戦史の探求

戦史の情報を整理し探求するサイトです。 古今東西の全てを対象とし、特に戦況図や作戦図に着目しながら戦略・作戦・戦術について思索します。

タグ:アメリカ

 「ある守備態勢をとっている相手に攻撃を仕掛ける場合、攻撃側は守備側よりも3倍以上の兵力を揃えておくべきである」という言い伝えがあります。これを攻撃側3倍の法則(3:1 rule)と呼び、歴史的にある程度の普遍性がある戦理だと捉えている人は数多くいます。また他の状況下での兵力比率についても数値が与えられている書籍を見かけることもあります。
 ですがこの兵力比率は本当に何らかの論理的根拠や歴史的統計から導きだされた法則なのかはかなり疑念をもたれており、激しく批判する研究者も存在します。

 本稿ではまず米陸軍が教範に採用している該当箇所を抜粋翻訳し、次に統計調査の1つを紹介した上で所感を幾つか書いてみようと思います。米陸軍の表だけしか見ない場合深刻な誤解を招きかねないため、必ず教範文章に目を通してください
 自分の結論を先に書いておくと、『米軍教範の成功戦力比表は実戦で適用できる法則と言えるだけの根拠は存在しないが、立案時の初期スタート基準としては有用であり、立案途中段階で修正を加えるのに役立つ』という意見です。

 また、FM6-0及びATP5-0.2は参謀が立案をする際に具体的にどう進めるかを把握するのに役立ちますので、参謀業務やウォーゲームについて興味がある方はぜひ目を通して見てください。
戦力比別成功率表

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冷戦期、西ドイツをワルシャワ条約機構から防衛するためNATO軍が配備されていましたが、その中でもよく議論されたフルダ・ギャップと呼ばれる場所があります。そこはドイツ中央部に位置し、東ドイツの領土が最も突出した箇所に面している所です。北ドイツ平野に比べ中央~南部は山が多く侵攻には手間がかかります。ただここは天然の障害物となれる大きな河川のフルダ川と山系が国境沿いにあるのですが、そこを越えると大きな障害が無く一挙にフランクフルト周辺の広大な平野と人口・産業地帯そして米軍の重要後方拠点まで進出できてしまうため注目されました。
標高_ドイツ中央部東西ドイツ地図_高速道路

 1980年米軍の高級将校たちがある会議にWW2のドイツ国防軍でその名を馳せたヘルマン・バルクとフォン・メレンティン両将軍を招きました。その目的はフルダ周辺に配備されている米陸軍第5軍団の兵棋演習でした。
 米軍側はデピュイ大将、オーティス中将、ゴーマン中将を筆頭に、軍団区域の南を担当する歩兵師団の戦術プランを説明しドイツの両将軍の質疑に答えました。一方でドイツの両将軍はその場で戦場や戦力の説明を受け、それから軍団区域の北の第3機甲師団の戦術プランを彼らが考え話すことになります。この両者のコンセプトや経験は米軍関係者にとって参考になるものでした。
 兵シミュレーションなどを作成しているBDM社の協力の下、彼らは4日間の戦術的な分析議論を行い、後に会議内容をまとめたレポートをデピュイ大将が作成しました。

 William E. Depuy, (1980), "Generals Balck and Von Mellenthin on Tactics: Implications for NATO Military Doctrine"

 今回はこのレポート内容について記そうと思います。一部翻訳している箇所もありますが、基本的にデピュイ大将の書いている文の要点を内容を把握できる程度にメモ書きしたものとなります。
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 先に自分ならどうするか考えてみて頂けると、後々の思索が深まると思います。ですのでまず始めに戦域およびソ連軍の戦力と初期配置のみにした図を貼っておきます。地形は上図を参照ください。AlsfeldからBad Hersfeld中心までは直線距離33.5㎞です。
 米軍は第5軍団所属の第3機甲師団が北に、第8機械化歩兵師団が南に配置されます。戦力詳細は次のようになりますので、よければこれをまずどこに初期配置するか考えてみてください。
第3機甲師団の域内戦力
  機甲=6個大隊
  歩兵=5個大隊(全て機械化)
  砲兵=8個大隊(全て自走砲化)
  騎兵=3個大隊(機甲偵察車両)

第8機械化歩兵師団の域内戦力
 機甲=5個大隊
 歩兵=6個大隊(全て機械化)
 砲兵=9個大隊(全て自走砲化)
 騎兵=2個大隊(機甲偵察車両)

 ※師団サイズは米軍第3機甲師団は約15000人、ソ連の戦車師団は1個あたり12000人前後としてください。
 ※1960年代のIvashutin将軍の文書によるとソ連の作戦は核兵器使用の有無に関わらず実行可能とされた。
NATO演習_00
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 本覚書はシリア内戦におけるシリア北西域を巡り、2016年1月~2017年2月末まで展開された作戦群の進展について記載します。
 (本が出るのを待っているのですがその間に忘れそうなので覚書を残すというのが目的です。全く詳細では無いのでお許しを。疑問点も多く、シリア内戦の外交変遷を追っている人のご意見を伺いたいのですが…)

 シリア民主軍(SDF)の2方向からのマンビジ攻勢西部アル・バーブ攻勢トルコ軍によるユーフラテスの盾作戦、シリア政府軍東部アレッポ攻勢が覚書の主要素となります。
 これらを複合した進展は極めて奇怪な事象を示しました。

