闘サービス支援。日本では後方支援と訳されることが多いが米軍では役割を後方に限定はしておらず、誤解を招きかねないため直訳を採用する。
TFOP = Theater force-opening package = 戦域部隊展開パッケージ
(EAC)=Echelon above Corps = 梯団上層隊
TSC = Theater Support Command = 戦域支援司令部
DOS = Days of Supply
FSB = Forward Support Battalion
DSA = Division Support Area 師団支援エリア。略語は本書には無いがハンドブックの方に載っている。
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※補足:ビロウ・ザ・ライン部隊
 Above the line forcesとは、組織的戦闘支援と戦闘サービス支援を含む戦闘部隊(師団、独立旅団、機甲騎兵連隊、特殊作戦部隊グループ)のことである。
 Below the line forcesとは師団の戦闘、戦闘支援、戦闘サービス支援の各部隊より上の階層のこと。配備されたAbove the line forcesを支援するために必要とされる。

 出典:US Department of the Army, (1996), "Total Army Analysis (TAA): Force Development"

 …と書かれているが今回のロジスティクス論文では軍団よりも後方で根幹的ロジスティクスをする部隊という定義が与えられている。
混乱を招きやすい用語のせいなのか、あまり最近の公式文書には使われていない。
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※補足
 11個の戦闘サービス支援の機能(CSS functions)とは次のものである。
・メンテナンス_Maintenance
・輸送_Transportation
・補給_Supply
・戦闘健康支援_Combat health support
・現場サービス_Field services
・爆発物処理_Explosive ordnance disposal
・人事業務サポート_Human resources support
・財務管理活動_Financial management operations
・宗教支援_Religious support
・法的支援_Legal support
・音楽支援_Band Support

 出典:FM3-0 OPERATIONS 第12章Combat Service Support
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・1個大隊防御幅=4~8㎞
・旅団(3個大隊編制)は防御時は戦線正面に2個大隊を横に並べる
・攻撃時は並んだ大隊の戦線正面幅は防御時の2倍
→旅団の攻撃正面幅=15~20㎞
______________
RSOIを日本の防衛白書用語17年度版では連合戦時増援演習と訳しているが、これは韓国で行われた演習の際のRSOIのため。実際は演習ではなく、軍が運用される際の行動を指し戦略・作戦・戦術全てに適用される。fm 100-17-3が米軍の該当マニュアル。
http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2005/2005/pdf/yougo_e.pdf

Reconstitution 再構築については米陸軍サイトを参照
reconstitution

https://www.army.mil/article/219390/the_fallacy_and_myth_of_reconstitution
_______________________________________
J1: personnel
J2: operational intelligence
J3: current operations
J4: logistics/medical
J5: crisis and deliberate planning
J6: communication and information systems
J8: finance and human resources
J9: policy, legal and media operations