戦史の探求

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タグ:同時包囲

米陸軍大学出版から何十年にも渡って出されている季刊誌Military Reviewには色々と面白い記事があります。今回はその1940年6月号へ当時大尉だったReuben E. Jenkins(最終階級は中将)が寄稿した『Offensive Doctrines』の中に4種の包囲マニューバについて書かれているものがあったので一部試訳紹介してみます。 
 包囲マニューバは実戦例詳細部を分析し1つ1つにラベルを貼っていけば、その形態の数は実に多くなるでしょう。1つの戦例に複数の性質が存在することもあるためです。ですので本記事中の4つの包囲形態とはある視方をした場合に浮かび上がる特徴を基に4つ抽出したものとなります。
 その4つとは次の包囲形態になります。

密接包囲(Close Envelopment)
広範包囲(Wide Envelopment)
両翼包囲(Double Envelopment)
迂回攻撃(Turning Movement)

 章タイトルだけを見た時、単純に近接と広域に距離で分類したのだと連想してしまうかもしれません。しかし3つ目の両翼包囲に説明が移る段階でなぜ片翼包囲が無いのかといった違和感があるはずです。ここで自分は原著者は一体どのような基準でこの4形態のみを説明することとしたのだろうと興味を持ちました。
 幸い論述内容は簡潔ですぐに疑問は解けました。ジェンキンス将軍が包囲の説明で重視していたのは、各タイプごとに包囲マニューバを実行する「編制及びその指揮統制」手法が違うということでした。彼は指揮の実践に必要な内実に基づいて上記4タイプを認識すべき旨を強調した書き方をしており、幾何学的性質や距離は関係しますが本文の主眼にはされていません。

 以下訳に移りますが4形態の内容個々は特段珍しいことを述べているものではありません。ですがこの将軍の着眼点はたとえ当時と現代あるいは昔が違う様相の戦争だとしても、指揮手法の変化の重要性を再度考えさせてくれる価値のあるものだと思います。続きを読む

【包囲運動の基本概念】

3-1. 包囲運動の概説

 包囲(envelopment)は戦史において突破と並びその絶大なる効果を示してきたマニューバです。
包囲は敵の側面や後背を含む複数方面から行われる攻撃であり、実行ためには指揮官や兵卒に高い練度が必要です。
 包囲は古より現代まで試行錯誤がなされ発展し続けています。ある程度の原則を基にしながらも時に新技術や兵科により全く斬新な包囲方式が考えられることもあります。

Maneuver-3_クロコトニッツァの戦い_ブルガリアの包囲殲滅戦術
                                       (戦例:Battle of Klokotnitsa_ブルガリア軍が東ローマの大軍を包囲撃滅)

米軍野戦教本 FM 3-90 Tacticsにおいては以下のように定義されています。
「包囲とは、敵現在位置において撃滅するために、敵軍の側面を目標として追い求めることによって攻撃部隊が敵防御の主体を回避することにつとめる運動の1つである」
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