戦史の探求

戦史の情報を整理し探求するサイトです。 古今東西の全てを対象とし、特に戦況図や作戦図に着目しながら戦略・作戦・戦術について思索します。

June 2019

 調査中。この記事はまだ覚書です。何かご存じの事あればどうかご助言ください。

名称と年代:ジャンディ・カマル_駝城

 中央アジアを中心に遊牧民の間で使われた4足獣を用いた即席障害物構築戦法が存在する。
 この戦法の確固たる共通名称は無いが、カザフ語またはキルギス語では「ジャンディ・カマル(Жанды камал)」と発音されたことが伝わっている。意味は「生物塁砦」である。ロシア語圏では直訳し「動物による塁砦(Живая крепостьまたはкрепость из животных)」を使用している。中国・清王朝はこれを「駝城」と記録しているが、駱駝に限らず4足獣全般がこの戦法に使用されている。ラクダの場合は「トゥイェ・カマリ(Туйе камалы)」と呼ばれ、ロシア語訳はВерблюжья крепость(ラクダ塁砦)が対応する。ドン・コサックの地域では「батованием」と呼ばれていたとされる。

 主に記録さている活躍は16世紀~19世紀であるが、20世紀ソ連でも存在しており知見が継承されている。また、弓にも効果的であるため使用開始の年代はさらに古いと考えられている。使用最盛期は18世紀であるとされる。
 年代から明らかなように、ジャンディ・カマルは銃が普及した時代に騎馬の民がそれを活かすために好んだ手法である。何もない平野や雪原だろうと突如として塁壁を作り上げ猛威を奮った。
清と闘うジュンガルのジャンディ・カマル1941_雪原で展開するソ連軍タタール騎兵


<右図:1941年のソ連軍タタール騎兵部隊が雪原で散開しながらジャンディ・カマル(?)を展開している>
https://www.iwm.org.uk/collections/item/object/205087014


<左図:清王朝と闘う際にジャンディ・カマルで苦しめた18世紀のオイラート>続きを読む

 今回は片翼が一時的に押し込まれ包囲形が見え始めた時、そこから逆襲する戦術の事例としてアヴァライールの戦い(Battle of Avarayr)を紹介したいと思います。この会戦はアルメニア史およびアルメニア正教にとって極めて重大な戦争として位置づけられておりますが、ササン朝側に重点を置きながら紹介したいと思います。
451_battle of Avarayr_9

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 拙稿【アヴァライールの戦い_451_逆包囲】の前半章を占める会戦に到るまでの両国関係史についてその概略を記しました。(ヤズダギルド2世の父)バハラーム5世までです。
 歴史に関する記事としては短すぎ、会戦戦史の序文にしては長すぎる文ですが、アヴァライールの戦いの戦略的勝利の解釈をするために必要かと思い残しておきます。

→戦術と軍事戦略についての別記事【アヴァライールの戦い_451_逆包囲】
http://warhistory-quest.blog.jp/19-Jun-26続きを読む

 『シュロゲー・タクティコールム(Sylloge Tacticorum=Συλλογή Τακτικών )』は10世紀にギリシャ語で記述された著者不明の東ローマ軍事書籍です。様々な状況に対応するための方策や戦術を過去の軍事書や東ローマ(ビザンティン)軍の経験に基づいて計102項目にわたり編集されています。おおよそテーマが章まとめされており以下のような構成になっています。

1~57項 (⇒ リンク後日作成)
:各種軍事ノウハウ(指揮、包囲戦、戦闘や行軍隊形、戦利品分配、敵強襲への対応、奇襲方法、伏撃、野営地設営、将校のポスト、諜報活動、戦闘停止、他...)
58~75項  
:直接的武力行使以外での軍事方策(食料や水場への毒、焦土戦術など)
76~102項 (⇒ リンク後日作成)
:その他指揮に関する古代ローマ&ギリシャ教訓集など

※ 同じく10世紀に軍事的に活躍した皇帝ニケフォロス2世フォカスを中心に『Praecepta Militaria』が記されましたが、この軍事書にはシュロゲー・タクティコールムを基礎としている箇所が複数あります。(変更箇所も)

Sylloge Tacticorum Georgios Chatzelis氏とJonathan Harris氏による英訳版を基に個人的に面白いと感じた部分を紹介していこうかと思います。(部分抜粋の上で超訳です。植物などの単語はおそらく間違いあると思うので気づいたら教えて頂けたら嬉しいです)
 英訳本に詳しく説明が書かれていますが、現在のテキストにはいくつか検証すべき問題点があり東ローマ研究者の方々が進めてくれています。本サイトはただの紹介で検証などはしていないので、興味がある方は原著をぜひ読んでみてください。
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