戦史の探求

戦史の情報を整理し探求するサイトです。 古今東西の全てを対象とし、特に戦況図や作戦図に着目しながら戦略・作戦・戦術について思索します。

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本記事製作にあたり、快く許可して頂いたMark Allen Thornton博士に御礼を申し上げます。
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 数的優位を持つ側が戦に勝利する率に関する統計調査をソーントン博士がしてくれました。

ソーントン博士の元記事リンク
【Do numbers always win?】
http://markallenthornton.com/blog/numerical-advantage/

 最初に書いておきますが、これは正式な調査ではありません
 ソーントン博士はハーバード大学で心理学の博士号を取得し現在はプリンストン大学の社会神経科学研究所で活動をしておられる方です。博士はサイトを作り研究記事を書いており、たまに個人ブログの方にもデータサイエンスの様々なテーマで記事を投稿してくれています。博士は「暇なときに(in my spare time)」に書いてるとのことで、どうやら趣味のようです。
battle_scatter

 この記事を起点にいくつか思う所を書いてみようと思います。(翻訳ではなく、統計調査全部は書かないのでぜひ元サイトを読んでみてください。)このデータから数的優位の効果がどれほどかという主張はしません。所感の文は軽い気持ちで読んで頂けたら幸いです。

また、よく言われる攻撃と守備の兵力3:1の原則に関する統計調査と米陸軍教範内の記述の仕方についても調べた記事を別途作成しました。攻撃守備だけでなくカウンター時や遅滞作戦時の比率も載っています。
攻撃対守備兵力3:1の原則_統計データと米陸軍教範での考え方
http://warhistory-quest.blog.jp/20-Mar-28続きを読む

 マルチドメイン作戦の一環として宇宙関連の軍事要素はその重大性を拡大し続けています。衛星を用いた通信あるいは画像観測は地上部隊や航空部隊の作戦に大きく影響し、計画立案時には適切に宇宙関連能力を配分することは必要不可欠となりました。しかし宇宙関連能力を全ドメインと統合し協調した作戦行動を取るための手法は発展段階にあり、まだ米軍ですら空白と呼べる問題事項があるようです。

 米陸軍の宇宙作戦将校には、米陸軍宇宙及びミサイル防衛司令部/陸軍戦略司令部の計画立案に携わっているJ.V.ドリュー2世少佐という人物がおられます。少佐はたびたび陸軍向けに、統合運用の視点から宇宙関連機能がどう使われるのか、あるいはどういう制限があるのかといった説明を非常にわかりやすく説明してくれています。
 今回はこのドリュー少佐が米陸軍季刊誌に寄稿した2つの論文を基に記そうと思います。翻訳している箇所も部分的にありますが推敲しておらず略も多いため、メモ書き程度だと思って読んでいただけたら幸いです。
Visualizing the Synchronization of Space systems

 前半はマルチドメイン作戦をする上で宇宙関連の基本事項(宇宙の3地域、軍事作戦に影響する宇宙環境、責任所掌)を記し、後半には実際に上級司令部での演習で使用されたチャート図を用いたクロスドメイン調整の例の説明を書くこととします。
 宇宙関連能力、例えば衛星などに対する知識理解を他分野の人々がそこまでしていない場合もあり、色々と苦労が起きていることが仄めかされています。チャート図は実際にどういう風に作戦コンセプトが固められていくのかがわかりやすいので、そこだけでも読んで頂けたら嬉しいです。
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 ソ連軍将校教練コースの最高学府の1つ、通称としてはヴォロシーロフ士官学校で知られる場所で使われていた教材を一部紹介しようと思います。

当時の名称は『Military Academy of the General Staff of the Soviet Armed Forces named for Marshal К. Е. 』
現在はロシア連邦で『Voroshilov Military Academy of the General Staff of the Armed Forces of Russia』