事象

 弱体1勢力の特定領域に対し、他3勢力がより多く自領域を奪取するために同時的に軍事侵攻した。しかし外交等の非武力分野による影響もあり他3勢力同士の軍事衝突が極端に抑えられ、結果としてまるで並んで競う軍事侵攻レースのような形態が現出した。
20161118
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消えないことを祈る自分用メモ 原文ロシア語です。

2008年発行のロシア軍学校における論文
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『(ロシア軍将校から見た)アメリカ軍の各部隊一般組織編成・武装・戦術』
Организация, вооружение и тактика действий частей и подразделений иностранных армий
Учебное пособие г. Тольятти 2008 год

https://studfiles.net/preview/6218863/page:12/
→ リンク

ロシア視点からどこを重視しているのか確認用資料、一部ドイツ軍分析もあり
該当領域:中隊以上
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russsian analysis

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turkish air bases トルコ軍及びTFSA(親トルコ系自由シリア軍)のアフリン州におけるSDF(YPG等クルド中心のシリア民主軍)への攻勢「オリーブの枝作戦」が開始され多少の遅滞はあれど大方において進軍は成功している。その中でトルコ空軍は重大な役割を果たしている。初期においてはアフリン市街などの戦線後方拠点、SDF移動路といった点に対する戦場航空阻止の攻撃、そして戦線付近での近接航空支援などで多くの報道がなされている。
 今回は作戦の前期、中期、そして後期にそれぞれ分類し、各段階におけるトルコ空軍の爆撃地点に注目しながら陸空の連携を一部であるが紹介したい。これは報道が基であり、トルコ軍の公式戦闘記録が将来発表されれば再度検証する必要がある。
(画像ソース:https://www.globalsecurity.org/military/world/europe/airfield-tu.htm )
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関連別拙稿:ユーフラテスの盾作戦

operation123
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 2011年3月よりアラブの春と呼ばれる寡占型政府打倒運動が始まった。それは単純な民主化のみならず民族主義、宗教主義、そして諸外国の思惑を巻き込み巨大な武力衝突の場となりみるみるうちに秩序を崩壊させた。反体制派の初期の隆盛と外国の支援、ISILと呼ばれるイスラム過激派の勃興、クルド系北部勢力の伸張、シリア政府軍の逆襲。各々の戦役は限られた軍事力の中で苦心して造られたものである。ここにその戦役集を一部紹介したい。

…そのうち各戦役書いて行く予定です。すいません。

『ラッカ戦役』 北域SDF及び有志連合の南進_北部_2017/1/17~4/5

Raqqa Campaign (2016~2017)
 複数の大規模な戦術的攻勢が連動し最終的に一つの作戦目標に対し結集している。高度な連携であり、見方によっては複数の小戦役群による作戦術概念の適用と言う者もいるようだ。

『ユーフラテスの盾作戦』トルコ系軍の北部拡張_北中部_2016/8/24~2017/3/26

Trukish Occupation of Northan Syria 
Operation Euphrates Shield 

『アレッポ東域攻勢』 北域政府軍の東進_北中部_2017/1/17~4/5

East Aleppo Offensive (2017 Jan~)

『マスカネ平原攻勢』 北域政府軍の南進_北中部_2017/5/9~7/8

Maskanah Plains Offensive


『ホムス東域攻勢』 中央政府軍の東進_中部_2017/3/5~5/12

Palmyra Offensive (2017)
Eastern Homs Offensive

『シリア南部砂漠戦役』 政府軍の南部反体制派抑え込み_南部_2017/5/7~7/13

Syrian Desert Campaign

『シリア中央戦役』 政府軍の大拡張_中部_2017/7/14~10/21

Central Syria Campaign

 この中央戦役はロシア・イラン・シリア政府軍の作戦術の結集であるとみなしている。
 北部の『マスカネ平原攻勢』、中央部の『ホムス東域攻勢』、南部の『シリア南部砂漠戦役』という3つの離れた場所での戦役は全て一つの戦略のために立案された攻勢であり、作戦術の概念に基づき指揮が行われている。これらの戦役が同時的に行われ、連続的に進行し、最終的に結集させた作戦術の結果こそこの『シリア中央戦役』とそれに伴う政府軍の戦略的優勢の確定である。
 

『シリア東部戦役』 政府軍SDFの競争_東部_2017/9/14~12/17

East Syria Campaign

『オリーブの枝作戦』 トルコ系軍のアフリン奪取_北西部_2018/1/21~

    2018/1/21よりトルコ軍及びTFSA(親トルコ派自由シリア軍)はシリア北西突出部のアフリン州への軍事侵攻を開始した。トルコ政府はこの作戦を「オリーブの枝作戦」(Operation Olive Branch)と名付け、権力集中を行っているエルドアン大統領肝いりの戦争として発動した。

オリーブの枝作戦概要 (戦略目標、作戦基本方針、戦力、地形区分、時間区分)

作戦前期の陸軍の戦術的傾向

作戦中期の陸軍の戦術的傾向

作戦後期の陸軍の戦術的傾向


トルコ軍の空爆・砲撃に着目した進軍経過

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