戦史の探求

戦史の情報を整理し探求するサイトです。 古今東西の全てを対象とし、特に戦況図や作戦図に着目しながら戦略・作戦・戦術について思索します。

タグ:作戦術

 古代ローマ、この強大な国家には何度か変質をした転換点がありました。その内の1つが前1世紀に起きたガリア戦争及びローマ内乱期です。これらの戦争の中で幾人かの優れた将軍、そして後世で研究されることになる高度な戦術と作戦が記録されることになります。この転換期にユリウス・カエサルは絶大な影響をもたらし歴史上において比類なき人物としてその存在を刻み込みました。
 彼の賛同者は最高の賞賛を与え反対者は最大の批判をし、歴史に興味を抱かない人々の間ですら名を覚えさせてしまうほど、カエサルはあまりにも魅力的人物なのでしょう。軍事面においてもカエサルは単に会戦に勝ったというだけでなく高度かつ複雑な軍事理論を遂行しており、極めて卓越した将なのは間違いありません。

 ただ、あるいは故にと言うべきでしょうが、彼と戦った者達もまた忘れられるべきではない活躍をしています。政治、外交、軍事、文才、コミュニケーション能力…ほぼあらゆる面で圧倒的に優れていたカエサルに対しそれでも戦いを挑んだ人々の存在は何かの意味を残したのだと思います。
 今回はその中のティトゥス・ラビエヌスという人物の戦史を紹介したいと思います。人物の伝記はBlake Tyrrellが記してくれていますので本稿ではテーマとはせず、幾つかの軍事理論の方を主題としその実戦例としてラビエヌスの戦史記録を取り上げることとします。(よって紹介する会戦の時系列を意図的に並べ替えます。)

 かつて副司令官としてカエサルと共に戦い、後にカエサルを相手に戦い、そしてカエサルに会戦で勝利した1人の軍人の記録です。

BCE52_Battle of Lutetia_4
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 BTG = Battalion Tactical Group = 大隊戦術グループ(大隊戦術群)は現代ロシア連邦軍が改革の成果の1つとして実戦投入している編制です。NATOの通常とは違うこの部隊に対し米軍は強い関心を抱いて調査を進めています。

 BTGについて少し話を見かけたので、今回は以前参考資料として以前紹介した米軍指揮幕僚大学外国軍事研究室が発表した『Russian Way of War』という現代ロシア軍の戦争手法解析論文から関連個所を抜粋翻訳してみようと思います。
 ロシアの戦争観や作戦レベルや戦術レベルの考え方、ミッションコマンドについても触れられているので大隊戦術グループ以外でも興味深い記述があります。
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別に書いた参考資料紹介
リンク→【現代ロシア陸軍の基本戦術、装備、軍部構造、近代化理論基盤_2016】
http://warhistory-quest.blog.jp/19-Nov-28

リンク→ソ連軍士官学校での教材上の作戦術
http://warhistory-quest.blog.jp/19-Sep-20
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Battalion Symbol

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 英軍野戦教範1997年 想定され得る敵勢力(GENFORCE)の分析、作戦術および戦術ドクトリンより抜粋。ただし内容はソ連期の書籍からの抜粋がほとんどです。
 本稿は敵勢力が軍事計画及び行動時に使うであろう計算式について述べたものです。つまり敵勢力がどう解釈しているかが記されています。
※1997年英軍教範のGENFORCEはほぼロシアを暗に示している内容
公式集_突破幅_必要戦力_準備砲撃達成目標_進軍速度
以下 説明
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【第12章 指揮統制と通信】 
第2項 戦場の計算
ノルマに関する章

一般則

 兵術(ミリタリー・アート)とは実に適切に付けられた名だ。なぜなら軍事作戦を支配するのは事実に基づく戦争の各法則科学的現実であり、それを理解し適用する上で創造性が必要となるからだ。敵勢力の解釈では、これらの科学的に確実な事物を完全に把握することは最初の必須ステップであり、それなしには技巧は確固たる基盤を持てないとされる。敵勢力はほぼ全ての戦闘は数学的な計算におとしこめると考えている。これがなぜコンピュータが指揮官たちに極めて快く受け入れられたかの理由の1つであり、それらが敵軍の部隊統制システムに奇妙なまでに実によく適合しているかの理由でもある。
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 ソ連軍将校教練コースの最高学府の1つ、通称としてはヴォロシーロフ士官学校で知られる場所で使われていた教材を一部紹介しようと思います。

当時の名称は『Military Academy of the General Staff of the Soviet Armed Forces named for Marshal К. Е. 』
現在はロシア連邦で『Voroshilov Military Academy of the General Staff of the Armed Forces of Russia』

 少なくとも1973~75年に使われていたこの軍学校講義資料は、本校の生徒であったアフガニスタン軍所属Ghulam Dastagir Wardak大佐がコピーしてアフガンへ持ち出しました。彼はアフガニスタン軍事大学に勤め、勃発した戦争で指揮官としての手腕を発揮します。1981年に彼は米国へ脱出しレジスタンス組織を作ります。そして米国との友好関係を育み後に秘匿し続けたこの資料を渡しました。米軍のソ連軍事専門家たちが集まり英訳が為され『ヴォロシーロフ・レクチャー』として各600頁ほどで3巻にまとめて出版されました。ソ連のドクトリン、戦略、作戦術、戦術に関する解釈といったソ連軍最重要事項について説明し、参謀や将軍の軍事的思考の基幹となる資料です。
ヴォロシーロフ レクチャー
 1巻は特に戦略原則や編制に戦争準備、2巻は指揮統制や航空に文民や経済との軍事的関係、3巻は作戦から戦術規模の原則が多めです。
 これを読む前に注意すべきことは、この資料は『冷戦期のソ連軍将校が実践的に身につける』ための教材であるということです。米軍や日本の各研究者の独自解釈や自国への適用を背景に持つ解説ではなく、概念を議論するための学術的論文でもない、特定の用途が背景にあることを念頭において下さい。
 今回は紹介のため3巻第1章"Operational Art"について試訳します。(WW2や21世紀、ソ連以外の国を想定した作戦術理論とは違う箇所がいくつかあるはずです。作戦術理論は時代と共に変化するものであり、固定概念とすべきでないことはソ連軍教本中にも述べられています。)