 少なくとも1973~75年に使われていたこの軍学校講義資料は、本校の生徒であったアフガニスタン軍所属Ghulam Dastagir Wardak大佐がコピーしてアフガンへ持ち出しました。彼はアフガニスタン軍事大学に勤め、勃発した戦争で指揮官としての手腕を発揮します。1981年に彼は米国へ脱出しレジスタンス組織を作ります。そして米国との友好関係を育み後に秘匿し続けたこの資料を渡しました。米軍のソ連軍事専門家たちが集まり英訳が為され『ヴォロシーロフ・レクチャー』として各600頁ほどで3巻にまとめて出版されました。ソ連のドクトリン、戦略、作戦術、戦術に関する解釈といったソ連軍最重要事項について説明し、参謀や将軍の軍事的思考の基幹となる資料です。
ヴォロシーロフ レクチャー
 1巻は特に戦略原則や編制に戦争準備、2巻は指揮統制や航空に文民や経済との軍事的関係、3巻は作戦から戦術規模の原則が多めです。
 これを読む前に注意すべきことは、この資料は『冷戦期のソ連軍将校が実践的に身につける』ための教材であるということです。米軍や日本の各研究者の独自解釈や自国への適用を背景に持つ解説ではなく、概念を議論するための学術的論文でもない、特定の用途が背景にあることを念頭において下さい。
 今回は紹介のため3巻第1章"Operational Art"について試訳します。(WW2や21世紀、ソ連以外の国を想定した作戦術理論とは違う箇所がいくつかあるはずです。作戦術理論は時代と共に変化するものであり、固定概念とすべきでないことはソ連軍教本中にも述べられています。)

 英訳は多数の軍人が関わり語彙などで入念な翻訳校正が為されています。故に誤解を避けるため本文は少しくどい表現が為されており(何がするか、何のためかなどの言葉が省略されず繰り返されるなど)やや読み難いかと思います。今回の試訳もほぼ直訳としました。また文中の現代は冷戦当時を意味します。

 本来このような場末のサイトで一部紹介されて終わるべきものではないと強く思っています。この極めて貴重かつ高度な資料が、本分野に長けた日本の研究者の手によって多くの注釈をつけて翻訳され世に出てほしいと願っています。

以下試訳_______
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 『シュロゲー・タクティコールム(Sylloge Tacticorum=Συλλογή Τακτικών )』は10世紀にギリシャ語で記述された著者不明の東ローマ軍事書籍です。様々な状況に対応するための方策や戦術を過去の軍事書や東ローマ(ビザンティン)軍の経験に基づいて計102項目にわたり編集されています。おおよそテーマが章まとめされており以下のような構成になっています。

1~57項 (⇒ リンク後日作成)
:各種軍事ノウハウ(指揮、包囲戦、戦闘や行軍隊形、戦利品分配、敵強襲への対応、奇襲方法、伏撃、野営地設営、将校のポスト、諜報活動、戦闘停止、他...)
58~75項  
:直接的武力行使以外での軍事方策(食料や水場への毒、焦土戦術など)
76~102項 (⇒ リンク後日作成)
:その他指揮に関する古代ローマ&ギリシャ教訓集など

※ 同じく10世紀に軍事的に活躍した皇帝ニケフォロス2世フォカスを中心に『Praecepta Militaria』が記されましたが、この軍事書にはシュロゲー・タクティコールムを基礎としている箇所が複数あります。(変更箇所も)

Sylloge Tacticorum Georgios Chatzelis氏とJonathan Harris氏による英訳版を基に個人的に面白いと感じた部分を紹介していこうかと思います。(部分抜粋の上で超訳です。植物などの単語はおそらく間違いあると思うので気づいたら教えて頂けたら嬉しいです)
 英訳本に詳しく説明が書かれていますが、現在のテキストにはいくつか検証すべき問題点があり東ローマ研究者の方々が進めてくれています。本サイトはただの紹介で検証などはしていないので、興味がある方は原著をぜひ読んでみてください。
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