戦史の探求

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タグ:ドローン

低空域の軍事活用は現在驚異的な進化の最中です。技術的発展はそのドメインの戦闘の様相を変え戦術・作戦に新たな可能性をもたらし、陸海空軍は様々な観点から新たな軍事思想を検討しています。
 以前その1つ、ハースト少将の提唱した『戦術空域コントロールと作戦空域コントロール』を紹介しました。
リンク→http://warhistory-quest.blog.jp/19-Apr-13

 今回は2019年の米国防大学季刊誌掲載ドハティ米空軍大佐の論文の一部を紹介したいと思います。近い将来技術的発展がもたらすであろう、極低空を含んだ領域の地形的特性とその領域での戦闘作戦についての考察です。
 極低空を含んだ領域と言ったのは低空域の一部のみを指すのではなく、そこに地上から伸びる様々な物体とその隙間各要素も含むためです。この空と陸が混ざる領域のことを『空の岸辺(Atmospheric Littoral)』とドハティ大佐は呼びました。

 軍事において海岸部で、そして海岸を越え展開する活動は水陸両用作戦と名付けられ、陸のみとも海のみとも違う独自の扱いが必要とされる領域となっています。技術的進化は海岸と同じ様に空と陸の混ざる領域の軍事的可能性を拡張しつつあります。空と陸の軍事的性質が共に在り、強い相互作用を持続的に及ぼす領域で遂行される戦闘に着目し、大佐は『空岸作戦』というコンセプトで発展させようと試みています。
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< 画像:foreignpolicy より >

 下記の論考訳文は大佐が「一例」と述べられているように、現実的に直面しているドローンに主眼を絞ったものですが、空岸作戦の一部をイメージしやすいものかと思います。読まれる際は米空軍畑エリート将校の視点という所を念頭に置くと面白いかもしれません。
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以下抜粋訳文  

空岸コントロールによる陸上戦闘での優位性確立

著:George M. Dougherty米空軍大佐 2019年7月 統合軍季刊誌94号 第3四半期
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 2019年春、米空軍大学出版のAir & Space Power Journalにある論考が掲載されました。論題は「Small Unmannned Aerial Systems and Tactical Air Control」。ハースト少将が記述したこの論文は空軍そして陸軍による航空軍事作戦・戦術のコンセプトに対して極めて興味深い思索をしています。これから少し経った3/28、ハースト少将は軍事安全保障サイトWar on the Rocksに寄稿、論作の中で取り上げた戦術的空域コントロールの概念とその背景について要約した解説をしてくれました。
 今回この戦術空域コントロールコンセプトについて意見を少しでも聞けたらと試訳を行いました。

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 以下訳文
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発達しゆく戦術空域コントロールを巡る戦闘

Jules Hurst著  2019年3月28日

 空域コントロールを巡る競争の中で、小型無人航空システムの成熟と拡散普及により新たな段階が生まれている。2017年、ISILと米軍の支援を受ける軍事勢力との間で戦術的制空権(Tactical Air Supremacy)を巡る最初の戦闘の1つが戦われた。1000$未満の商業ドローン即席ジャマー、そして小規模武装の間の戦いだ。ISILが2000フィート(約600m)以下の航空優勢を握っていた期間でも、米軍と連合軍はそれより上空の制空権を握っていた。
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