戦史の探求

戦史の情報を整理し探求するサイトです。 古今東西の全てを対象とし、特に戦況図や作戦図に着目しながら戦略・作戦・戦術について思索します。

タグ:パキスタン

 1965年の印パ戦争はエスカレートを続け、後期は完全な正規軍同士の正面衝突となります。ジャンムー&カシミール地方根本の突出部周りで会戦が複数行われ、短期間ながらも攻守が入れ替わる流動的な戦闘が起きました。

 それらの攻勢が開始された原因は、ある重要地点を救うために別の重要地点に攻撃をかけるという戦略を両国共に取ったからでした。しかしそれは充分な準備なしに攻撃と反撃を実施する事態を引き起こし、戦闘部隊の活躍とミスの両方があったことで決定的な戦果へと到ることは困難でした。
 今回はその一部、Operation Grand SlamとBattle of Lahoreの2つについて記述してみたいと思います。戦術面ではパキスタン機甲旅団による川を背にした狭域での積極的迎撃戦闘に着目しています。

※1965年戦争のフェイズ1とフェイズ2は【ジブラルタル作戦_ハジピール山道の戦い_1965_ゲリラ浸透と対抗作戦】を参照 リンク↓
http://warhistory-quest.blog.jp/19-Nov-08

※長くなるためWW2以降で史上最大の戦車戦とインド軍が謳うアサール・ウッターの戦いとフィロラの戦いは次回以降。
北部_第15師団戦域_9月8日午後
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 1965年、インドとパキスタンは短いながらも激しい戦争を行いました。北部のジャンムー&カシミール地方の領有を巡る対話は頓挫し武力解決を政治指導部は決意します。最初は様子見のような衝突を行い、次第にエスカレートし互いに強力な軍事攻勢を実施しました。

 この戦争は主に4つの段階で分類されます。
第1フェイズ】:1月から起きた南部カッチ湿地帯での衝突、これは準軍事組織が最初に動き軍同士の衝突は小規模で終結。インドは『アブレイズ』作戦による西方動員開始。

第2フェイズ】:パキスタンが『ジブラルタル』作戦を発動しインド実効支配カシミールへ大量のゲリラを浸透させる、それに反応してインドは対ゲリラ作戦として停戦ラインを越えハジピール突出部へ攻撃する。

第3フェイズ】:カシミール西部停戦ラインを越えたインド正規軍に脅威を感じたパキスタン政府はジャンムー近域で正規軍による侵攻作戦『グランドスラム』を実施。インド軍は押し込まれたが逆襲し機甲戦が発生する。
  記事リンク→http://warhistory-quest.blog.jp/19-Nov-15

第4フェイズ】:カシミールではなくその南傍であるラホール地域でのインド軍の攻勢『リドル作戦』が発動。だがパキスタン軍は即座に撃退し第1機甲師団が逆侵攻の突進をしかけた。それにインド第2機甲旅団が反応し「WW2以降で史上最大の戦車戦」とインド軍が謳う戦いが発生。
  記事リンク→http://warhistory-quest.blog.jp/19-Nov-22
pakistan_offensive_1965

 1965年戦争は両国政府が「敵を撃退し勝利した」と宣言しそれに則った報道が為されてきましたが、2000年前後から特に軍人の手によって当時の記録を再分析する試みが進み、2010年代には複数の記事や本が作られました。それらの資料は部分的な勝利での戦術的に優れた行動を行った将兵を称えながらも、伝達ミスや深刻な戦略的失敗が互いにあったことを浮き彫りにしています。

 今回は第1と第2フェイズのゲリラ戦及び対抗作戦について記述し、次回は第3と第4フェイズの機甲戦について書こうと思います。続きを読む

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