 英訳は多数の軍人が関わり語彙などで入念な翻訳校正が為されています。故に誤解を避けるため本文は少しくどい表現が為されており(何がするか、何のためかなどの言葉が省略されず繰り返されるなど)やや読み難いかと思います。今回の試訳もほぼ直訳としました。また文中の現代は冷戦当時を意味します。

 本来このような場末のサイトで一部紹介されて終わるべきものではないと強く思っています。この極めて貴重かつ高度な資料が、本分野に長けた日本の研究者の手によって多くの注釈をつけて翻訳され世に出てほしいと願っています。

以下試訳_______
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 本覚書はシリア内戦におけるシリア北西域を巡り、2016年1月~2017年2月末まで展開された作戦群の進展について記載します。
 (本が出るのを待っているのですがその間に忘れそうなので覚書を残すというのが目的です。全く詳細では無いのでお許しを。疑問点も多く、シリア内戦の外交変遷を追っている人のご意見を伺いたいのですが…)

 シリア民主軍(SDF)の2方向からのマンビジ攻勢西部アル・バーブ攻勢トルコ軍によるユーフラテスの盾作戦、シリア政府軍東部アレッポ攻勢が覚書の主要素となります。
 これらを複合した進展は極めて奇怪な事象を示しました。

事象

 弱体1勢力の特定領域に対し、他3勢力がより多く自領域を奪取するために同時的に軍事侵攻した。しかし外交等の非武力分野による影響もあり他3勢力同士の軍事衝突が極端に抑えられ、結果としてまるで並んで競う軍事侵攻レースのような形態が現出した。
20161118
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 2011年3月よりアラブの春と呼ばれる寡占型政府打倒運動が始まった。それは単純な民主化のみならず民族主義、宗教主義、そして諸外国の思惑を巻き込み巨大な武力衝突の場となりみるみるうちに秩序を崩壊させた。反体制派の初期の隆盛と外国の支援、ISILと呼ばれるイスラム過激派の勃興、クルド系北部勢力の伸張、シリア政府軍の逆襲。各々の戦役は限られた軍事力の中で苦心して造られたものである。ここにその戦役集を一部紹介したい。

…そのうち各戦役書いて行く予定です。すいません。

『ラッカ戦役』 北域SDF及び有志連合の南進_北部_2017/1/17~4/5

Raqqa Campaign (2016~2017)
 複数の大規模な戦術的攻勢が連動し最終的に一つの作戦目標に対し結集している。高度な連携であり、見方によっては複数の小戦役群による作戦術概念の適用と言う者もいるようだ。

『ユーフラテスの盾作戦』トルコ系軍の北部拡張_北中部_2016/8/24~2017/3/26

Trukish Occupation of Northan Syria 
Operation Euphrates Shield 

『アレッポ東域攻勢』 北域政府軍の東進_北中部_2017/1/17~4/5

East Aleppo Offensive (2017 Jan~)

『マスカネ平原攻勢』 北域政府軍の南進_北中部_2017/5/9~7/8

Maskanah Plains Offensive


『ホムス東域攻勢』 中央政府軍の東進_中部_2017/3/5~5/12

Palmyra Offensive (2017)
Eastern Homs Offensive

『シリア南部砂漠戦役』 政府軍の南部反体制派抑え込み_南部_2017/5/7~7/13

Syrian Desert Campaign

『シリア中央戦役』 政府軍の大拡張_中部_2017/7/14~10/21

Central Syria Campaign

 この中央戦役はロシア・イラン・シリア政府軍の作戦術の結集であるとみなしている。
 北部の『マスカネ平原攻勢』、中央部の『ホムス東域攻勢』、南部の『シリア南部砂漠戦役』という3つの離れた場所での戦役は全て一つの戦略のために立案された攻勢であり、作戦術の概念に基づき指揮が行われている。これらの戦役が同時的に行われ、連続的に進行し、最終的に結集させた作戦術の結果こそこの『シリア中央戦役』とそれに伴う政府軍の戦略的優勢の確定である。
 

『シリア東部戦役』 政府軍SDFの競争_東部_2017/9/14~12/17

East Syria Campaign

『オリーブの枝作戦』 トルコ系軍のアフリン奪取_北西部_2018/1/21~

    2018/1/21よりトルコ軍及びTFSA(親トルコ派自由シリア軍)はシリア北西突出部のアフリン州への軍事侵攻を開始した。トルコ政府はこの作戦を「オリーブの枝作戦」(Operation Olive Branch)と名付け、権力集中を行っているエルドアン大統領肝いりの戦争として発動した。

オリーブの枝作戦概要 (戦略目標、作戦基本方針、戦力、地形区分、時間区分)

作戦前期の陸軍の戦術的傾向

作戦中期の陸軍の戦術的傾向

作戦後期の陸軍の戦術的傾向


トルコ軍の空爆・砲撃に着目した進軍経過

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